▲新潟市街のシンボル的な橋、萬代橋(ばんだいばし) ▲新潟市街のシンボル的な橋、萬代橋(ばんだいばし)

「重要文化財」に指定された車はないが、車で通れる「重要文化財」なら存在する

兵庫県姫路市の姫路城が大改修によって白さに磨きをかけ、「白鷺城」という別名に、よりふさわしい姿になっている。「世界文化遺産」であり、また松本城・犬山城・彦根城と並んで4城しか存在しない「国宝」でもある姫路城は、まさに日本の象徴的な建造物といっていいだろう。

日本ではまだ100余年の歴史しか存在しない自動車には、残念ながら「世界遺産」や「国宝」はもちろん、「重要文化財」に指定されているものも存在しない。しかし、車で通れる「重要文化財」ならいくつかある。そう、「橋」だ。

現在、重要文化財には27点の橋が登録されている(2つ以上の橋がセットで登録されているものもある)。このうち人道橋や水道橋、鉄道橋や神社仏閣の門前橋などを除くと、車で通行できるのはわずか6点7橋しかない。日本の道路元標が置かれている日本橋、隅田川を渡る清洲橋、永代橋、勝鬨橋の4橋が東京都心に、淀川を跨ぐ淀屋橋、大江橋の2橋は大阪市に存在する。

▲「日本国道路元標」のある日本橋。国道1号、国道4号など7つの国道の起点となっている ▲「日本国道路元標」のある日本橋。国道1号、国道4号など7つの国道の起点となっている
▲隅田川に架かる永代橋。夜間はブルー&ホワイトにライトアップされることでも有名 ▲隅田川に架かる永代橋。夜間はブルー&ホワイトにライトアップされることでも有名

重要文化財の橋が東西の中心に集中している中で、唯一の例外が信濃川の河口付近に存在する萬代橋(ばんだいばし)だ。政令指定都市である新潟市の中心部に位置し、日本一の長さを誇る大河川を横断すると聞けばなんとなく納得はできるものの、他の橋が都市部に集中しているなかで、(新潟市民の皆さんには申し訳ないが)「なぜ新潟に!?」という思いも禁じ得ない。現地に行って、どんな橋なのか調べてみた。

▲両岸が繁華街なので、車だけでなく歩行者の通行もかなり多い。新潟駅へも徒歩圏内 ▲両岸が繁華街なので、車だけでなく歩行者の通行もかなり多い。新潟駅へも徒歩圏内

萬代橋は、古くからの繁華街である古町と、交通の要衝である新潟駅を一直線に結ぶ国道7号に架かっていて、橋の前後の一帯は新潟市でも一番の目抜き通りとなっている。元々、信濃川の西岸である古町は半島状でアクセスが悪く、交通をスムーズにするため明治19年に初代の萬代橋が架けられたという経緯がある。

▲現在の萬代橋のすぐ横に、初代萬代橋が架けられていた場所を示す石碑が ▲現在の萬代橋のすぐ横に、初代萬代橋が架けられていた場所を示す石碑が

歴史的な風格と、現代的な使い勝手を両立した萬代橋

1904年(明治37年)に新潟駅が信濃川東岸にできたこともあり、それまでの木橋を廃して作られたのが3代目である現在の萬代橋。1929年(昭和4年)に竣工され、橋長306.9m、幅員22mの当時としては大規模だった6連アーチの鉄筋コンクリート橋だ。側面には全体に花崗岩(かこうがん)が施され、歴史ある建造物ならではの重厚さが感じられる。

現在も幅員が広めの車道両側4車線+広々とした歩道が確保されており、歴史的な風格と現代的な利便性がマッチしているのがすごい。すごいのだが、なにせ作られてから100年近く経つ橋だけに、あまりにも周囲に溶け込んでいる。重要文化財だ!と思って観察しないと、なかなかすごさは感じられない。

▲古町側(西岸)の横断歩道から、新潟駅方面(東岸)へ向かって。広々とした4車線 ▲古町側(西岸)の横断歩道から、新潟駅方面(東岸)へ向かって。広々とした4車線
▲側面は石造りで重厚な雰囲気。アーチの曲線が美しい! ▲側面は石造りで重厚な雰囲気。アーチの曲線が美しい!

オススメの観察方法は、
・河岸からじっくりと6連アーチの機能美を堪能する
・周囲に点在する高い建物(近くにある朱鷺メッセの展望室など)から見下ろす
・観光遊覧船(萬代橋西岸や朱鷺メッセなどから出航している)に乗って下から眺める
といったところだ。もちろん、車や徒歩でも1回は渡っておきたいところ。

橋上の照明灯や、アーチ間にある橋側灯、高欄の鉄柵も時代がかった橋のデザインにマッチしているが、残念ながらこれらは復元されたもの。竣工当時のものは、太平洋戦争中の金属供出のために失われてしまったのだという。ただし、当時の図面に従って忠実に復元されているため、意匠についてはちゃんと感じ取ることができる。

▲復元された橋側灯。竣工当時の写真等を元に復元された ▲復元された橋側灯。竣工当時の写真等を元に復元された
▲実は重要文化財の指定は青色の範囲のみ。隅柱のある周囲の広場などは対象外なのだ ▲実は重要文化財の指定は青色の範囲のみ。隅柱のある周囲の広場などは対象外なのだ

萬代橋は重要文化財にふさわしい納得の建造物だった。お城好きの間では「国宝4城・重文8城」めぐりをすることがマニアへの第一歩だとされるだけに、ぜひ橋マニア、そして道路マニアの皆さんには、萬代橋をはじめとする「重文7橋」を、まずは制覇していただくことを提案してみたい。