エンジン音やエキゾーストノートも進化。自動車メーカーの知られざる「音」へのこだわり
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2015/09/14
マセラティのエンジン音はバイオリンと同じ!?
エンジン音やエキゾーストノートなど車が奏でる官能的な響きは、運転の楽しさをより増幅してくれる。F1は言うに及ばず、高級車でも音にこだわるファンは多く存在する。代表的なのはフェラーリで、12気筒エンジンの独特の高音は「フェラーリサウンド」と形容されている。
また、マセラティジャパンによると、マセラティのエンジン音はバイオリンの名器、ストラディヴァリウスとの共通点もあるのだとか。実際に音を聞いた多くの被験者が共通した印象を持ち、また、周波数分析においても同じようなスペクトルを描いたという。
レクサス LFAがこだわった「音」づくりとは?
日本だって負けてはいない。500台限定で発売されたレクサスのフラッグシップスポーツカー、LFAはまさにフェラーリのように「音」がブランドになることを目標に作り込まれている。
サウンドデザインは楽器メーカーであるヤマハのサウンド開発センター。LFAのエンジン開発に協力したヤマハ発動機と協力しての作業となった。
レクサスが示したのは「ドラマチックサウンド」。その解が――
・ドライバーの繊細な運転操作に、敏感に反応するエンジン音を創出すること
・その良質なエンジン音を、余すことなく効果的にドライバーに伝えること
だったという。
これは、「楽器を演奏する楽しみ」に内在する演奏者と楽器の関係から導いたもの。いかにもヤマハらしい発想だ。
サウンドデザインでは、エンジン本体を「音を生み出す音源」、車体を「音の伝達装置」として位置づけられた。エンジンでは、吸気系に設けられたサージタンクを“音の放射体”として利用し、艶やかで滑らかなエンジン音を実現したという。
車体には、車内に向けて音量や周波数バランスを調整し、サージタンクからの放射音を効果的に室内へ導くための複合的な伝達機構を設置。吸気音のダイレクト感を生かしつつ耳に心地良い十分な音量のエンジン音にするとともに、車と一体になったような空間的な広がりのある音とした。
また、排気音では金属加工メーカー、三五がマフラーを担当。音の聞こえ方は言語により異なるので、まずは日本語独自の音を探すことから始めたという。海外の高級メーカーのスポーツカーの排気音を周波数として分析。そのどれにも当てはまらない音をLFAのエキゾーストノートとして設定した。
マーレ社の「サウンドクリエーター」とは?
最近では、「音」にこだわるのは高級車だけではない。ドイツのマーレ社が開発した「サウンドクリエーター」は、エンジンの吸気音を意識的に室内に引き込み、加速時のエンジンサウンドを強調して響かせる仕組みで各自動車メーカーが採用している。
例えば、現行マツダ ロードスターでは「インダクションサウンドエンハンサー」という名称で、ドライバーのアクセル操作に対し、よりダイレクトに周波数300~400Hzの領域で吸気音を演出している。
ちなみにこの技術は、トヨタ 86やスバル BRZ、レクサス IS&GSにも搭載されているという。
スカイラインの「音」は電子音!?
マーレ社の技術とは違うアプローチで「音」にこだわったのが日産 スカイラインだ。音響メーカー、Boseの技術であるアクティブ・サウンド・マネジメント(ASM)を採用し、マイクが車内の不快なエンジンノイズ音を集め、スピーカーから逆位相の音を出すことでノイズを軽減。電子的に合成した望ましいエンジン音を発してくれる。
同じシステムをキャデラック CTSも搭載。また、スピーカーからエンジン音を出すという考え方はBMW i8も採用している。
静かなだけではなく、エモーショナルさも求められるエンジン音やエキゾーストノート。これからは高級車だけでなく、廉価の車の「音」も進化するかもしれない。そうなると、車選びの要素に「音」が加わるはず。“百聞は一聴に如かず”ではないが、カーセンサーの物件ページに「音を聴く」なんて項目が追加される日が来るかもしれない。