トントントントン日野の25トン!? これこそまさにグラントゥーリズモ!
2018/08/02
環境対策に大きな一手! 大型トラックもついにハイブリッドに!
日野自動車は、来年2019年夏に大型ハイブリッドトラック「プロフィア・ハイブリッド」を発売すると発表しました。
CO2排出量削減を目指し、すでに四半世紀にわたってハイブリッド開発に取り組んできた日野。その実績をもとに、難しいとされてきた高速走行の多い車両でも燃費効果を発揮させられるハイブリッドシステムを実現しているといいます。
台数ボリュームとその車の走行距離を考えると、大型トラックは燃料消費量全体の6割を使用しています。燃費改善こそ全体のCO2排出量削減において最もインパクトが大きい対策にもなることから、市場からはすでに要望の多いモデルだったといえるでしょう。
トラックは見た目以上に中身が進化!
20世紀の終わりにはすでに誕生し、今やすっかりと市民権を得ているプリウスをはじめとしたハイブリッド車。それからだいぶたっているし、既存の乗用車の技術がしっかり確立しているのだから、トラックがハイブリッド……だから何なの? そう思う方もいるかもしれません。
トラックのハイブリッド車は乗用車のハイブリッドモデルほど、外観上にも大きな差異は見られません。もっと言えば、古いモデルとの違いさえそれほど差はないと言えるでしょう。
しかし、その中身の違いや完成度の高さは、乗用車のそれ以上。場合によっては今後の乗用車の世界でも活用できるのではないかという技術が盛り込まれているのです。
「なんだトラックか……」ではないのです! 環境対策、交通環境を考えたら誰にとっても身近な存在じゃないですか?
そんな画期的なモデルを発売1年前に発表したタイミングで、そのニューモデルをはじめ、トラックバスの同乗試乗も含めた環境技術説明会を開催。大勢のメディア関係者を招いて、最新の日野自動車の取り組みが紹介されました。
先ごろ久しぶりにモデルチェンジされ、よく見かけるようになった日野の大型トラック「プロフィア」。この顔は見たことがあるのではないでしょうか。
私たちの暮らしを支えてくれている大型トラック。直接触れることはないかもしれませんが、日頃口にする食料品やその原料などを運搬している車と考えれば、現在所有する愛車以上に生活に欠かせない車といえるかもしれませんね。
そんなプロの世界で使われるトラック。その最新の環境技術の数々から垣間見ることができたのは、トラックづくりの奥深さ、むずかしさ、シビアさでした。
トラックのハイブリッド化は乗用車とは違う課題や難しさが!
環境に優しい車を選んでいることを顕示すれば、物流会社などは「環境問題に向き合っている」という企業イメージにつながることはあるでしょうが、価格上昇は歓迎されません。
しかし、そのエクストラコスト以上に効果は出るか、という点はシビアに見られます。ディーゼルエンジンに付与するハイブリッドシステムによって、重量増で燃費改善効果を相殺してしまうようなことがあってはいけません。
また、燃費向上による経済性の向上分を相殺するほど高額なシステムであってはいけませんし、何より、肝心な積載量を目減りさせてしまうようなことがあってもなりません。
そして何より「壊れてしまいました」は企業の収益にもインパクトを与え、それを頼りにしている荷主(送り主)にも、届け先で待つ人にも迷惑がかかってしまうため、高い信頼性も必要なのです。
いつの間にかエンジンは超進化&ダウンサイジング!?
