▲「21世紀に間に合いました」というキャッチコピーで鮮烈にデビューした初代プリウス。メカニズムもスタイルも近未来的だった ▲「21世紀に間に合いました」というキャッチコピーで鮮烈にデビューした初代プリウス。メカニズムもスタイルも近未来的だった

21世紀に向けてのカウントダウン開始

1997年(平成9年)といえば、足かけ9年の工期をかけて東京湾アクアラインが開通した年。

行ったよね、無駄に。

当時、アクアラインの通行料は片道3000円もしたんだけど、バンバン千葉ロケに行ってました。

1台じゃないからね、5台とかで、しかも往復ってことは交通費だけで3万円オーバー。

今考えるとモッタイなかったなー。

▲東京湾アクアラインが開通。海に潜っていくシチュエーションに「未来キター!!」って萌えてた1997年 ▲東京湾アクアラインが開通。海に潜っていくシチュエーションに「未来キター!!」って萌えてた1997年

平成9年の流行語は、なんと「失楽園」。

かの有名な不倫小説、映画化、ドラマ化もされました。

名詞としてだけじゃなく、動詞として「失楽園する?」なんて言い方もあったんだって。

2019年になってもまだ言ってる人がいたら、イタタタって感じだね。

世相を表す漢字は「倒」。

大企業の倒産ラッシュと、サッカー日本代表チームが強豪国を次々に倒して初の本戦出場を決めたから、とのこと。

うまいこと言った感だしてるけど、良いことと悪いこと一緒にするのってどうなの?

ちょっと前に大ブレイクした女子高校生のルーズソックスは、早速ブームが下火になってハイソックスに転換。

ポケベルもPHSに取って代わられた。

若い人の流行は今も昔も移り変わりが早いッス。

あの名曲、広末涼子の「MajiでKoiする5秒前」がリリースされた年でもあります。

今見ると曲名ダサッ!

▲若い人の通信手段はポケベルからPHSに。ちなみに「ピッチ」と読むんですよ、そこの現代の若い人! ▲若い人の通信手段はポケベルからPHSに。ちなみに「ピッチ」と読むんですよ、そこの現代の若い人!

パワー競争が激化していった1997年

さてさて、車関係は元気印のカットビ派が多かったことに気づきます。

トヨタ 2代目 アリストとか、普通のセダンなのに280psもあるモデルがあったんだよ。

カルディナの「GT-T」もワゴンなのに260ps、日産 ローレルの最終型も2.5Lターボの設定があったりとか。

ミニバンの三菱 RVRにも2Lターボの設定があった時代だからね。

どうかしちゃったの? ってくらい、パワー競争に走ってました。

SUVだってスポーツしたいっ! という新たなニーズを開拓

▲いわゆるドッカンターボのエンジンフィールが強烈だった初代フォレスター。写真は2000年のマイナーチェンジ後のもの ▲いわゆるドッカンターボのエンジンフィールが強烈だった初代フォレスター。写真は2000年のマイナーチェンジ後のもの

そうした影響はSUVにも飛び火。

当時の四駆といえばRAV4やエスクードのようなシティ派SUVがちょいちょい出始めていたものの、まだ本格的なブームにはいたらず、ランクルやパジェロ、サファリのような本格四駆の方が大勢だった時代。

そんなご時世にいきなり彗星のごとく登場したクロスオーバーが、スバルの初代 フォレスターでした。

昭和世代の人には懐かしいレオーネの再来を思わせるような乗用車的フォルムで、だけど車高はちょい高め。

もちろん4WDシステムは、スバルらしい本格的なものを採用しています。

エンジンについても250psを発生する2Lターボのみ、という潔さでした(後にNAエンジンも追加)。

メーカー主催の試乗会に行ったとき、前輪が接地感を失っちゃうほどの加速感に、目ん玉が飛び出そうになったのを覚えています。

ということで、平成9年に登場した車の私的ランキング、第3位はスバル 初代 フォレスターです!

▲NAを追加するなど、初代 フォレスターは好評に応えてラインナップを増やしていった。2000年にはS/tbをベースとしたホットモデル「S/tb-STi」も登場 ▲NAを追加するなど、初代 フォレスターは好評に応えてラインナップを増やしていった。2000年にはS/tbをベースとしたホットモデル「S/tb-STi」も登場

走りそのものを楽しみたい若者の心を捉えた

▲若いユーザーでも買えるスポーツモデルとして人気を博した初代 シビック Type R。5MTのみという割り切りも素敵! ▲若いユーザーでも買えるスポーツモデルとして人気を博した初代 シビック Type R。5MTのみという割り切りも素敵!

第2位は……スポーツカーからセレクト。

赤いエンブレムの……といえば、そう、ホンダのシビック Type Rです!

TypeRとしてはNSXやインテグラがすでにあったのですが、庶民にも買えるスポーツモデルを出してくれたことがランクインの理由。

185psの1.6L VTECエンジンにダウンサス、前後スポイラー、ヘリカルLSD、ポテンザのタイヤ、レカロ製バケットシート、モモ製ステアリング、チタン削り出しシフトノブなどが全部付いての170万円以下!

メーカー純正チューニングカーっていうか、ほとんどレースのベース車両って雰囲気です。

赤いインテリアもシャア専用って感じでカッコ良かった。

こういうソリッドなスポーツカーって、今は少ないものね。

登場から20年以上たつけど中古車市場ではまあまあなコンディションのが、まあまあなプレミアついて出回ってます。

▲真っ赤なレカロシート、チタン削り出しのシフトノブなど、スポーツカー好きが萌える要素いっぱい! ▲真っ赤なレカロシート、チタン削り出しのシフトノブなど、スポーツカー好きが萌える要素いっぱい!

未来を一歩も二歩も先取りしちゃった世界初の量産ハイブリッド

▲今見るとダサイようなカワイイような……。微妙なフォルムがたまらない初代 プリウス ▲今見るとダサイようなカワイイような……。微妙なフォルムがたまらない初代 プリウス

そして第1位は、初代トヨタ プリウスで決まりでしょう。

このセレクトには誰も文句ないはず。

だって世界初の量産ハイブリッドカーだよ。

「21世紀に間に合いました」ってキャッチコピーだったけど、トヨタ一流のパワープレイで間に合わせちゃった、というところね。

エンジンとモーターをひとつの駆動系に同期させる画期的な機構「THS(Toyota Hybrid System)」など、初代にして世界初のメカニムズも完成されていた。

私が当時に担当していた雑誌で扱う車とはジャンルが違ってたけど、あまりにセンセーショナルだったので何かにつけて取り上げたものなー。

バッテリー工場に見学に行ったら、普通の単一充電池(ちなみにニッケル水素)っぽいのを詰めててビックリした記憶があります。

当時はちょっと奇妙に思えたスタイリング、インテリアも今見るとフィクションの世界で描かれる未来っぽくてイイじゃんね!

思いのほか頑丈な車で、メインバッテリーさえ交換してあれば、まだまだ乗れるらしいよー。

▲中央メーター、インパネシフトも当時は画期的だった ▲中央メーター、インパネシフトも当時は画期的だった

そんなこんなで今回は、平成9年編をお届けしました。

そろそろ今でも中古車として現実的に買える車が出てきましたネ。

私が今乗ってるやつも、この時代の生まれ(一般的には過走行、超低年式だけど)。

プロダクトとしてどんどん洗練されながらも、大らかさとか、無骨さとか、そんな古い時代の良さも兼ね備えているのが、平成ヒトケタ代の魅力かもしれません。

text/田端邦彦
photo/田端邦彦、トヨタ、ホンダ、スバル、Adobe Stock、photoAC