目利きの店主が引き寄せた「1999年感」たっぷりのセリカGT-FOURを拝見【勝手に中古車日本遺産 認定の旅】
カテゴリー: クルマ
タグ: トヨタ / セリカ / 勝手に中古車日本遺産 認定の旅 / 伊達軍曹
2019/12/24
博物館級の良固体の栄誉を讃え
(勝手に)中古車日本遺産と認定!
基本的には「商材」でしかない中古車というモノ。
だが、ごく希に「こりゃほとんど博物館級じゃねえか! 中古車販売店じゃなくて東京国立博物館とかに置いた方がいいんじゃないか? 知らんけど!」と叫びたくなるほど超絶グッドコンディションな1台がある。
そういった博物館級の個体を見つけだし、その栄誉を讃え、そして僭越ながら私的な日本遺産に(勝手に)認定させていただくというのが当企画【勝手に中古車日本遺産 認定の旅】である。
第2回となる今回の題材は、埼玉県さいたま市の「ばーにんぐ」が販売する走行2.7万kmの96年式トヨタ セリカGT-FOUR。1994~1995年シーズンの世界ラリー選手権で活躍したラリーカーの(厳密に言うと微妙に違うのだが)ベースとなった市販車である。
認定人
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
ということで「ばーにんぐ」代表の池野さん、今やきわめて希少な存在だといえる「実走2.7万kmでほぼフルノーマルのST205(この世代のセリカGT-FOURの型式名)」、見せてほしいんですが?
うん。さっき店の前に出して洗車しておいたから、自由に見てってください。
……ところで、申し訳ないですけどそっぽを向くのではなく、こっちを向いてお話しいただけませんかね?
いやごめん! 僕、実は照れ屋だからさ……今回は後ろ姿で勘弁してもらえないかな?
なるほど。男前なのに顔をお見せできないのは残念ですが、了解しました!
ということでとりあえずブツとのご対面を果たすと、なるほど。これはイイ!
さすがに2.7万kmは走っているだけあって、当企画の第1回で紹介した走行わずか326kmの97年式スバル アルシオーネSVXのような「大英博物館に寄贈すべきレベル」ではない。
だが愛知県長久手市の「トヨタ博物館」には、オーディオとホイールを純正に戻したうえでぜひ寄贈したくなるコンディション……と言ったらいいだろうか?
ボディ外板のシルバーメタリックの塗装、ステアリングやシフトノブのレザー、ファブリック製スポーツシートの表皮とコシ、そしてそれらを取り囲んでいる樹脂パネル類や樹脂製スイッチなどのコンディション。
それらすべてに「1999年感」があるのだ。
どういうことかといえば、1996年に新車として販売されこのGT-FOURを8000km/年か9000km/年ぐらいのペースで丁寧に乗り、3年が経過して1999年になったら、車ってだいたいこん感じになりますよね――というニュアンスのコンディションを、1999年ではなく2019年のさいたま市で販売されているこのGT-FOURはキープしているのだ。
なんというか「超絶タイムトリップ感」ではないのですが、「プチトリップ感」がありますね。これだけグッドコンディションなGT-FOURなんて今やそうそうないですから、やっぱりコネクションを通じてのユーザー買い取りで仕入れたんですか?
や、このGT-FOURに限ってはオートオークション経由なんだよね。
へ? そうなんですか?
うん。ウチは基本的には輸入車屋でね、輸入車の仕入れに関してはオークションってほとんど使ってないんだ。さすがに100%じゃないけど、大半の個体は僕が直接、吟味したうえで全国のユーザーさんから買い付けてる。
(GT-FOUR以外の展示車を眺めながら)なんか見るからに、そんな感じですよね……。
うん。でもまあ国産車の方は専門外だからってのもあって、オートオークションもたまに利用するんだよね。もちろん「すっごくいいやつ」が出品されていない限りは買わないけど。
オートオークションにも、まだまだこんなセリカGT-FOURが出てくるんですねえ……。
普段はあまり出てこないよね。今回はたまたまラッキーで、いい感じのGT-FOURと巡り合えた……って感じかな。
セリカGT-FOURからちょっと話がズレるかもしれませんが、この赤い92年式ポルシェ 911のタイプ964も凄いコンディションですね。今や希少な5MTで、走行1.0万kmって……。
しかも「スペシャルシャシー」だしね。今後、これだけ状態の良い5MTのタイプ964なんてなかなか市場に出てこないと思うよ。あるところにはまだあるんだけど、皆さん売らないんだよね。愛着もあるだろうし、今後さらに相場は上がるだろうしで。
これはさすがにオートオークション経由……じゃないですよね?
