【フェルディナント・ヤマグチ×編集長 時事放談】アウトドアシーンの盛り上がりについて(中編)
2021/09/24
みなさまごきげんよう。 フェルディナント・ヤマグチでございます。
これまで本企画は西村編集長とリモートで対談を行ってきましたが、今回はPCの中から飛び出し、東京にある『A PIT AUTOBACS SHINONOME』にやってきました。やっぱり直接会って話さないとね。どうもネット会議は好きじゃないんですよ。
A PIT AUTOBACS SHINONOMEは、オートバックスが得意とするカー用品だけでなく、アウトドアグッズやアパレル、国内外の本など、クルマを軸としたカルチャーを発信しているそうです。こんなお店があるんですね。ちっとも知りませんでした。
数年前からキャンプは大ブームで、コロナ禍以降は密を避けて遊びましょう、と多くの人がキャンプ場に訪れ、逆にそっちの方が密じゃないの? という何ともビミョーな状態になっています。
コロナ禍でアウトドアブームに拍車がかかる中、どんな人がどのようなグッズを手にしているのか。現場の生の声を伺いましょう。
人気は無骨なアウトドアギアをしまえるオシャレなボックス
前編ではアウトドア人口の増加について、フェルさん世代と私世代のアウトドアの楽しみ方の違いなどを話していただきました。ここからは『A PIT AUTOBACS SHINONOME』の方々にも参加していただき、最新アウトドア事情をいろいろ伺っていこうと思います。
はじめまして。フェルディナント・ヤマグチと申します。今回はよろしくお願いいたします。
カーセンサーの西村です。よろしくお願いいたします。さっそくですが、まずは『A PIT AUTOBACS SHINONOME』がどのようなコンセプトのショップかを伺ってよろしいでしょうか。
オートバックスは、カー用品を中心とした“クルマとつながる”商品を扱うショップです。『A PIT AUTOBACS SHINONOME』は、カー用品やクルマのメンテナンスだけでなく、クルマで出かける際の情報収集やレジャーも含めて広くクルマを使って生活を楽しむためのショップとして、2018年11月にオープンしました。店名にある“PIT”はいわゆるピットインのPITで、その前に“A”という一人称をつけたのは、クルマだけでなく、運転される方、助手席や後部座席に座る方など様々な方のライフスタイルに役立つピットになりたいという思いを込めています。
今回のテーマである“アウトドア”で考えると、アウトドアグッズを専門に扱うショップはたくさんあるし、ネット通販もいっぱいあります。その中で、『A PIT AUTOBACS SHINONOME』ではどのようなアウトドアグッズが売れ筋になりますか?
やっぱり同じアウトドアグッズでもクルマに関わるものなのかな。
こちらに来られるお客さまは何年もアウトドアを楽しまれているベテランの方よりも、これからキャンプなどを始めてみたいというエントリーユーザーの方が多くなります。なので、例えばアウトドア用のチェアやテーブル、あとはクルマでアウトドアを楽しむために荷物を運ぶためのアイテムが人気です。
荷物を運ぶアイテムとはどのようなものですか?
アウトドアグッズを収納してキレイに荷室に積むことができるボックスなどですね。
私もアルミのボックスを欲しいと思いました。あれはカッコいい!
ありがとうございます。当社ではGORDON MILLER(ゴードン ミラー)というプライベートブランドを展開しています。GORDON MILLERのアウトドアグッズも人気がありますよ。
僕がいつもお願いしている美容師さんがGORDON MILLERのつなぎを着ていて「これ、カッコいいでしょう」と言っていました。彼はオートバックスのブランドであることを知らずに着ていました。
アパレルなどをご購入いただく方はそういうケースも多いと思います。もうひとつ、オートバックスではJACK & MARIE(ジャック アンド マリー)というアパレルブランドも展開しています。
JACK & MARIEの服、知ってます! ワンピースがすごくかわいいですよね。女性誌でもよく目にします。私もオンラインショップを利用したことがあって、商品が届いたら中にカーグッズのチラシが入っていたので「なんで?」と思ったんです。
ご利用ありがとうございます。多分GORDON MILLERのチラシが同封されていたのだと思います。
そうでした。服を買ったのになんでだろうと思ってたけれど、ふに落ちました。
そもそもオートバックスがJACK & MARIEやGORDON MILLERを立ち上げたのはいつ頃からですか?
東日本大震災後です。震災の後、キャンプグッズが防災にも役立つと注目されるようになり、2013年ごろからアウトドアにも火がついてきました。2017年4月にJACK & MARIEが立ち上がり、その後、「心おどるガレージライフ」をテーマにしたGORDON MILLERがスタートしました。
アウトドアだけでなく自宅でも使えるグッズが人気
アウトドアブームはもう10年くらい続いています。その中で、昨年のパンデミックという世の中を激変させる大きな出来事がありました。生活様式まで変わった中で、アウトドアの商品の売れ筋なども変わった部分はありますか?
