BMW▲BMWのコンパクトセダンである2シリーズクーペ。そのMモデルであるM2は、もはや公道では試せないほどの高いパフォーマンスを備えている。そんな性能を存分に生かせる公式ワンメイクレースが、日本に初上陸した。その詳細とマシンの解説をしたい

レース仕様車は1800万円以下と買いやすい価格

日本で唯一の、BMWグループジャパンによる公認レース「M2 CS レーシング・シリーズ」が、2022年4月にスポーツランドSUGOで開幕する。

近年、世界的にジェントルマンレースの人気が高まっている。それにつれてFIA GT3規格に準拠したマシンはどんどん高性能・高価格化してきた。いまやGT3マシンの価格相場は5000万円を超え、モデルによっては1億円にも手が届きそうな勢いだ。現在は、その下位クラスとしてGT4規格が設定されたが、それでもベース車両の価格は約3000万円といったところだ。

2014年にニュルブルクリンク24時間レースを取材したとき、2シリーズクーペのM235i/M240iをベースにした「M235i/M240iレーシング」がたくさん走っている姿を見て驚いた。本国では2000万円以下の価格設定で、これを日本でも販売すればいいのに、と感じたものだ。

それがようやく日本で実現することになった。M235i/M240iレーシングの後継となる「M2 CSレーシング」は、BMW M社とBMW Motorsportが共同開発したレースカー。ベース車はMパフォーマンスではなく、生粋のMモデル、M2だ。気になるM2 CSレーシングの国内価格は、ベースバージョンが1499万円、450psバージョンが1799万円と、レースカーとしてはかなりリーズナブルな設定だ。

パワートレインは3L直列6気筒ターボエンジンに、モータースポーツ専用のソフトウエアによって制御される7速DCTを組み合わせる。最高出力は、各レース規定に基づいたレースごとに設定されるBOP(性能調整)に応じて、280~365psの間で調整可能であり、最大トルクは550N・mを発揮する。

また、車両購入後にパーツなどを追加することで、最高出力450psまで引き上げることが可能な設計となっており、最初から450psへチューンナップされたバージョンも販売されている。専用のドライブ・シャフトや、個別の冷却システムを備えた機械式LSDを標準装備。これ以外にもレカロ製バケットシートやロールケージ、安全燃料タンクなどレースに必要な様々なアイテムを備えている。
 

BMW▲日本で行わる予定のM2 CS レーシング・シリーズは、本国から提供されるヨーロッパのレギュレーションを採用している。日本での初戦は、宮城県のスポーツランドSUGOで4月に行われる
BMW▲M2をベースにして開発されたM2 CSレーシング。パワースティックと呼ばれるUSB機器を使用することで、エンジンコントロールのセッティングなどを行える
BMW▲専用に製造されたドライブシャフトやカーボン製ルーフなどを標準装備。メンテナンス性を向上させるエアジャッキも備わっている

すでにドイツでは、2021年よりDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)のサポート・レースとして、BMW M2 CSレーシングによるワンメイク・カップ「BMW M2 Cup」がスタートしており、日本でもそれに準拠したレースが開催されることになった。

2022年シーズンは、MINI CHALLENGE JAPANとの共催で、スポーツランドSUGOを皮切りに、富士スピードウェイ、ツインリンクもてぎ、岡山国際サーキット、鈴鹿サーキットと国内の主要サーキットで開催予定。決勝は2レース制で全10戦となっている。

参戦資格は、JAF認定国内A級ライセンス以上を所有していること。エントリーフィー(1大会2レース、消費税込み)はシーズン価格192万5500円(年間で使用可能なクレデンシャル・パス7枚を含む)、スポット参戦(1大会)が38万5000円(該当ラウンドのみ使用可能なクレデンシャル・パス5枚を含む)と、こちらもリーズナブルな設定だ。

いまや、高性能スポーツカーの本領を公道で発揮することは不可能だ。もし、それを買える予算があるなら、思いっきりアクセルペダルを踏める、本格レースに参戦するという手も悪くないと思う。もしくは、友人や仲間とシェアして、スーパー耐久などに参戦するという楽しみ方もある。

BMW M2 CS レーシングは、ディーラーでも買うことのできるレースカーだ。日本で唯一のBMW Mモータースポーツ・ディーラーである「株式会社モトーレン東都」で販売されている。


BMW▲ロールケージやレカロ製バケットシートが備わるインテリア。エアコンは標準装備となる
BMW▲エンジンカバーがないことを除けば、M2 CSレーシングのエンジンルーム内はM2と変わらない
BMW▲アシートやラゲージなどの内装はすべて撤去されている
BMW▲トランクリッドには、角度調整可能な専用リアスポイラーが追加されている
BMW▲2シリーズは、1シリーズクーペの後継として2013年に登場した。そのMモデルがM2だ。ブレーキやシャシー、エンジンはサーキット走行前提の本格的なスペックを備えており、一部パーツはワンクラス上のM4のものを使用している。中古車市場では車両本体価格460万~500万円ほどで流通しており。よりハイパワーなM2コンペティションは600万~750万円ほどとなっている

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文/藤野太一、写真/BMW AG