▲FFはボンネット内でエンジンを横置きにして前輪を駆動させるのが一般的。しかし日本初のFF車であるスズキ スズライトSSはエンジンを縦に置いて前輪を駆動させていました ▲FFはボンネット内でエンジンを横置きにして前輪を駆動させるのが一般的。しかし日本初のFF車であるスズキ スズライトSSはエンジンを縦に置いて前輪を駆動させていました

技術の進化で現在では大型車も採用

車のカタログやカーセンサーの試乗ページを見ているとスペック情報の「駆動方式」と書かれた部分に「FF」「FR」「4WD」などの記号が書かれています。これってどういう意味か分かりますか?

これは文字どおり、その車がどうやって動いているか(=駆動)を記載しています。4WDは「Four-Wheel Drive」の略で(「All Wheel Drive」とも呼ばれます)、四輪すべてを動かしていることを表します。車に詳しくない人でも「ヨンク」という言葉は聞いたことがあるはず。ヨンクとは四輪駆動の略なんですね。

ここで駆動方式に書かれる略語を紹介しましょう。
●FF:Front-engine Front-driveの略。エンジンが前方にあり、前輪を駆動します。
●FR:Front-engine Rear-driveの略。エンジンが前方にあり、後輪を駆動します。
●MR:Midship-engine Rear-driveの略。エンジンを前後の車軸の内側に積み、後輪を駆動します。
●RR:Rear-engine Rear-driveの略。エンジンを後方に積み、後輪を駆動します。

2015年4月に発売開始となったホンダの軽オープンスポーツ、S660は駆動方式がMRであることが話題となっています。しかし4WDを除くと、国産車はほとんどがFFまたはFRです。

FFは駆動と操舵(ハンドル操作)を前輪が一手に担うため、前輪への負担が大きいと言われますが、一方で後輪を駆動させるためのパーツがいらないので室内が広くなる、製造コストを抑えられるなどのメリットがあります。

FFは自動車史の初期から作られていましたが、日本の自動車史を見ると最初はFRが主流でした。日本で初めてFF方式を採用したのは1955年に登場したスズキ スズライトSS。日本初の4人乗り可能な本格的軽四輪自動車でもありました。

スズライト登場後も日本車ではFRが主流。またスバル 360(1958年)、三菱 500(1960年)マツダ キャロル360(1962年)などはRRの駆動方式を採用しました。一方、スズキは軽自動車のフロンテ(1962年)、小型車のフロンテ800(1965年)をFFで生産。ただ、フロンテは2代目以降はRRへと駆動方式を変更しました。

スズキ以外のメーカーがFF方式を採用するのは1965年以降になります。ホンダはN-ONEのモチーフにもなっているN360(1967年)でFFを初採用、日産は1970年発表のチェリー、トヨタは1978年登場のターセル/コルサでFFを初採用しました。

当初は小型車が多かったFFですが、だんだんと大型モデルでも採用されるように。1985年にはトヨタ クラウンや日産 セドリックと同クラスとなる初代ホンダ レジェンドがFFで登場しました。

室内を広くできる一方で、アンダーステアになりやすいなどのデメリットもあったFF。しかし多くのメーカーは技術力でそれを克服し、現在ではミニバンやSUVなど幅広いモデルで採用されています。あなたの愛車はいかがですか?

▲パブリカやファミリアなどの小型乗用車がライバルとなるフロンテ800。競合車がFR方式を採用する中、FFで登場。軽自動車にもあった車名のフロンテには「先駆者」という意味がこめられています ▲パブリカやファミリアなどの小型乗用車がライバルとなるフロンテ800。競合車がFR方式を採用する中、FFで登場。軽自動車にもあった車名のフロンテには「先駆者」という意味がこめられています
▲Nコロの愛称で多くの人から愛されたN360。FFの特性を生かしつつ、タイヤを可能な限り4隅に配置。広大な室内空間を確保したモデルです ▲Nコロの愛称で多くの人から愛されたN360。FFの特性を生かしつつ、タイヤを可能な限り4隅に配置。広大な室内空間を確保したモデルです
▲プリンス自動車工業が開発し、合併後に日産から発売されたチェリーは、日産初のFFモデルです。2ドアの他、3ドア、4ドアもラインナップされました ▲プリンス自動車工業が開発し、合併後に日産から発売されたチェリーは、日産初のFFモデルです。2ドアの他、3ドア、4ドアもラインナップされました
▲2.0Lと2.5L V6エンジンを横置きに配置したホンダの最高級セダン、レジェンドが登場したのは1985年。現行型レジェンドは3モーターハイブリッド方式を採用し、駆動方式は4WDになります ▲2.0Lと2.5L V6エンジンを横置きに配置したホンダの最高級セダン、レジェンドが登場したのは1985年。現行型レジェンドは3モーターハイブリッド方式を採用し、駆動方式は4WDになります
text/高橋 満(BRIDGE MAN)