最初に私の方で予想をしていいですか? 昨年4月上旬から緊急事態宣言が発令されたことで売り上げが激減。でも、緊急事態が明けると徐々に戻ってきて、今はコロナ前より好調になっている。いかがでしょう?
実は、売り上げが大幅に落ちるということはありませんでした。
ありゃ、ハズレか……。
もちろん、昨年の4月と5月は営業時間を短縮する限定営業になりましたので売り上げは落ちました。でも、それ以降は持ち直しています。コロナ禍でも、みなさんクルマは使います。そうなるとメンテナンスも必要ですし、車検も受けなければなりませんから。
ご質問のあった“アウトドア”では、密を避けるという観点からみなさんがお出かけするときも人と触れ合わない場所を選ぶようになりました。パーソナルスペースを確保できる広大で区画の区切られたキャンプ場は、とても便利な場所だったのだと思います。宿泊を伴わないデイキャンプのニーズも高まりましたし、コロナ以降はベランピングも盛り上がりました。
スミマセン……。デイキャンプって何ですか?
日帰りでキャンプを楽しむことですよ。フェルさん、本当にアウトドアに興味がないんですね……。
コロナ前はグランピングがブームでした。そこから現在はより自然を楽しみたい人がデイキャンプや普通のキャンプに移っているように感じます。ベランピングは外出を避けたいけれどアウトドアの雰囲気を楽しみたい人が日常生活に取り入れています。
ベランピングのムックがコンビニでも売られたりしていましたね。
A PIT AUTOBACS SHINONOMEでは普段使いもできて、もちろんアウトドアでも便利に使える小物を多く扱っており、これらはとてもよく売れています。もちろん、その中にはGORDON MILLERの製品も含まれます。パンデミックが起こり世の中は激変しましたが、弊社で扱う製品には新しい日常の中で生まれたニーズにマッチしているものが多いことに私たちも驚いています。
それはどのような製品ですか?
例えば、先ほどもお話ししたスタッキング(積み重ね)可能なボックスですね。パズルゲームのように荷室にポンポンと重ねられるので、荷物をコンパクトにまとめてさっと出かけたい人からのニーズが高い製品です。GORDON MILLERのスタッキングトランクカーゴはよく売れていますし、問い合わせも多いですよ。クルマから降ろした後、そのまま部屋に置いても違和感がないのが人気の秘密だと思います。部屋に置いておけばイス代わりに座ることもできます。
キャンプ道具を家の家具として使っちゃうのですか?
デザインがおしゃれですもんね。アウトドア感のある部屋にマッチしそう。部屋の中でアウトドアグッズをかわいく使っていたらSNSでも注目されますよ。
コロナ以降、僕らは基本的にリモートワークじゃないですか。僕が仕事で使っている机とイスもアウトドア用のやつです。
キャンプに行くときはそれを持っていくの?
はい。持っていきます。もっとも今は子供が生まれたばかりなのでキャンプには行けませんが。
話を伺っていると、アウトドアはもうブームという感じではないですね。完全にムーブメントになっている。
道具選びでも特に当店をご利用いただくお客さまには、アウトドア専用品ではなく家の中やクルマの中でも使えるものが人気です。
逆にガチガチのアウトドアギアは受けないのですか?
そんなことはないと思いますよ。ただ、そういう道具を好まれる方は専門店に行かれています。エントリーユーザーが専門店に行こうとすると、「今日はアウトドアグッズを買うぞ!」と気合いを入れなくてはなりません。A PIT AUTOBACS SHINONOMEにはカー用品やアウトドア用品だけでなく、TSUTAYAさんやスターバックスさん、そして世界のあそび道具を扱うボーネルンドさんもあるので、「ついでに見てみよう」ができることがメリットだと考えています。
なるほど。
あとは高額商品なので数がたくさん出るわけではありませんが、ルーフトップテントの注目度も高まっていると感じています。
オーバーランドスタイルですね。
それはどういうもの?
オーストラリアなど大陸で定着しているカルチャーで、SUVにルーフトップテントを載せてキャンプをしながら長期の旅を楽しむスタイルです。
はいはい。あれはカッコいいですよね。いろいろお話を伺って、アウトドアを楽しむ人たちがどのように道具を選んでいるかがよくわかりました。次回は彼らが乗っているクルマについてお話を聞かせてください。
(お2人は取材も忘れてとても楽しんでいるご様子。まだまだアウトドアトークは続きます。後編もお楽しみに!)
コラムニスト
フェルディナント・ヤマグチ
カタギのリーマン稼業の傍ら、コラムニストとしてしめやかに執筆活動中。「日経ビジネス電子版」、「ベストカー」など連載多数。著書多数。車歴の9割がドイツ車。