ポルシェ カレラカップ▲ドイツで第1回大会が開催され、今では日本やイギリス、フランスなど計10ヵ国で開催されているポルシェ カレラカップ

"カスタマーレーシング"をいち早く取り入れたポルシェ

自動車メーカーにとって、レースは実験場であり、またプロモーションの場でもある。しかし、巨額なコストが必要なため景気動向に左右されやすく、本業の業績によってはレースから撤退してしまうメーカーも多く見られる。

そうした中、顧客に自社のレースカーを販売し、シリーズ戦を運営することでビジネスとして成立させる、いわゆるカスタマーレーシングという仕組みをいち早く構築したのがポルシェだ。

1990年、ポルシェはドイツで911(964型)のワンメイクレース、ポルシェ カレラカップを開始する。1993年にはF1のサポートレースとして「ポルシェスーパーカップ」が開催されるようになり、911のワンメイクレースは、世界的に注目を浴びるようになる。
 

ポルシェ カレラカップ▲1990年に行われたカレラカップドイツ戦の一幕
ポルシェ カレラカップ▲スパ・フランコルシャンやモナコなどで行われていた「スーパーカップ」

日本では、エンジンが水冷式へと切り変わった世代(996型)にあたる2001年に、ポルシェ カレラカップジャパンとしてスタート。2006年に997型、2014年から991型、そして2022年からは現行型の992型をベースとしたカップカーでレースが行われる。

いまや、カレラカップは世界10ヵ国で開催されている人気シリーズ。また2019年からは、それまで走っていた型落ちのGT3カップカーや、ケイマンGT4などが参戦できるポルシェスプリントジャパンがスタートしている。こちらは、カレラカップへのステップアップカテゴリーとして、世界8ヵ国で開催されている。
 

ポルシェ カレラカップ▲鈴鹿サーキットで行われたポルシェ カレラカップジャパン2011シリーズ 第9戦
ポルシェ カレラカップ▲2022シリーズからは、992型の911 カレラをベースにした911 GT3 Cupが出走する。特徴は、上から吊る形状のスワンネック型と呼ばれるリアウイングだ

“世界最速のワンメイクレース”とも呼ばれるポルシェカレラカップシリーズは、現在、「プロクラス(Pro)」、「プロアマクラス(ProAm)」、「アマクラス(Am)」の3クラスに区分され、クラスごとの獲得ポイントでシリーズランキングが決定する。

また、プロクラスには多くのプロドライバーをはじめ、ポルシェジャパンモータースポーツのスカラシッププログラムであるポルシェジャパンジュニアドライバーが参加するなど、毎戦ワンメイクレースならではの実力伯仲の激戦が見られる。

優勝したドライバーが、のちにGTカーレースの国内最高峰カテゴリーであるSUPER GTにステップアップし活躍する姿もみられ、優秀な人材を輩出するシリーズでもある。

ポルシェは、フォーミュラEやWEC、IMSAなどの国際レースでのワークス活動をはじめ、こうしたカスタマーレーシング活動を、国内でも20年以上にわたって継続している。さらに2021年10月には、世界で9ヵ所目となるドライビング体験施設、ポルシェエクスペリエンスセンター東京を千葉県木更津市にオープンした。これはポルシェオーナーのみならず、一般の人でもポルシェ本来の性能を堪能し、運転スキルを磨くことできる施設だが、そのプログラム内容の充実ぶりには驚くばかりだ。ポルシェというメーカーが、いかに走ることに情熱を注いでいるのかを、如実に物語っている。
 

ポルシェ カレラカップ▲2021年10月にオープンした「ポルシェ エクスペリエンスセンター東京」。トラックコースだけでなくドリフト走行やオフロード走行を体験でき、ポルシェを深く知ることのできる施設だ
 

歴代911の中古車物件をチェック!

ポルシェ カレラカップ▲空冷6気筒エンジンを搭載し1989年に登場した911(964型)。ダイレクト感を味わえる空冷エンジンは、愛好家からの人気が高く、中古車相場も上昇中だ。エントリーグレードのカレラであれば、ティプトロニック(AT)が800万円強、MTなら1300万円前後がボリュームゾーンとなっている

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911(964型) × 全国
 
ポルシェ カレラカップ▲ポルシェ最後の空冷エンジンモデルとして1993年に登場した911(993型)。リアには、操作性や安定性に優れたマルチリンク式サスペンションを911で初採用した。中古車相場は、最後の空冷モデルということもあって注目度が高く、高騰を続けている。上位グレードのターボはASK物件がほとんど。NAエンジンのカレラは約900万円、カレラSは約1400万円となっている

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911(993型) × 全国
 
ポルシェ カレラカップ▲水冷エンジンを搭載し1997年に登場した911(996型)。水冷化によりエンジンの信頼性が向上し、出力も300psとなった。911の中では中古車相場は安く穴場モデルといえる。ベーシックな2WDのカレラSであれば、300万円前後といった相場感

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911(996型) × 全国
 
ポルシェ カレラカップ▲2004年に登場した911(997型)。丸型ライトの採用などエクステリアの刷新が行われ、現行モデルに近い見た目となっている。中古車相場は、エントリーモデルのカレラが1000万円前後、より高性能なGTSやGT3は1500万~2000万円前後となっている

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911(997型) × 全国
 
ポルシェ カレラカップ▲2011年に登場した911(991型)。今までターボ、ターボSのみに搭載されていたターボエンジンは、この991型の後期型からカレラを含む全モデルに採用されている。また、オプションで後輪操舵も用意されていた。カレラの中古車相場は1200万円ほど。ターボは1200万~1800万円前後だ

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911(991型) × 全国
 
ポルシェ カレラカップ▲2018年に登場した現行モデルの992型。ワイドボディ化し、7速PDK(AT)は8速に進化している。中古車相場は、1500万~2600万円と、新車からの値落ちはまだ始まっていない。しかし、半導体ショックで納車が遅れている今、納車が早い中古車を検討してみてはいかがだろうか

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現行型911(992型) × 全国
 
文/藤野太一、写真/Porsche