スチャダラパーBoseが中古車販売店に聞く。「NAロードスターの魅力ってなに?」
2015/11/12
父親の影響でNAロードスターが好きになった20代の子が多かった
日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパーのMC、Bose。中古車情報誌『カーセンサー』にて彼がお届けする人気連載「Bosensor」。カーセンサー本誌で収録しきれなかったDEEPでUNDERGROUNDな話を編集部員ペリーと一緒にお届けっ!!
編集部ペリー(以下、ペリー):今回もシモジマガレージの下島社長とNAロードスターの魅力について話していきましょう。前回は試乗から帰ってきたら「社長はカレーが好き」なんていうワケ分からないコメントするし……。ロードスターは2人乗りだから試乗中の会話、僕は聞けてないんスから。
下島社長:少し訂正させてください。私が好きなのはカレー屋さんのハヤシライスです(笑)。
ペリー:社長、どっちでもいいですって! カレーやハヤシではなく、ロードスターの話ですっ!
Bose:社長はこちらのお店をNAロードスターの専門店にはしなかったんですよね。それはなぜですか?
下島社長:ロードスター以外にもおもしろい車はありますからね。私はバイク乗りのように「風を感じる」車が好き。一方でスポーツカーも好きなんですよ。先日も面白そうだなと思って、Z33のフェアレディZを仕入れてみたり。
Bose:ずいぶん違う路線だな。Z33もハマりました?
下島社長:トルク感があってすごい車だなとは思いましたが、私が思う“走らせて楽しい”とはちょっと違いますね。もういいかなと(笑)。私は基本的に、お客さんが車を楽しむための手助けができればと思っているんです。楽しい車はお客さんによってそれぞれ。だからひとつの車種に絞る気はなかったんです。
Bose:なるほどね。そういえば前回、NAロードスターに乗りたい若い子がたくさん来ていたって話をしていたでしょう。ただ車を売るんじゃなくていろいろ教えてくれたり面倒見てくれる社長みたいな人と早くに出会えた子は幸せだよね。でも若い子はなぜNAロードスターにハマるんですか?
下島社長:父親に感化された子が多かったです。あとは“オープンカー”というくくりで見たときにNAは相場が安いから若い子でも手が出しやすいというのもありますね。
Bose:今回試乗させてもらって驚いたのが、分かってはいたけれどロードスターってこんなに小さいんだってこと。全長ってどのくらいかな?
ペリー:4mに届かないくらいですよ(NAは3970~3955mm)。
下島社長:これがデビューしたときにロータス エランみたいという話もあったと思うけれど、まさにそっちの方向を目指したんだろうね。
ペリー:自分の好きな車だけを扱いたいという下島社長。社長が思う楽しい車ってどんなのですか?
下島社長:走って楽しい車です。私がもともと好きなのは、昔のアメリカ車なんですよ。かつてはトランザムに乗ったりしていました。
Bose:そうなんだ。そっちが好きだという雰囲気はあるけれど、店頭にあるラインナップとは全然違いますね。
下島社長:ですよね。アメリカ車が楽しいっていう思いは私の中で平成10年(1998年)くらいで止まっちゃいました。らしさがなくなっちゃったんですよね。誰が乗っても速く走れるようになってしまって。乗りこなすという雰囲気ではなくなった。
Bose:それでロードスターに?
下島社長:アメリカ車への思いが冷めた後は、10系と20系のセルシオを売っていたんです。これも私が好きだから。そんなときにたまたま赤いNAロードスターに出会って。幌がボロボロになったのをオークションで仕入れてね。「なんか面白そうだぞ」っていう勘が働いて、乗ったらヤミツキです(笑)。
Bose:セルシオからロードスター。幅が広いなあ。
下島社長:NAはトランクにバッテリーがあってゴルフバッグが積めないので、バッテリー搭載位置を動かして積めるようにしたりとか。それが14年くらい前です。
ペリー:ちなみに中古車の販売店を始めたのはいつごろなんですか?
