KABEインペリアル▲軽自動車からスーパーカーまでジャンルを問わず大好物だと公言する演出家のテリー伊藤さんが、輸入中古車ショップをめぐり気になる車について語りつくすカーセンサーエッジの人気企画「実車見聞録」。誌面では語りつくせなかった濃い話をお届けします!

日本人には絶対に真似できない“ファンタジー”がある!

今回は、「SANKOU」で出合ったKABE トラベルマスターインペリアル i910 QBについて、テリー伊藤さんに語りつくしてもらいました。

~語り:テリー伊藤~

今月はいつもと趣向を変えて、贅沢なキャンピングカーを紹介します!

これはスウェーデンのキャンピングカービルダーであるKABEが、メルセデス・ベンツの商用バンであるスプリンターをベースに製作したもの。

シリーズ中最大サイズのモデルなので大型免許が必要ですが、もう少し全長が短いものなら普通免許でも大丈夫だそう。

KABEインペリアル▲全長9320×全幅2329×全高3065という大迫力サイズ。後輪は4軸になっています

日本では今、若い人たちの間でもキャンピングカーがブームです。ただ、日本で流行っているのは軽キャンパーやハイエースベースのバンコンなど。

日本のキャンピングカーとは対極にあるこのモデルは、まるでクルーザーですよ

これだけ大きくて豪華な装備が付いているので、価格は数千万円するでしょうが、クルーザーは普通に数億~数十億円するし、いいマリーナだと係留費用が毎月10万円以上かかります。それを考えれば安いものです。

KABEインペリアル▲リアには常設のダブルベッドが。フロア下に大きな荷室があるので、ベッドは高めの位置に設定されています

残念ですが、こういうゴージャスなキャンピングカーは日本人にはなかなか作れないでしょうね。

スポーツカーを見ても、イタリアのスーパーカーにはアートとしての色気があるのに、日本車にはそれがない。僕は、イタリア車などがもつ独特の色気を“ファンタジー”と表現しています。

そして日本車からファンタジーが生まれない理由をずっと考えていて、日本人のオタク気質が原因だという結論に達しました

KABEインペリアル▲フロントマスクはベースとなったスプリンターから大きく変えられています

例えば、今も売れているスズキ ジムニー。街でも多く見かけますが、どうも女の子と爽快にドライブしようというものではなく、1人でカスタムしながら楽しんでいる人が多いように感じます。悪くはないのですが、そこからセクシーな視点は生まれないですよね。

モーターホームとも呼ばれる豪華なキャンピングカーといえば、アメリカやヨーロッパ製が有名です。最近では台湾製のキャンピングカーも注目されていますね。

アメリカには50歳くらいでリタイアして大型のモーターホームを手に入れ、夏はフロリダに、冬はカナダのウィスラーまで移動して、人生をのんびり楽しんでいる人もいるでしょう。うらやましい人生ですね。

KABEインペリアル▲ゴージャスなキャンピングカーでのんびりとした暮らしを楽しむ。人生の勝ち組ですね

テリー伊藤ならこう乗る!

以前にもこの企画でお伝えしたことがありますが、僕は20歳の頃にマツダ ボンゴをキャンピング仕様に改造して仲間と旅をしていました。本当はワーゲンバスのキャンピング仕様が欲しかったけれど、高くて買えなかったんですよ。

特に記憶に残っているのは、東京から軽井沢を経由して新潟に向かい、そこから日本海を走って京都まで行き、最終的に大阪万博に訪れた旅です。このときは2週間くらいボンゴで過ごしましたね。

KABEインペリアル▲自転車も積める巨大な荷室。海などで遊んだときに使えるシャワーも設置されています

新しい街に入ると僕らはまず煙突を探します。煙突=銭湯ですね。当時は高いビルなんてなかったから煙突はすぐに見つかりました。でも今だとそうはいかないでしょうね。

当時の旅で最も困ったのは水です。今でこそどこにでもコンビニがあってすぐに水が手に入りますが、僕が旅した頃はミネラルウオーターなんてなかったし、そもそもコンビニがありませんでしたから。だからシンクが付いているキャンピングカーがうらやましかった。

KABEインペリアル▲ギャレーにはシンクとコンロを設置。日本ならこの設備がなくても十分楽しめるでしょう

今はすぐに水が手に入るから、僕はキャンピングカーにシンクはいらないと思っています。コンビニでいくらでもおいしい食事が手に入るから、コンロよりも電子レンジの方が便利でしょう。

本来、キャンプは不便を楽しむもの。問題が生じたら、手元にあるものでそれを解決するのも醍醐味の一つです

狭い日本のキャンピングカーだとスペースに限りがあるので、旅をしていたら不具合も生じます。狭いから仲間や彼女と喧嘩になることもあるはずです。

でもすべてが揃っているこのモデルなら、不便とは無縁の旅になるでしょうね。

KABEインペリアル▲運転席にラクに乗り込めるようステップが設置されています

自然の中に行ったら僕は天体望遠鏡で星を見たい。でもこの車で旅するとき、夜はNetflixで好きな映画を見ていると思います

これだけ大きな車を運転する自信は僕にはないので、ドライバーを雇って僕は後ろの席でのんびり過ごす。そして夜はドライバーにはホテルに泊まってもらい、朝になったらまた車まで来てもらい。

これだけ贅沢な車なのですから、ここまでしてもいいのではないでしょうか。

KABEインペリアル▲乗用車感覚で運転できるインパネ

全長9mオーバー、全幅が2.3mを超える車ですから、旅先では止める場所に困るかもしれません。

でもこのモデルに乗ると軽キャンパーでは味わえない世界が待っているのも事実。豪華客船での世界一周旅行に憧れるように、こういう車で一度は旅してみたいですね

高倉 健さんの最後の主演作品となった『あなたへ』。この作品で健さんは亡くなった妻の故郷までキャンピング仕様の日産 エルグランドで旅をします。その姿に僕は憧れました。

KABEインペリアル▲こんなに贅沢な車なのだから、ドライバーを雇って旅したいですね

キャンピングカーは現代の幌馬車。僕は常々こう考えています。

若い人だけでなく僕くらいの年齢の人も、もう一度自分を奮い立たせて旅を楽しんでほしいですね。

KABE トラベルマスターインペリアル i910 QB

メルセデス・ベンツの商用バンである3代目スプリンターをベースに製作されたキャンピングカー。KABEはスウェーデンのビルダーで、フィアット デュカトベースのキャンピングカーやキャンピングトレーラーも製造している。今回取材したトラベルマスターインペリアル i910 QBは、全長9320×全幅2329×全高3065mmを誇るトラベルマスターインペリアルの最高峰モデルで、ダブルベッドとバンクベッド、最大6人でくつろげる広いダイネットとギャレー、シャワールームとトイレ、屋外用シャワーなどを備える。搭載エンジンは2.2L直4ディーゼルターボ。

文/高橋満(BRIDGE MAN) 写真/柳田由人
テリー伊藤

演出家

テリー伊藤

1949年、東京・築地生まれ。早稲田実業高等部を経て日本大学経済学部を卒業。現在、慶應義塾大学大学院の政策・メディア研究科に在籍。「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」「ねるとん紅鯨団」「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。現在は演出業のほか、プロデューサー、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。最新刊「出禁の男 テリー伊藤伝」(イーストプレス)が発売中。また、TOKYO MXでテリーさんと土屋圭市さんが車のあれこれを語る新番組「テリー土屋のくるまの話」(毎週月曜26:35~)が放送中。YouTube公式チャンネル『テリー伊藤のお笑いバックドロップ』も配信中。