▲時代劇ファンなら、「五鉄」の軍鶏鍋を食べるためだけに東北自動車道に乗って羽生パーキングエリアに来る価値アリだと思います! ▲時代劇ファンなら、「五鉄」の軍鶏鍋を食べるためだけに東北自動車道に乗って羽生パーキングエリアに来る価値アリだと思います!

あの時代劇の世界観にどっぷり浸かれるパーキングエリア

「いつの世にも悪は絶えない」

タイトルと最初の文章にニヤリとした人。お仲間です。お仲間じゃない人に、簡単に説明します。冒頭の一文は、ドラマ「鬼平犯科帳」のオープニングの言葉。鬼平犯科帳とは、故・池波正太郎の時代小説。火付盗賊改方長官であった鬼平こと長谷川平蔵宣以(のぶため)が、江戸に跋扈する盗賊と対峙し、事件を解決していくといった物語です。

30~40代の人なら、平成元年から平成13年までフジテレビ系で放送されていた二代目中村吉右衛門主演の時代劇の方がなじみ深いかもしれません。いずれにしろ、小説、ドラマともに、いまでも高い人気を誇る作品です。

NEXCO東日本管内の東北自動車道羽生パーキングエリア(上り)がリニューアルして、この鬼平犯科帳の世界観を再現。「鬼平江戸処」としてオープンしたのは、昨年12月19日のこと。話題になったのでご存じの方も多いかもしれません。

池波正太郎記念文庫と鬼平江戸処、「鬼平好きとして、一度は足を運んでみなければ」と勝手な使命感を持っていたのですが、なかなか行く機会がなく、この度、遅ればせながら鬼平江戸処へ行ってきました。

▲鬼平犯科帳では、盗賊に押し入られた呉服問屋「近江屋」ですが、このパーキングエリアでは、盗人行為はダメ、絶対! ▲鬼平犯科帳では、盗賊に押し入られた呉服問屋「近江屋」ですが、このパーキングエリアでは、盗人行為はダメ、絶対!

最大の目的は、「五鉄」で軍鶏鍋を食べること。鬼平犯科帳の魅力のひとつに、庶民が舌鼓を打った江戸の食がありありと描かれている場面があるのですが、その中でも最も印象的なのが、平蔵や密偵たちの馴染みにしている軍鶏料理屋「五鉄」なんです。

まるでリトル太秦!? まずは江戸の街を散策

楽しみの「五鉄」はメインイベントに、まずは「鬼平江戸処」を散策してみます。長谷川平蔵が生きた時代は、江戸の町人文化が花開いた文化文政の世(1804~1830年)。「鬼平江戸処」は、この当時の江戸を表現するため、建物から小物類に至るまで、民俗学者の神崎宣武氏が監修したのだとか。

▲街並みは、長谷川平蔵が若き日を過ごした本所深川や日本橋をイメージしているとのこと ▲街並みは、長谷川平蔵が若き日を過ごした本所深川や日本橋をイメージしているとのこと

こだわりまくっただけあって、外観の雰囲気は江戸そのもの。もし、お客さんがいなければ、時代劇の撮影ができちゃいそう。着流しに模造刀を差して写真を撮れば、ちょっとしたコスプレ撮影会になりそうです(模造刀を持ち歩くと、銃刀法違反に問われる可能性があるのでご注意を!)。

▲目をこらすと、柱に刀傷を発見。盗賊との斬り合いでできたものを再現? ▲目をこらすと、柱に刀傷を発見。盗賊との斬り合いでできたものを再現?

