憧れのアノ車をこの手に! オジさんモデラー急増中!?
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2014/07/11
昔に比べたら遙かに精巧なプラモデルを、達人に教えてもらいながら作れる
確かに私は48歳で、20年以上前に森高千里が「私がオバさんになっても」で予言したとおり、お腹が出てきたおじさんであるが、それでも私よりひと回り下とはいえ頭頂部がうっすらとしてきた編集部のAに「中高年」呼ばわりされると、イラッとするのである。
A ぴえいるさん、聞いてます?
……しかし、「オジさん」とは、酸いも甘いも知り尽くし、世の中の理不尽と40年以上戦ってきた生き物でもある。そのため不平不満を顔に出さない術も心得ているのだ。
ぴえいる(以下、ぴ) だから私のような「オジさん」がなぜ今プラモデルにはまっているのか、探れというわけだな
A そうです、中高年のおっさんが何を今さら動きもしない役立たずの車のプラモデルを作るのか、調べてきてください
「役立たず」と「おっさん」がなぜか私の頭の中ではイコールでつながってしまい、抑えたはずの憤怒の炎を思わず口から吹きそうになったが、いやいや私は知的で冷静で、優しい「オジさん」である。その炎を心の中でフッと吹き消し、Aと一緒に神奈川県横浜市にあるトレッサ横浜を訪れることにした。
ここには世界的なプラモデルメーカーであるタミヤが、プラモデルづくりの楽しさを発信する「タミヤプラモデルファクトリー」がある。プラモデルやミニ四駆を買うことができるのはもちろん、アトリエと呼ばれる部屋でプラモデルを製作することができる。
また、プラモデル作りの達人「マスター」がいて、プラモデルを作りたいという人に教えてくれるという日本で唯一の工房だ。
アトリエの利用料金は一般で257円/30分、会員になると154円/30分から。4時間以上は一定料金となり、一般が2057円、会員は1028円だ(マスターに教えてもらう場合は、別途料金が必要)。
ここを訪れていた40歳のHさんに話を伺うことができた。
Hさん 子供の頃にプラモデルは作ったことがありますが、ここに来るまではすっかりご無沙汰していました。しかしあるとき、たまたま大好きなポルシェのレーシングカーのプラモデルを見つけて、つい買ってしまったんです
ぴ 大人になった今ならプラモデルも買い放題ですからね。で、なぜここに?
Hさん とはいえ、どう考えても私が作るには難しいプラモデルでした。ここならマスターの長谷川さんに教わりながら作れると知り、訪れてみたのがきっかけです。今では毎週のように来ていますよ!
ぴ 毎週ですか?
Hさん 駐車場代が無料だから、車で来やすいんですよ。施設内にレストランモールもありますし、家と違って接着剤やスプレーの匂いを気にしなくてもいいしですから。同じ趣味を持つ仲間がたくさんいるので、ワイワイ楽しみながら作ることができるのも良いですよね
ぴ サークルや同好会のノリに近いかもしれないですね。家にようやく自分の部屋を持てたとしても、シンナー系の匂いは家族にもご近所さんにも気を使わないとですけど、ここならスプレー吹き放題ですし
プラモデル作りのプロ、マスターの長谷川さんが来店者についてさらに教えてくれた。
長谷川さん(以下、マスター) 仕事帰りに1時間だけ寄る人もいれば、出張でしばらく東京方面にいるからその間に作りたいと通われた大阪の方もいますね
なんでも集中できる限界は2時間だし、塗装したら乾かすのに時間がかかるため(次の作業に進めないため)、そうやって少しずつ進めるといいのだそう。
マスター ぴえいるさんもそうでしょうけれど、小さい頃ってなかなかキレイに作れなかったでしょ?
ぴ えぇ、接着剤がよくはみ出てました。今ならもう少し上手く出来そうな気がします
マスター 最近ははみ出しにくい接着剤もありますし、プラモデル自体の精度が随分上がってピッタリ合わせられるし、塗料も工具も何もかもよくなっているんですよ
ぴ 昔は金型の合わせ目からはみ出たプラスチックがパーツに付着したりしてましたよね?
マスター バリですか? 今はもうないですよ(笑)。昔は木型から金型を起こして、プラモデルを作ったわけですが、今はCADデータから直接金型を作るので、すごく精巧なプラモデルができるんです
ぴ そうか、もうバリ取りは不要なのか
マスター それどころか、これはトヨタ86ですが、エンジンも組み立てるんですよ
40年前と違って、今はこれだけ再現力が半端ない緻密なプラモデルが作れるのか。しかもここなら誰にも文句を言われずプラモデル作りに没頭できるし、達人に作り方を教えてもらえるし、仲間と共通の趣味の話をしながら手を動かせるし、いやぁ良い時代になった(しみじみ)。
そりゃ私のようなスーパーカー世代はグッとくるよなぁ。この時代にお金と時間に少しだけ余裕のできるオジさんになれた自分を褒めてあげたい気分だ。私も久しぶりに作ってみようかなと、プラモデルの箱を手に取ってみる。
A 何黄昏れてんっすか。取材もう大丈夫ですか? だったら早く帰って原稿をまとめてくださいよ
……Aのヤツ。
A ボクはもうちょっとプラモデル選んだりして行きますから、一人で帰って下さいね。あ、言い忘れてましたけど、これ明日締切ですから。よろしくです~
プラモデルの前に、ヤツのわら人形が作りたくなってきた……。