▲車選びで熟考するのはいいけれど、中古車は状態やボディカラーが全て異なる“一期一会”の買い物。そのあたりのバランスも大切にして購入したい ▲車選びで熟考するのはいいけれど、中古車は状態やボディカラーが全て異なる“一期一会”の買い物。そのあたりのバランスも大切にして購入したい

衝動買いNo1はCD。では0%は?

「車を見ればその人がわかる」とはよく言われること。個人的な感覚だが、確かにフランス車とドイツ車を選ぶ人やスポーツカーとミニバンを選ぶ人には、相容れない違いがあるような気がしないこともない。そもそも、車に個性が表れる理由はなんなのか。心理学者の内藤誼人先生によると「衝動買い」がキーワードだという。

「イギリスのサセックス大学で行われた調査によると、衝動買いが最も多かったのは音楽CD。ジャケットを見て直感的に購入する“ジャケ買い”なんて言葉もありますよね。逆に、最も少なかったのは車で、衝動買いをした人は0%でした。熟考するからこそ、そこには個性が現れます」

なるほど、だから車を見ればその人がわかるのか。と思いきや、内藤先生曰く「それは必ずしも正しくありません」とのこと。車から性格やその人の背景を読み解くのは意外に難しく、「類似性」と「相補性」を理解する必要があるのだとか。

「類似性とは自分と似ているものを、相補性は自分にないものを求める心理です。例えば、攻撃的な性格の人がスポーツカーや押し出しの強いデザインの車を選ぶのは類似性。内気な人がスポーツカーを選ぶのは相補性です。他にも、ミニバンに乗っている人は家庭的と思いがちですが、一方で家庭が上手くいっていないからこそ理想の家族を夢見てミニバンを選ぶこともあるでしょう。これも相補性ですね」

▲本当に幸せで類似性からミニバンを選んでいる可能性と、憧れからミニバンを選び相補性の可能性がある ▲本当に幸せで類似性からミニバンを選んでいる可能性と、憧れからミニバンを選び相補性の可能性がある

高級車にこだわる人は子供の頃の環境が……

また、小さい頃に裕福ではなく物欲が満たされなかった場合、無理をしてでも相補性からブランドにこだわって高級車を選ぶ場合も。もちろん、本当にお金持ちで類似性を求めて高級車を買う人も多い。

ちなみに、これらは車以外にも当てはまる。ペットでも強面の人がゴツい犬種を可愛がっていることがあるのは類似性、小型犬を可愛がっているのは相補性にあたる。もっと言えば、恋愛で同じタイプを好きになるのは類似性、自分と違うタイプに魅力を感じるのは相補性なのだとか。

しかし、ゴツい車に乗っているからイカつい人かと思いきや、実は気弱な人が自分にないものを補うために乗っている、なんてこともある訳か。今度ゴツい車に煽られたら、ガツンと言ってやる……のはやっぱり怖いし。なんとも紛らわしい。

「一見、車とパーソナリティが合っていなくても、実はそれがその人の個性。車選びは個性が極端に現れるんです」と内藤先生。これからは、車だけで浅はかに人格判断をするのは辞めておいたほうがよさそうだ。

【取材協力(敬称略)】
内藤誼人(ないとう・よしひと):心理学者、アンギルド代表、立正大学客員教授。心理学を応用した実践的なノウハウに着目した著書多数。近著に『同性にモテる技術』 (中公新書ラクレ)、『人はなぜ、「そっち」を選んでしまうのか』(青春出版社)など

text/コージー林田 photo/pixta