NISSAN GT-R 2018年モデルでの700kmドライブと、サンディエゴで見たGT-R50
2018/10/09
アメリカ西海岸をGT-Rで走った
NISSAN GT-Rは日産自動車が世界に誇る一級のハイパフォーマンスカー。その限界性能とサーキットでのラップが素晴らしいことは周知の事実である。
2007年の発表以来、毎年のように改良モデルを送り出しており、私もそれらに毎度試乗してきた。毎年、確かに良くなってはいるなと思う。
一方で、静粛性を含め快適に長距離をクルージングしたくなるかどうかには疑問があった。
例えば、2016年モデルを試乗した際は、轍におけるブレーキングでステアリングが取られる症状が顕著に現れていた。
当時、日産自動車の有名なテストドライバー加藤氏(開発からGT-Rのテストをされている方だ)に伺ったところ、ブレーキングでブッシュの負荷がかかっている状態では、轍でステアリングが取られるのは当たり前、と私に説明してくれた。
私は正直、それで良いのかと疑問に思っていた。
限界性能重視のセッティングであればそれでも納得できるが、GTとしてドライバーの疲れを最小限にとどめたグランツーリングを考えるのならば、解決しなければならない部分のひとつだと感じていたからだ。
しかしその後登場した2017年モデルは一変。シャシー剛性はかなり高くなり、サスペンションもしなやかさが増した。キャビン内のノイズも相当減少され、遠くに行きたくなるようなスペックへと変更されたのだ。
そして今回、私は、さらに改良された2018年モデルを本格的にテストできる機会に恵まれた。
実は、ここ5年ほど、アメリカ モントレーに「モントレーカーウィーク」というカーイベントに参加しているのだが、およそ700km離れたサンディエゴから車で向かうのがお決まりのコースなのだ。そして、昨年まではその道のりをインフ二ティー QX70で移動していた。
ところが今年は、GT-Rの2018年モデルに乗ることになった。栃木で作られたGT-Rでアメリカ西海岸のハイウェイと海岸線を思いっきり走ることができるのだ。車好きにとっては、たまらない贅沢な機会である。
いざ、700kmのロングドライブへ
カルフォルニアのハイウェイは、決して良好でフラットな路面状況ではない。気温が上がる地域だと、アスファルトでは変形してしまう恐れがあるため、コンクリートのような硬い路面で舗装されている。このような道路では車体に受ける衝撃も大きい。つまり、実験には最適なコースだった。
私は、サンディエゴから、インターステイト5をひたすら北上した。
途中、ロストヒルズというところで西に向かって走るのだが、無人で石油を採掘する“油井”というマシーンが並んでいて、なんとも言えない不気味な雰囲気だった。
この地域は、摂氏40度ほどで、空気も乾燥していて外はとても暑い。しかしGT-Rはとてもいい調子で走っていた。硬い路面やアンジュレーションでも、ステアリングが不用意に取られることはなく、疲れにくかった。
加速もシャープでスタビリティも抜群。ブレーキのフィールも最高だ。唯一気になった点は、路面からのロードノイズだろうか。
左ハンドル仕様の2018年モデルも、右ハンドル仕様同様に素晴らしい。
私は、気に入った80年代のポップスを聴きながら快適なクルージングを楽しんだ。
たどり着いたモントレーの小さな町には、数百万円のクラシックカーから数億円の最新モデルまで、様々な車が集っていた。そんな中でもGT-Rは注目され、写真を撮られる。私が乗っていたのはバイブラントレッドという鮮やかで深みのある赤だったので、余計に目立った。
参加した“Quail”というイベントでは、ペニンシュラホテルが世界中の様々な料理を提供。お洒落な参加者も多く、ワイン片手に名車を見ながらオーナーと会話ができた。
そんな和やかな空間に、GT-R50が自走で現れた。
GT-Rファンにとっては、今回イベントの目玉であろう。ラグナセカのサーキットで走らせるのだ。
目の前に現れたGT-R50は、ルーフが低くてカッコよかった。ウエストラインも低められている。テールも短く見せる工夫がされていて、さすがのイタルデザインである。見守るスタッフのジャケットすらイカしている。
運転席から降りてきたのは、日産グローバルデザインのトップであるアルフォンソ・アルベイザ氏。とても気さくで話しやすい方で、なんと、私も運転席に座らせてもらった。
シートに腰をおろし、見渡すインテリアは、デザインもマテリアルも素晴らしい出来映えだった。さすがカロッツェリアである。販売してもほとんどこの仕様でデリバリーするという。
ベースはNISMO GT-Rだそうだ。もちろん、デザインだけでなくパフォーマンスも素晴らしい。
イタルデザインの方いわく、実際に時速250kmまで出し、テストしているというから凄い。スタイリングだけでなく空力も相当考えられているということである。
翌日はラグナセカレースウェイで、高低差15mのS字を一気に下るコークスクリューを走らせ、観客を沸かせていた。
このGT-R50、近い時期に銀座でも展示するようなので興味のある方はぜひ見てほしい。
アメリカ日産は、日本では想像できないほどファンを魅了するイベントを展開しているように思う。日産とインフィニティを盛り上げ、ユーザーにアピールを欠かさない。
とても楽しそうにイベントを計画し、実にフレンドリーに分け隔たりなく交流する。これがアメリカの自動車社会なのだろう。
異国の地でのロングドライブで分かったのは、乗り心地だけでなく、GT-Rという車の「ファンを魅了する力」であった。
道すがら、人々の注目を集めるスタイリング。イベントで、世界各国のファンを興奮させるパフォーマンス。思えば、幾度となく乗ってきた私自身も、700kmもドライブできるとなると嬉しさが込み上げた。
これぞGT-Rが積み上げてきたブランド力であり、人々を惹きつける魅力である。
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