30年前には総重量25トンクラスのトラックでは排気量17Lクラスのエンジンを採用していたものの、来年登場するプロフィア・ハイブリッドでは同等のパワーを排気量9Lのエンジンで賄うのだといいます。
ダウンサイジングさせたばかりでなく、燃焼効率も改善しあらゆるフリクションを低減させる研究を重ね、このエンジンとのマッチングのいいハイブリッドシステムを組み合わせているのです。
トラックの特徴に合わせたハイブリッドシステムを開発
その一例はトランスミッションにも影響。平たんな場所では、従来型では2速発進が普通でした。
しかし、さらにフリクションを抑えるために、モーターが発進の瞬間に最大トルクを発生するという特性を生かし、3速発進に変更。そして加速していくにつれてエンジンがかかりますが、自然に静かに始動します。潤沢なトルクは、乗用車とはレベルの違う世界。その恩恵をしっかりと走りに生かしているのです。
またハイブリッド車ですので回生ブレーキで発電しますが、この発電量がやたらと大きくてもよくないのだそうです。アクセルを離し、従来のトラックでエンジンブレーキがかかる程度のG、減速をもたらす程度の回生の自然なフィーリングにすることにより、走っている状況での負荷に応じて発電ができるようになっています。
100km先までの高低差を計算してモーターアシストをコントロールだと!?
そして極めつけは、モーターのアシスト制御をトラック自ら行うということ。これから走る場所の地形を予測し、回生で電池にチャージできる可能性が多いエリアでは、積極的にモーターでアシスト。逆にあまり回生でチャージできる機会がなさそうであれば、モーターアシストを控えめにするといった制御を行うというではありませんか。
1台1台に「ロケーターECU」を持っていて、周辺の地形と自車の車速、位置などを特定。さらに進行方向の勾配、標高、位置などをリアルタイムで計算してバッテリーマネジメントとトルク配分の制御を行うのです。
これは、GPSを使って100km先までの標高情報と10kmごとの勾配情報で絶えず演算。最善の燃費を実現させる技術です。確かに一般的な車にはエリアが広すぎるかもしれませんが、それでも、乗用車にも活用できないことはない、ロングドライブに対して貪欲でたくましいシステムだと感じたのでした。
ドライバーを邪魔しない利口なAIを搭載
物流を担うトラックはほぼ定期便。ある程度のペース配分は必要です。順調か遅れているか、ドライバーがどんな意図でその時運転しているかもトラックが判断します。ドライバーが落ち着いている場合は積極的な運転支援を行い燃費の最適化を図った運航を推進します。
しかし、後れを取っていたり、多少ペースの回復を図っているな、という局面では運転支援の介入を最小限にするといった判断を車が行えるようになっているのです。
昨今は乗用車の自動運転が話題になっていますが、最新のトラックはそれ以上に高度。
ドライバーの状況をトラックが判断し、システムの関わり方やドライバーとの「距離感」を最適化しているという意味で、乗用車よりもはるかにドライバーズカー(プロが運転しているトラックとは、本来そう言うものなのだろうが)です。それが最新のプロフィア・ハイブリッドを前に感じた率直な印象でした。
状況によっては40km/Lというエコカーのような信じられない超低燃費を実現
ちなみに、総重量25トンのプロフィア・ハイブリッドは、最大積載量の状態でもモーターだけで最大14kmほど走行できるそうです。ただこの間にも様々な制御やスタンバイ状態を維持するためにアイドリング状態は維持。完全にエンジンが停止することはないとのこと。
乗用車とそこは違う点ですが、それでもバッテリーのエネルギーだけで走る間に使用する燃料はたったの350㏄。計算すると40km/L程度の燃費になるといいます。これは十分に燃費低減効果があると言っていいのではないでしょうか。
どこまでも快適に走って行けるGTカーと言っても過言ではありません
グラントゥーリズモ。私たちが思い描くGTカーとはおよそかけ離れたイメージのプロフィア・ハイブリッドですが、口数少なめであるようでいて、その後ろ姿は大いに「どこまでも走るんだ」と語っています。
そしてドライビングプレジャーではなく、私たちの日常と豊かさを満載にして、星空の下を縦横無尽に、日本列島を駆け抜けていくこの車こそ、紛れもなくグラントゥーリズモなのだ。そんなことを感じさせられたものでした。
「あのトラックはすごい、あなたが思っているより何十倍も」皆さんもそれだけはぜひ記憶にとどめておいてほしい。この日、私はそう思わずにはいられませんでした。