うん、とあるユーザーさんから直接買い取らせてもらったんだ。
このポルシェ 911だけじゃなく、後ろにあるボディカバーがかかってるFD(最終型マツダ RX-7)とか、その横にあるウルトラ超絶グッドコンディションでほぼフルノーマルな30Z(初代日産 フェアレディZ)とかも、たぶんユーザーさんからの直接買い取りだと思うんですが……。
うん、そのとおりだね。
なんで御社にはこんな凄いのばかりが集まってくるんですか? もしかして、何かあくどい手段でも使ってるんすか? ……例えば「脅迫」とか。
まさか(笑)! なんていうかな、僕もかなり長いこと車屋をやってるし、中学1年生の頃から車が好きで好きでたまらなかった結果として、この商売をやってます。しかも、自分としてはきわめて真面目にいいモノだけを仕入れ、それをちゃんと整備したうえでお客様に納めてきたし、今も納めているつもりです。
池野さんとは今日が初対面ですが、そこはわかる気がします。中古車販売店の場合は「商品」を見れば、経営者の考え方や心根ってなんとなくわかりますからね。
ありがとうございます。……で、そうやって長いこと真面目にやってるとさ、いろいろな話が勝手に舞い込んでくるんだよ。
そんなモンですか!
はい、そんなモンです。でね、そういった話はユーザーさんから直接くることもあるし、「紹介」という形をとることもあるんだけど、とにかく、いいモノに関する情報が僕のところに舞い込んでくる。
で、僕はその話の本当のところを自分の目で確認したうえで仕入れ、そしてそれをきちっと整備したりレストアしたりして、欲しい人にお売りする……ってだけのことなんだよね、ある意味。
なるほど……。となると、これだけ超絶グッドコンディションな96年式セリカGT-FOURをたまたまオートオークションで買えたってのも、そのあたりのアレが関係してるんですかね?
「そのあたりのアレ」ってよくわからないけど(笑)、まあこれは普通に仕入れただけだよ。それはアナタの考えすぎ。
でもね……長いこと車屋やってる人間のプライドをかけて言わせてもらうと、このGT-FOURはいいと思うよ。無理くり売るつもりはぜんぜんないけど、これが欲しかった人にとっては絶対に「買い」だと思うけどな。
その後、「僕もフルノーマル派なんで、本当はこのGT-FOURのホイールも純正に戻してやりたいんだけど、なかなかなくてねえ……」等々の話をしてくれた池野代表。
上の文中の口調によって筆者が表現したとおりの「ざっくばらんなお人柄」である池野代表だが、中古車販売店店主=最高仕入れ責任者としての「眼力」には凄まじいものがあると感じられた。
よってこの96年式トヨタ セリカGT-FOUR、僭越ながら「勝手に中古車日本遺産」の第2号物件に認定させていただきます!
【関連リンク】
日刊カーセンサーの厳選情報をSNSで受け取る
あわせて読みたい
- アウトドアブームの過熱を引き金に、規格外に車内が広い車の注目度が上がる!?
- 【トヨタ タンクの中古車を買うなら?】オススメの選び方や相場、グレードなどを徹底解説
- 現行型ヴォクシーの平均価格が200万円切り目前|迫力重視の「煌」も、燃費重視のハイブリッドも買い時到来
- 【総予算100万円!】格安90’sミニバンを自分仕様に仕上げて遊ぶ(前編)
- 次期クラウンの開発事情
- VIP=セダンの時代は終わった!? ラージサイズミニバンの2列4人乗り仕様で、極上の贅沢を味わおう
- 植田圭輔さんが、真っ赤なポルシェで緑の中を駆け抜ける!
- 世界で3社しか市販していないレアなFCVの1台、トヨタ MIRAIのドライブフィールに注目! 【EDGE’S Attention】
- 【試乗】新型 トヨタ MIRAI|日本が生んだ大人のサルーンは、世界初の技術とともに進化を続ける
- 【だけじゃないクルマ屋さん巡り】まるでアウトドアショップ!? 玄人キャンパーも垂涎のお店「U-BASE湘南」