下島社長:16年前です。その前は整備工場で働いていました。ところがそこが倒産しちゃってね。それで独立。自宅の1階を改装してオープンしたんですよ。
Bose:独立当初から好きな車しかやらないスタンスですか? それだと最初は食べるのも大変そうだけれど。
下島社長:基本的にはそのスタンスですね。私たちはサービス業じゃないですか。だったらお客さんが求めることをやることも大事ですが、自分が本気で好きなことに取り組んだ方が気持ちがお客さんに伝わるだろうと。そうすればお金は後からついてくる。そう信じて必死にやっていましたね。
Bose:その気持ち、分かるなあ。僕らも同じだけれど、もし好きじゃないことを我慢してやったとしても、それが絶対にお客さんにも伝わっちゃうからね。
故障=即交換ではなく、経験と技術で問題を解決する
ペリー:ちなみに新しい車で「これは扱ってもいいかな」っていうのってあります?
下島社長: う~ん…やっぱり私は平成14年(2002年)くらいまでのモデルになっちゃうんですよね。それ以降は排ガスの関係で制御がいろいろ変わってくるんですよ。制御だらけになって整備していても部品交換ばかりになっちゃうから。
Bose:整備士出身の社長らしい考えだな。NAとかだと整備士の腕を発揮できそう。
下島社長:やっぱり「俺たちは機械をいじってナンボ」っていう気持ちはあります。これは長年お世話になったお客さんからも言われました。「テスターを繋いですべてが分かるのではなく、自分の技術と経験で不具合を見つけて直せる整備士を目指せ」と。
Bose:僕も主流とは違う偏った音楽をやっているから、社長のそういう気持ち、すごくわかるんだよね。自分が面白がる気持ちを大切にしたい。
ペリー:リアル世代だけじゃなく若い子からも支持されるNAロードスター。乗った人はどんな感想を持つものですか?
下島社長:そこはもちろん千差万別ですが、共通しているのは「遅いんだけれどね」って(笑)。
Bose:アハハ。僕が乗って思ったことと一緒だ。でもね、思うんだけど逆に最近の車がみんな速すぎるんだよ。だから一般道や高速道路の乗用域で全然楽しめないの。道は昔から変わってないのに車だけが進化しちゃっているからね。NAロードスターなんか、住宅街を30km/hくらいで走っているだけなのにワクワクしたからなあ。
下島社長:だから私はNAを買ってくれた方にいつも言うんですよ。「納車後はぜひ鎌倉に行ってみてください」って。
Bose:そしておいしいカレー屋さんを紹介して(笑)。
下島社長:私のオススメはハヤシライスです(笑)。
Bose:僕はカレー推しだから、好きな方を!
ペリー:どっちでもいいですよ! 今回はロードスターです!!
Bose:いやいや、鎌倉ドライブは住んでいる僕もオススメしちゃう。きっと幌も開けたくなるはず。今回ロードスターに試乗させてもらって感じたのは、車を走らせることって単なる移動ではなく“遊び”になるんだってこと。こういう気持ちになれたら生活の充実度は格段に上がるよ。
下島社長:そういえばこんなお客さんが来たことありますよ。Lサイズのミニバンでお店に来てNAのVスペシャルを1時間以上見ているんです。一度帰ったら今度は奥さんを連れてきて私に耳打ちするんです。「早くカミさんを口説いてくれ」って(笑)。「えっ、それも私の仕事!?」って。
Bose:うわっはは。やっぱ楽しい車を扱う店には同じようなお客さんが来るんだなあ。そのご主人の気持ち、痛いほどわかるよ。
下島社長:お店で「こんな荷物の入らない車、どうするのよ!」「長男は中学卒業したんだし、俺のバイクも売るからいいだろう!」って。見ていて笑いが止まりませんでした。私は納車でいろいろなお宅にお邪魔しますが、奥さんに会うことってあまりないんですよ。ご主人が「妻には内緒なんで…」というケースが多いので(笑)。
Bose:これは近いうちにこういう車を愛する人たちのために「奥さんの口説き方」を特集しないとダメだな。
ペリー:特集の中ではBoseさんの実体験もたくさん聞けそうですね(笑)。
Bose:まあね。“車と奥さん”問題に関しては、僕も現在進行形でいろいろ経験しているから。