各社、プラグインハイブリッドと電気自動車導入を急ぐ
2017/07/07
新興国の自動車需要により、大気汚染が深刻化
新興国におけるモータリゼーションで、自動車の需要が増えていくことは、関連業種も含めて喜ばしいことではあるが、一方で地球温暖化や大気汚染といった環境問題の悪化も懸念される。
一例を挙げると、交通戦争と言わんばかりに、二輪車と四輪車が入り混じって走っているインドでは、大気汚染がひどくなっている。現地と長い関わりを持っている、スズキの鈴木修会長は、「信号待ちしている二輪車のアイドリングによる排ガスが問題。意外に早いうちに中国に並ぶくらい悪い状況になるのでは?」との懸念を示している。
大鉈を振るった中国
地球規模での環境対策が必要になる中、新興国でも規制を設ける動きが出始めている。例えば、中国は2018年から、「NEV(ニューエネルギービークル)規制」を実施する旨を発表した。
その内容とは、全生産台数の8%をプラグインハイブリッド(以下、PHV)、電気自動車(以下、EV)、燃料電池車(FCV)で占めること。年間100万台を生産しているメーカーなら、これらの先進エネルギー車を8万クレジット、量産しなければならない。
クレジットとは、いわばNEVを台数換算する独自の算定基準だ。PHVは1台で2クレジット、EVは1台あたり3クレジットに相当する。つまり、年産100万台のメーカーは、PHVなら8万クレジット÷2クレジット=4万台、EVなら8万クレジット÷3クレジット=約2万6700台といった具合に適合する車の生産台数が算定される。これを用いてザッと算定すると、トヨタ、日産、ホンダの3社それぞれの中国でのNEV生産枠は、約10万クレジットになる。車に換算すると、PHVなら5万台、EVなら約3万台を生産しなければならない計算だ。
日本メーカー各社のNEV対策
各社がNEV規制を見据えて投入するモデルを予想してみよう。三菱を傘下に収めた日産は、アウトランダーPHEVの技術をそっくりそのまま手に入れることができるため、次期エクストレイルにPHEVを設定する公算が大きい。中国だけでなく、別名ローグとして快走を続ける北米でも、独自性をアピールできる好材料になるはずだ。
トヨタは、2015年10月から中国専売のカローラHV、レビンHVを売り出しており、これにPHVを加える計画を明らかにしている。導入予定は2018年だ。
新型CR-Vのハイブリッド仕様を2017年4月に、中国で初公開したホンダは、今後も車の電動化を進め、2018年には中国専用のEVを発売する。
トップ3以外の中規模メーカーでは、マツダは2万3000クレジット(PHV約1万2000台、EV約7700台)、スズキは1万500クレジット(PHV約5200台、EV約3500台)となる。いずれもこれだけの少量のために、技術開発や生産整備を整えるとは考えにくい。ひとまずはクレジットを他社から買うか、ペナルティを支払って免れる可能性もゼロではない。
欧州のCO2排出基準がさらに引き締められる
米国カリフォルニア州などで施行されている、「ZEV(ゼロエミッションビークル)規制」は、2018年から強化される予定だ。全米ではなく、州ごとでの策定ではあるが、生産を義務付けられるのは、PHVかEVだ。
また、EUでは、2021年にCO2排出基準が、95g/kmに引き締められる。現在、ヨーロッパのモーターショーで、各社がニューモデル発表に際して、「95g/km達成!」を声高にアピールしているのは、これが背景にあるからだ。
CAFE(コーポレートアベレージフューエルエフィシェンシー=企業平均燃費)の基準値は、2020年時点で日本と中国が約20km/L、米国が約19km/L、ヨーロッパが約24km/Lとなる。こちらはモデル別の燃費と販売台数を掛け算し、その総合計がCAFE基準に達していないと罰金が課せられる仕組みだ。あまり知られていないが、日本の燃費目標もすでにCAFE方式になっているのだ。もっとも、実際に罰金を払ったメーカーはまだないようだ。このCAFEの計算においても、普通のハイブリッドカーは、優遇の対象外になってしまった。米国、ヨーロッパともにEVとPHVが対象になっているため、各社はPHVの開発と導入に躍起になっているのだ。
※2017年7月7日現在における予測記事です
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