ハイエンド・ハードトップ BMW Z3 Mクーペ【懐かしのコンセプトカー】
2010/02/15
BMW Mクーペ(1997年東京モーターショー)→Z3 Mクーペ(1998年)
1997年に開催された第32回東京モーターショーにて、Mロードスターが参考出展、Mクーペはコンセプトカーとして出展された。ベースとなっているのはオープンカーのBMW Z3。そのMバージョンのクーペ版がコンセプトカーとして登場したというわけだ。翌年からアメリカの工場で生産が始まった。
BMW Z3をベースにしたコンセプトカー「Mクーペ」。その翌年の1998年には、あまり姿を変えることなく、市販化された
市販化を見込んで作られたMクーペ
右の写真は、コンセプトカーのMクーペと同時に参考出展されていたMロードスター。翌年に市販化されたことを考えると、ほぼ完成形での出展だった。またMクーペも、同じくZ3をベースとしていた。
そもそもZ3は1989年に登場したマツダユーノスロードスターの影響を受けて登場した。余談になるが、ユーノスロードスターはZ3だけではなく、MG-Fやフィアット・バルケッタなど、世界各国のメーカーで同クラスのオープンモデルがデビューするほどの影響を与えた。
BMWの存在感は、その哲学ともいうべき独特のドライビングフィールにある。もちろんZ3でも、BMWらしい世界観は感じられるのだが、よりスポーツ感を楽しみたいというドライバー向けに、BMWは3、5、7など各シリーズに「Mバージョン」を設定している。Z3にMバージョンが加わったのも当然の流れだ。
ところが、さらにクーペモデルまで出してきたということで、当時BMWデザインの思い切りの良さは驚きをもって迎えられた。
MロードスターとMクーペ、BMW血中濃度はMクーペに軍配
Mクーペのスペックは全長4035×全幅1740×全高1280mm。MロードスターとMクーペには、Z3のプラットフォームにチューニングされたM3用のエンジンが搭載された。3.2Lの直6エンジンは321ps/7400rpmを発生。当時の販売価格はいずれも730万円であった。
当時流行っていたロードスターモデルだが、なかには「この形でハードトップモデルが欲しい」という、「わがままな」ファンも多かった。そこを考慮すれば、Z3をベースにハードトップモデルが登場してくるのは自然の流れであったといえよう。
730万円となると「お手頃」とは言い難いのだが、そもそもZ3はユーノス・ロードスターとは全く違うコンセプトで作られた、いわばハイエンドモデルである。さらにそのクーペモデルという付加価値のついたMバージョンが登場したとなれば、期待していたファンの食いつきもよくなるというもの。BMWのマーケティングの鋭さを感じたものだった。
Z3ロードスターに、ハードトップを載せてしまったようなMクーペのスタイルは、賛否両論かも知れない。
だが、迫力のあるエクステリアと、凝縮されたM製の骨太なエンジンフィーリングがよりマッチしているのは、MロードスターよりMクーペの方ではなかろうか。BMWマニアにとって、たまらなく個性的な一台となるのが、このMクーペだと思う。