PCを扱う男性▲自動車・カーライフに関する調査研究機関「リクルート自動車総研」の膨大な統計データを基に、ユーザーの購買行動や世の傾向を勝手に予想したり解説したりするコラム

退避場所として使える車に高い興味・関心

ひとつの岩が川に落ちたとしよう。その抵抗で水の流れが変化し、やがて川の形や地形までもが変わることがある。

諸行無常と言えばそれまでだが、落下する岩のインパクト次第では、時に災禍を引き起こす。世界中が新型コロナウイルス禍にある今、常識や慣習、ささやかなルーティンといった“当たり前の日常”は、まるで急流に浸食される川岸のように、急速に揺さぶられている。人類の英知は、必ずやこの災禍を乗り越えるだろう。

だが、その後の常識は従来とは違う河道を描いているに違いない。その変化は、物を選択する際の意識にも表れてくるはずだ。もちろん車選びにも。

例えば、自家用車なら不特定多数の人との接触を避けられることや、もうひとつの部屋になり得ることなどに、もっと意識が向くようになる可能性が考えられる。
 

リクルート自動車総研グラフ

グラフ①にあるとおり、調査を開始した2015年以降、「天候急変時などの退避場所や休憩場所として使える車」に対する興味・関心が高まっている。

東日本大震災や熊本地震といった大災害との因果関係は定かではないが、困難な状況下でも最低限のプライバシーやQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を確保したいという思いが、この結果の背景にあるとも考えられる。

また、調査時点では「オフィスとして使える車」への興味・関心は低い(グラフ②)ものの、コロナウイルス禍の非常時対応を経た後、企業によるテレワーク(リモートワーク)への取り組みが進めば、単に仕事ができるだけでなく、集中できる車内環境かどうかも、車選びのひとつの観点に加わるかもしれない。

というのも、仕事に集中できる人との距離感や空間という意味でのソーシャルディスタンスを確保するために、テレワークで自宅と車内を使い分ける人が出てくる可能性もありうるからだ。

そこに需要が見込めれば、自動車メーカーも何らかの対応をしてくるだろう。すでに営業車など、車内で仕事がしやすい環境を整えたモデルは存在している。

今後テレワークがもっと当たり前な時代になれば、もしかしたら自家用車を会社や自宅に次ぐオフィスと見立てる人をターゲットにした“Office-worCar(オフィスワーカー)”のようなモデルが人気になるかもしれない。
 

中古車で買える! Office-worCarに向いていそうなモデル3選

1:トヨタ ノア(現行型)

トヨタ ノア ▲箱型ミニバンの広い室内空間はもちろん、車内2ヵ所にコンセントが設置されており、パソコンを使った仕事もOK。ハイブリッド車なら非常時の発電機となるのも心強い
 

2:日産 リーフ(現行型)

日産 リーフ ▲電源面の安心感ではOffice-worCar随一といえるのが、大容量バッテリーを搭載した電気自動車のリーフ。バッテリーは蓄電池としても使え災害対策になるのも◎
 

3:三菱 アウトランダーPHEV(現行型)

三菱 アウトランダーPHEV ▲SUVらしい走破性と耐久性に加え、プラグインハイブリッドゆえに電源面も安心。後席を倒せばフラットな床面の空間が広がり、疲れたら横になって休憩できる点も魅力だ
 
文/編集部、写真/photoAC、トヨタ、日産、三菱