▲数年前に東芝製のバッテリーを搭載して製作したダットサン フェアレディの電気自動車。今後は日産 リーフのバッテリーを搭載する予定 ▲数年前に東芝製のバッテリーを搭載して製作したダットサン フェアレディの電気自動車。今後は日産 リーフのバッテリーを搭載する予定

好きな中古車をEV化して、乗り回せる時代!?

編集部N(以下、N): ぴえさん、近々車を買うらしいですね

ぴえいる(以下、ぴ): お、耳が早いね。マツダのCX-3あたりがい―

: 相変わらず昭和な発想ですねー。おそらく「実家が雪国の新潟だからSUVがいいかな、50歳になっても独身だし、コンパクトカーでいいか」とかそんな感じでしょ?

: じ、じゃあ平成の発想ってどんなんだよ!(怒)

:(時計を見ながら)お、ちょうどこれから出かけるんですが、一緒に来ませんか?

というわけでNくんに連れられ、やって来たのは横浜市にある「オズコーポレーション」。「平成の発想」とやらを見せてもらおうじゃないかあ! と付いて来たのだが、プライスボードを掲げた車はどこにも見当たらない。しかしNくんは何食わぬ顔で2階の事務所へ上がっていく。

: こんにちわー。ご無沙汰してますー

古川さん(以下、F): やあNくん、お久しぶり。まずはケータイの充電でもどう?

といきなり目の前に差し出されたのは、中古EVのバッテリーを利用したモバイル充電器。驚きでいきなり固まる私。
 

▲USBソケットを左右に5つずつ備えたモバイル充電器。バッグの中には日産 リーフの中古車から取ったリチウムイオン電池を搭載 ▲USBソケットを左右に5つずつ備えたモバイル充電器。バッグの中には日産 リーフの中古車から取ったリチウムイオン電池を搭載

: で、今日は?

: 実はぱいせんのぴえいるさんが、車を買いたいというので、じゃあ古川さんのところで改造電気自動車を作ってもらったらどうかなと思いまして

: え、改造電気自動車?

実は古川さんは改造電気自動車の製作において、日本でナンバー1ともいわれるほどのスペシャリスト。

ゆとり世代のNがいう「平成の発想」とは、「好きな中古車を電気自動車にするとか、まじやばいっす!」という、「やばい」がいい意味で使われると理解し難しい50のおっさんには思いもよらない新時代の魅力的な車の所有術だったのだ。
 

▲改造電気自動車のスペシャリスト、古川さん。個人や企業から電気自動車への改造を依頼されている。電気自動車の普及を促進するAPEV(電気自動車普及協会)会員 ▲改造電気自動車のスペシャリスト、古川さん。個人や企業から電気自動車への改造を依頼されている。電気自動車の普及を促進するAPEV(電気自動車普及協会)会員

EVなフェアレディ、イセッタ! プリウスは後輪駆動化まで!

: ですから、ぴえいるさんはお気に入りの中古車を選べばいいだけ。あとは古川さんが電気自動車にしてくれますから

: でも、中古車を電気自動車にして、公道は走れるの?

: 走れますよ。もともと公道を走れる車を電気自動車に「改造」するだけですから。車検証は型式のところに「改」と入って、燃料の種類に「電気」とか入る程度です

: ち、賃貸住宅住まいだから充電器とかないし……

: ちまたにある充電スタンドを使うといいですよ。もう国内では(最も普及している規格である)CHAdeMO(チャデモ)の急速充電器箇所が6000ヵ所以上、普通充電器はそれ以上ありますからね。今ダットサン フェアレディをリニューアルして、新しいリチウムイオン電池に載せ替えようかと思っていて。そうしたら記念に横浜の日産自動車本社にある充電スタンドへ行こうと思ってます

: に、新潟に帰省したりしたいんだけど……

: じゃあ急速充電対応は必須ですね

い、いかん。断る理由が見つけられない……

: とりあえず、私がどんな車を改造電気自動車にしてきたか、見てみますか?

と紹介されたのはBMW イセッタ。記事末の写真をご覧いただきたいが、そもそもEVとは関係なしに珍車の域に入る。それが普通に動くとは……。

たたみかけるように続くのがFR化されたプリウス。見た目はプリウスだが、中身は別物らしい。なんだここは……。

▲オーナーの依頼で作成したBMW イセッタの改造電気自動車。改造前よりも速くなったとか。バッテリーは日産 リーフのものを使用 ▲オーナーの依頼で作成したBMW イセッタの改造電気自動車。改造前よりも速くなったとか。バッテリーは日産 リーフのものを使用
▲FFのハイブリッド、旧型トヨタ プリウスを「ドリフトさせてみたくなったので」後輪駆動の電気自動車に改造 ▲FFのハイブリッド、旧型トヨタ プリウスを「ドリフトさせてみたくなったので」後輪駆動の電気自動車に改造

分からないこともあるけれど、ひとまずEV化を知る

: 他にもガレージにまだ見せられない車があるんですが、今日はこんなところで。いずれにしろ、古い車はすごく魅力だけど故障が増えていきがちですよね。個々のケース次第ではありますが、せっかく持っていても修理に出している時間が長くて、ほとんど乗れないなんてこともある。だったら心臓部を最新のものにしちゃえ、という発想ですよ。最近はそんな声が多くなってきて、結構忙しいんです

: 日本ではまだあまり知られていないですが、アメリカじゃフォーミュラEの前座に改造電気自動車が走るくらい、メジャーになってきてますからね

: いや、無理にブームに乗らなくても、私はただコンパクトなSUVが欲しいだけで……

: ぱいせんのためなら仕方ないっすねー。じゃあまずは3人で車種選びから始めましょうか?

そういってNくんはFさんと一緒にカーセンサーnetで車を探し始めた……あれ、買うのは私だよね? 使うのも私でいいんだよね? じゃあ私が選ばなくっちゃと、私も選び始めた……っていいのか、ぴえいる?

安全基準はどうなっているんだろうとか、改造電気自動車の下取りって安いのかなとか不安はまだまだあるけれど、とにもかくにも「EV(電気自動車)化」というものがあると知った1日であった……。

text/ぴえいる
photo/編集部、オズコーポレーション