【フェルディナント・ヤマグチ×編集長 時事放談】アウトドアシーンの盛り上がりについて(後編)
カテゴリー: トレンド
タグ: トヨタ / 日産 / キャンピングカー / レジャー / キャンプ / NV200バネット / ハイエース / 時事放談 / フェルディナント・ヤマグチ / 編集部 西村泰宏
2021/10/01
みなさまごきげんよう。 フェルディナント・ヤマグチでございます。
最新アウトドア事情、そして多くの人が選ぶアウトドアグッズについて話をしてきましたが、カーセンサーとしては、「アウトドアを楽しむ人が選ぶクルマ」についても聞かなければなりません。何といっても自動車媒体ですからね、ウチは。
一般的にアウトドア向きのクルマといえばSUVやミニバンなどが代表的。でも今どきの若者は私の想像とは全く違うアウトドアライフを楽しんでいることを目の当たりにしたので、クルマも想像の上を行く選び方をしているかもしれません。
前回に引き続き、東京にある『A PIT AUTOBACS SHINONOME』で、お客さんがどのようなクルマに乗っているか伺っていきましょう。
アウトドアのために走る楽しさを諦める必要はない
前編では世代によるアウトドアの楽しみ方の違い、中編ではアウトドアを楽しむ人たちからどんな道具が人気なのかを話してきました。最後はクルマのことをお話できたらと思います。
私もそれをぜひ伺ってみたかったです。
カーセンサーでは、特集で「バンライフや車中泊が盛り上がっているけれど、クルマが好きなんだったら走る楽しさを捨てたくないでしょう?」というメッセージを発信したりもしています。
うんうん。好きならポルシェに乗れやと。
走るのが好きなら箱型じゃなくて好きなクルマに乗って、多少空力は悪くなるけれどルーフの上にテントを載せれば泊まれるよって。
その感覚、すごくよくわかります。私も同じ思いで今のクルマを買いましたから。
普段は好きな走りを楽しむ。そして荷物をたくさん積んで出かけるときは方法を考えればいい。まさに、僕らが伝えたいメッセージを実践していただいてありがとうございます(笑)。
これはみなさんの感覚で構わないのですが、アウトドアグッズを買いに来るお客さんはどんなクルマで来ている印象ですか?
やっぱりSUVやミニバンユーザーが圧倒的に多いイメージだな。
もちろん、今はSUVやクロスオーバーモデルが流行していますので、SUVのお客さまは多いです。でも、その中にはいわゆるコンパクトSUVと呼ばれる、積載力が決して高いわけではないタイプにお乗りの方もたくさんいらっしゃいます。
確かにコンパクトSUVは構造的に荷物をたくさん積むのは難しいですからね。
でも、そういう方は屋根の上にルーフバスケットを載せたりして楽しんでいます。GORDON MILLERでもルーフコンテナボックスを作っていますが、そういうものって載せてあるだけでも絵になりますしね。
ルーフバスケットを載せてちょっと昔っぽくカスタムするのも流行っていますね。クロスオーバー系に乗られる方は何より見た目を重視しているのは僕らが取材をする中でも強く感じます。
機能よりも見た目が大事ということですか?
例えば、リフトアップして最低地上高を高くするのも、その方がオフロードの走破性が高くなるからではなくカッコいいから。そういうことですね。タイヤも悪路には行かないけれどオールテレーンを履いたり。
読者の方を取材していると“チープアップ”という言葉も耳にします。
チープアップ? それはどういう……?
別の言葉に置き換えるならドレスダウンです。わざと昔っぽくチープにカスタムして、使い込んだ道具感を楽しむスタイルです。ワークウエアやミリタリーを古着で着るとカッコいいよね。そのノリに近いですね。
な……マジすか? SUVかワゴンじゃないの?
コンパクトカーにお乗りの方も普通に楽しまれていますしね。もちろん、クロスオーバーやミニバンにお乗りの方が多いのは間違いないですが。最初の質問にご回答すると、「SUVやクロスオーバー、ミニバンのニーズは高いが、その他のクルマでアウトドアを楽しまれている方も大勢います」となります。実際、フィットや軽自動車でアウトドアグッズを買いに来られる方もいますし、それこそセダンのお客さまもいます。
そしてルーフバスケットなどを買ってそこに荷物を積んでキャンプに行くわけですね。おもしろい。お話を聞いて感じたのは“アウトドアを楽しむならかくあるべし!”というのがなくなってきているということです。
それに伴い、エントリーユーザーの裾野が広がっていることも実感しています。
なるほど。
そして私が感じているのはその裾野の広がりに、GORDON MILLERも一翼を担うことができているということです。
どんなときにそれを感じますか?