「なんでこんなにリアルなのかな?」と考えてみたのですが、多分、“汚し”の技術がスゴいんです。汚しとは、時代劇で看板や柱、登場人物の衣服、道具などをわざと汚し、長年使った雰囲気を出すこと。よーく見ると、看板に雨のシミがあり、文字が薄れたりしています。

他にも、細かいこだわりは随所に散りばめられています。例えば、盗賊や密偵が仲間との連絡に使う「つなぎ」ですが、「鬼平江戸処」には、菅笠や水桶など6つのアイテムがあるとのことなので、ぜひ探してみてください(どうしても分からなかったら、お土産売り場脇の、かわら版コーナーに設置されているiPadで確認できますよ)。

いよいよ、長谷川平蔵も味わった軍鶏鍋を実食

さて、メインイベントの「五鉄」でございます。いただいたのは、鬼平犯科帳に出てくる「五鉄の軍鶏鍋」をイメージしているという「鬼平江戸処膳」、1800円也。そしてもう一品、ファンにはお馴染みで、作品のタイトルにもなっている「一本饂飩」です。

▲「鬼平江戸処膳」。国産軍鶏肉のブツ切りと、ゴボウ、しらたき、焼豆腐、ネギを五鉄特製の割下に浸した鍋と、きんかん、レバー、砂肝が入った鶏肉のモツ鍋、茶飯にお新香、くず餅のセット ▲「鬼平江戸処膳」。国産軍鶏肉のブツ切りと、ゴボウ、しらたき、焼豆腐、ネギを五鉄特製の割下に浸した鍋と、きんかん、レバー、砂肝が入った鶏肉のモツ鍋、茶飯にお新香、くず餅のセット

「鬼平江戸処膳」を目の前にすると、「これが、長谷川平蔵と密偵がつついていた、あの軍鶏鍋か…」と感慨もひとしおです。鶏肉を一口ほおばると、具材にしっかりと味が染み込み、鶏肉のうま味もしっかりと広がります。焼豆腐にも鳥のうま味が染みていて美味。もつ鍋は内臓のうま味にお酒が欲しくなりますが、車なので茶飯をかっこみます。

実は、この「五鉄」をプロデュースしているのは、作中の五鉄のモデルになったといわれている「玉ひで」。宝暦10年(1760年)創業の鳥料理の老舗で親子丼の元祖なのだとか。そりゃ、うまいわけだ。

▲「一本饂飩」。開発に3年かかったという話も。この太さのうどんをしっかりと煮込むのは、なかなか難儀なのだとか ▲「一本饂飩」。開発に3年かかったという話も。この太さのうどんをしっかりと煮込むのは、なかなか難儀なのだとか

次は、「一本饂飩」です。半熟卵と水菜が入った濃いめの割り下に浸けられているのは、長さ50cmのうどん麺。しかし、幅2.5cm、厚さ1cmと激太なので、食べ応えは十分。ドラマでは、「一本饂飩」が好物の同心、木村忠吾が「少しずつ箸で切りながら食べる」と助言をするシーンがあったので、それに習っていざ実食。強いて言うなら、すき焼きに入った厚みのあるすいとんといった感じでしょうか。一般的なうどんとは味も食感も違うけれど、甘辛いタレとうどんが絡んで、こちらも美味でございます。

食後はデザート。こちらもファンにはお馴染み、同心、木村忠吾のあだ名である「うさ忠」の由来にもなった「うさぎまんじゅう」をお土産処で買って……と考えていましたが、さすがに満腹になったのでやめました。ほかにもフードコートには、池波正太郎もひいきにした神田まつや監修のそば屋「本所さなだや」や日本橋たいめいけん監修の「弁多津」の江戸風中華めんなど、一度は食べたいグルメがたくさんあるので、「うさぎまんじゅう」も併せて次の楽しみに取っておきましょう。

▲「うさぎまんじゅう」。小説では、芝・神明前のお菓子屋さん「まつむら」で売られているという設定 ▲「うさぎまんじゅう」。小説では、芝・神明前のお菓子屋さん「まつむら」で売られているという設定

これからの夏休み、東北自動車道を利用する人はもちろんのこと、時代劇が好きな人なら、「鬼平江戸処」を目的地にしても満足できること請け合いですよ。

text/コージー林田