ホンダ N-BOX▲自動車・カーライフに関する調査研究機関「リクルート自動車総研」の膨大な統計データを基に、ユーザーの購買行動や世の傾向を勝手に予想したり解説したりするコラム。今回はニッチなグレードについて

ニッチなグレードの相場が大きく下落する可能性も

まずは、下のグラフ①をご覧いただきたい。「購入または検討した中古車の『グレード』を想定し始めた段階」という問いに対する回答の、2015年からの推移を示したものだ。
 

リクルート自動車総研グラフ ※2015年~2018年にリクルート自動車総研が行った『中古車購入実態調査』より

早い段階から想定した人の割合は横ばいだが、購入する車を「具体的に比較検討した段階」で想定した人の割合は増加している。同時に、「いつ頃かわからない/グレードを想定していない」人の減少傾向が2018年で一気に加速している。

車選びでグレードを意識する人の割合が増える(=想定しない人の割合が減る)兆候は以前からあった。現に2018年の年末には「もう一歩踏み込んでお得&納得の中古車を選ぶ“グレードコンシャス派”が増加の兆し!」と銘打ち、このトレンドに注目した記事をアップしている。


だが、2018年の調査結果を見ると、若き日の松坂投手の名言“自信が確信に変わる”ではないが、グレードコンシャス派の増加傾向は明らかに強化されている。

そして、この傾向にドライブをかける原因として考えられるのが、下のグラフ②が示すとおり、グレードコンシャスな女性の存在だ。
 

リクルート自動車総研グラフ ※2015年~2018年にリクルート自動車総研が行った『中古車購入実態調査』より

車を買う前からグレードを想定していたと回答した女性の割合は約9%。同様に回答した男性の半数程度に留まっている。

だが、段階を経るごとにグレードに対する意識が高まり、購入する車を具体的に比較検討した段階では約30%と、男性の約35%に迫る勢いで割合が伸びている。

中古車を購入する人のグレード意識が、今後もさらに高まって行くとしよう。それが中古車市場にどんな影響を与え、中古車選びがどう変わるのか考えてみた。

そして、究極的に安全な車が市場を席巻するようになると、次はもしかしたら車の素材、例えばプラスチックの代わりに木材を使用した割合に応じて税金が優遇されるようになるかもしれない。

あくまで仮説だが、ひとつはグレード間での中古車相場の格差拡大だ。というのも、ユーザーがグレードによる装備や性能、デザインの違いを理解すればするほど、最大公約数的に人気要素を備えた“売れ筋中間グレード”にニーズが集中していくと考えられるからだ。

その反作用として、松竹梅的な大ぶりなグレード体系の隙間を埋めるニッチグレードや燃費性能の劣るパワートレインを搭載するグレードなどの相場は、今まで以上に下がる可能性もあるだろう。

専門用語と数字と記号で埋め尽くされた、「主要装備表」や「主要諸元表」を解読するのは確かに厄介だ。

だが、ここ最近女性にもグレードコンシャスな人が増えているのは、その厄介さの向こうに車選びにおける重要かつ有益な情報、つまりグレードの概念が浸透しつつあることの表れとも取れる。

お得、納得、そして満足な中古車を手に入れるためにグレードを意識する傾向は、ますます浸透していくかもしれない。
 

予算100万円! グレード意識高揚の反作用が期待できるモデル3選

1:ホンダ N-BOX カスタム Gターボパッケージ(初代・前期)

ホンダ N-BOX ▲グレードを細分化し“売れ筋中間グレード”の幅を広げた初代N-BOX。最上級グレードのカスタムGターボパッケージはそのレンジから外れるためか相場の下落幅が大きい
 

2:日産 ノート 1.2 X DIG-S(現行型・後期)

日産 ノート ▲ハイブリッド仕様のe-POWERが2016年11月に追加されるや大ヒット。その影響でガソリン車の中古車相場が急落した。人気グレードの一極化による相場格差が拡大した好例
 

3:トヨタ ヴィッツ 1.5RS(現行型・前期)

トヨタ ヴィッツ ▲グレードのバリエーションが豊富なヴィッツにあって、ひときわニッチな香りを放っているのがスポーツグレードにあたる1.5RS。新車時価格を考えると、中古車はお得感たっぷり
 
文/編集部、写真/尾形和美、ホンダ、日産、トヨタ