すべてではないですが、例えばシートカバーや車内でいろいろなギアを吊るすことができるフック、カーゴボックスなどはGORDON MILLERが誕生する前からある製品です。でも、デザインや色がオシャレになったことでそれを使って外に出たいと思う人が増え、実際すごく楽しそうに使ってくださっています。GORDON MILLERは新しいことを提案できているのかなと感じています。
アウトドアのために走る楽しさを諦める必要はない
ところで、GORDON MILLERはオートサロンやキャンピングカーショーなどでコンプリートカーの展示も行っていますね。そちらの調子はいかがですか?
おかげさまで大変好調です。
GORDON MILLERのキャンピングカーも今回紹介していただいたアウトドアグッズと同じコンセプトですか?
車両のコンセプトでいえば、先ほども話題に上がった“チープアップ”に近いかもしれません。
普段使いもしやすいですよね。
いわゆるキャンピングカーは車内に家庭用のエアコンが付いて、水道やキッチンが付いて、価格は800万円くらいするものが中心です。でも、多くの方が求めているクルマは、普段使いもできて、オシャレなデザインで、車中泊もできたらいいなというもの。こういうニーズが高いんです。
装備が増えて大型になると、普段使いは厳しくなりますね。
とくに都市部で生活していると、大型のキャンピングカーを置く駐車場を確保することも至難の業です。
そのとおりです。そんな中でGORDON MILLERは、無駄を省くことで一般の方でも選びやすくしたモデルを開発しています。キャンピングカーとして見たときには本当に必要な機能だけを搭載した、チープアップしたモデルだと考えています。
ベース車両は何ですか?
日産のNV200バネットと、トヨタ ハイエースです。
200? 350キャラバンではなくて?
5ナンバーサイズのNV200は今、車中泊仕様のベース車としてすごく人気なんですよ。あまりにも人気があるから、日産自身が車中泊仕様を発売したくらいです。
売れているならうちが上流から抑えてしまおう、ということか。
そのクルマにオリジナルのカラーリングを施してドレスアップして販売しています。ちょうど今実車もあるのでご覧になりますか?
ぜひ見せてください!
おー、ミリタリー感があってカッコいいじゃないですか。顔がかなりかわいいですね。
フロントフェイスにはブラック塗装したグリルの中にGORDON MILLERのロゴを付けています。
インテリアはウッド仕様になっていますね。
サイドと天井には天然の木を使用しています。床面は濡れたものも積めるように塩ビシートを使いました。素材を厳選して手間もかけて製造しているのでノーマル車と比べると価格は高くなりますが、これだけのことを購入後に自分でやろうとすると相当な予算が必要になるはずです。その意味ではかなりお買い得だと思いますよ。
室内はかなりコンパクトに見えますが、寝ることはできますか?
今はテーブルを組んでいますが、ベッドモードにすると奥行きが184cmあるので、フェルさんならゆったり寝られるはずです。
こうやって実車を見るといろいろ想像が膨らみますね。今はノーマルのシートだけれど、ここに店舗にあったGORDON MILLERのシートカバーを付けたくなるな。
せっかくだからハイエースも見せてもらいましょう。
顔を丸目にするの、流行っていますね。
一般的にインテリアを板張りっぽくする場合はシートを張るケースが多いのですが、このハイエースもNV200同様に天然木を多用しています。
その分フロアは少し高くなっているのかな。
フェルさんのように大きなものを積んで出かけることを考えている人は、実際に積めるかよく確認する必要がありそうですね。
こうやって実車を見ると、クルマやこのシーンのことをよくわかっている人が作っていることが伝わってきます。例えば、バックドアのカーテン。よくわかっていない人が手がけるとバックドアを上げたときにビローンと垂れ下がったりするんですよ。
ありがとうございます。それもあって、お値段は少し高くなりますが多くの方に選んでいただいています。
今オーダーを入れるとどのくらいで手元に来るのですか?
半年くらいお待ちいただく形になります。
半年か。でも欲しい人なら待つ価値は十分ありますね。今回はいろいろ教えていただきありがとうございました。
(アウトドア編は今回で最後です。A PIT AUTOBACS SHINONOMEさん、大変お世話になりました。次回の連載もお楽しみに!)
コラムニスト
フェルディナント・ヤマグチ
カタギのリーマン稼業の傍ら、コラムニストとしてしめやかに執筆活動中。「日経ビジネス電子版」、「ベストカー」など連載多数。著書多数。車歴の9割がドイツ車。