フェラーリチャレンジ▲1993年にフェラーリ公認ワンメイクレースとして始まった「フェラーリチャレンジ」。当時はイタリアとヨーロッパでの開催だったが、現在はアジア・パシフィックや北アメリカ、イギリスなど、世界中で開催されている

モータスポーツ部門を2つもつフェラーリ

1950年に始まったF1世界選手権に、これまで継続参戦している唯一のコンストラクター「フェラーリ」。F1に参戦するために市販車を作っている、といわれるほど同社とモータースポーツは密接な関係にある。

そして現在、フェラーリのモータースポーツにおける主な組織は2つある。F1チームを「スクーデリア・フェラーリ」が、それ以外のモータースポーツ活動を「コルセ・クリエンティ」という部門が統括している。

「コルセ・クリエンティ」とは、いわゆるカスタマーレーシングという意味だ。WEC(FIA世界耐久選手権)や国内のSUPER GTなどに参戦するチームへGTカーを販売、サポートなどをしている。2021年シーズンのSUPER GT GT300クラスでも488ベースの「488 GT3」が参戦していた。

また、過去のGTマシンのオーナーを対象に、走行会イベントなどを行う「クラブ・コンペティツィオーニGT」や、FXX、599XX、FXX Kなどのサーキット専用車をオーナーが走行させる「XXプログラム」、歴代のF1マシンを管理、販売し、そのオーナーが自らステアリングを握って走行できるプログラム「F1クリエンティ」といった、エクストリームなサービスを提供しているのもフェラーリならではといえる。
 

フェラーリチャレンジ▲フェラーリ 458 GT3は、GT3規格に準じたセッティングのエンジン、大型リアウイングなどのエアロパーツなどを備えている
フェラーリチャレンジ▲ニュルブルクリンクで行われたXXプログラムの模様。写真の車は、フェラーリのXXシリーズで最も新しく高性能なFXX K EVOだ。計1050psを誇るV12エンジン搭載ハイブリッドシステムや、溝なしのスリックタイヤを装備する

そうした中コルセ・クリエンティが主催する「フェラーリチャレンジ」とは、1993年の348チャレンジから始まった。歴代のV8ミッドシップシリーズをベースとした専用車両の“チャレンジ”で競われるFIA公認のフェラーリ ワンメイクレースで、現在は欧州をはじめ、北米、アジア・パシフィック(APAC)の3地域に加えて、2019年からUKシリーズもスタートしている。

マシンは「348チャレンジ」に始まり、「355チャレンジ」「360チャレンジ」「F430チャレンジ」「458チャレンジ/EVO」「488チャレンジ/EVO」と、進化を続けている。

日本国内では、APACシリーズ内で行われてきたが、コロナ禍にあって数年はレース数も制限を受けている。2022年シリーズは、5月が富士スピードウェイでの開幕。第2戦は6月に鈴鹿サーキットで、第3戦は7月に韓国インターナショナルサーキット、最終戦は8月にマレーシアのセパンで開催予定となっている。

フェラーリチャレンジは、ドライバーの経験とレベルによって、トロフェオ・ピレリAM(優勝経験のあるアマチュア向け)、コッパ・シェル(経験が豊富なセミプロ向け)、コッパ・シェルAM(経験の浅いドライバー向け)の3クラスに分類されている。多くは多忙でスーパーリッチなビジネスマンだけに、マシンの保管、メンテナンス、転戦のためのロジスティックはもちろんのこと、同行する家族のためのVIPラウンジを用意するなど、いわゆるフルサービスが提供されている。

例えば身支度ひとつをとっても、毎戦ドライバーのためにフェラーリのCIに準じた特設ロッカーが用意され、レース後にレーシングスーツやシューズを放り込んでおけば、クリーニングされ次戦のロッカーに整えられているという流れだ。つまり、ドライバーは身ひとつでサーキットへ向かえばいいというわけだ。フェラーリのF1ドライバーになることは極めて難しいが、フェラーリ・チャレンジのドライバーになれる可能性なら、あなたにもある。
 

フェラーリチャレンジ▲フェラーリチャレンジ開始当時に使われていた348チャレンジ。ベースは348TBで、カスタム箇所はパワートレインとタイヤ、ブレーキのみという、素材の味を生かしたマシンとなっている

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フェラーリ 348 × 全国
フェラーリチャレンジ▲1995年からは、348の後継モデルF355をベースとしたF355チャレンジが採用されていた。カスタム箇所は排気、クラッチ、スリックタイヤのみで、エンジンは公道モデルのF355と同じ

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フェラーリ F355 × 全国
フェラーリチャレンジ▲2001年以降のフェラーリチャレンジは360チャレンジで行われた。400psを誇るV8エンジンやオールアルミ製シャシー・ボディなどの装備はベースモデルと共通

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フェラーリ 360モデナ × 全国
フェラーリチャレンジ▲2006年からは、430チャレンジがハーネスやロールケージなどの安全装備を備えて参戦。先代から90psアップのV8エンジンを搭載していた。ギア比はレース用に再調整がなされ、最高速度280km/hを下げることなく加速を強化したという

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フェラーリ F430 × 全国
フェラーリチャレンジ▲2011年からは大型ウイングを追加した458チャレンジが参戦。直噴エンジンや電子デフ“E-Diff”、ハイテク素材をフェラーリで初めて採用した。チャレンジはベースモデルから50mm車高が落とされている

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フェラーリ 458イタリア × 全国
フェラーリチャレンジ▲チャレンジ初のターボ搭載車である488チャレンジは、2017年から参戦している。出力はベースの488GTBと同じ670psを誇る

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フェラーリ 488GTB × 全国
文/藤野太一、写真/Ferrari