大好きなゴルフIと一日でも長く過ごしたい! それをかなえたのは “エンジン載せ替え”だった
2025/06/19

車は乗ってなんぼ!
故障を恐れずどこへでも
神奈川県相模原市にある「スピニングガレージ」。ここは、約1000坪の敷地に総在庫100台、メンテナンス実績は延べ1万台という全国的にも珍しいゴルフII専門店だ。
このゴルフIIの聖地で“仕上げ職人”を務めているのが、プロの格闘家(!)でもある藤原敬典さん。彼の愛車は、1983年型のゴルフIだ。

この白いボディはサビもそのままの、年月を感じさせるなんとも味わい深いヤレっぷり。

「こんな見た目なので“不要車回収します”なんて紙が挟まれてることもよくあります」と藤原さんは苦笑いするが、ドアを開ければびっくりするほどきれいなシートが設えられていて、ただのポンコツ(失礼!)ではないことがわかる。
「こちらのゴルフは、エンジンはゴルフIIのカブリオのものに載せ替えています。走りは問題なく、エアコンも効くので毎日の通勤はじめ、普通に普段使いしてきました。せっかく好きな車なので、やっぱり毎日乗りたいので。もちろん新車だって止まるときは止まりますから、不調の予兆を教えてくれる車の声には耳を傾けながら、予防整備はしっかりして。おかげさまで困ったことはないです」
ゴルフカブリオのエンジンは新しいだけでなく、ベースのハッチバックのものよりもハイパワーだそうで、より元気に走れるという。
手に入れた当時は日産 ラシーンに乗っていた藤原さん。特別ゴルフに興味はなかったそうだが、バックヤードで朽ちかけていたこのゴルフIの姿にある日突然ひとめぼれした。ゴルフIIの聖地に集う精霊たちの力を借りてここまで仕上げたそうだ。
しかしこの白いゴルフIは、つい先日車検が切れてしまった。ということで、目下次期愛車の仕上げを急いでいる最中だという。

“乗り続けること”で愛車との思い出を増やしたい
その次期愛車がこちら。見た目は最新の車かと見まがうほどにピカピカだが、やっぱりよく見ると1983年型のゴルフIだ。6年ほど前に長野県で不動車となっていた個体を20万円ほどで購入し、それ以来コツコツ整備してきた。
購入当時は青いボディに白いエンジンフードや白いフェンダーが付けられていたため、仲間たちからは「ドラえもん」と呼ばれていたそう。
そんな事故車の内外装パーツをすっかり外して車体のみにし、いわゆる「どんがら」にして塗装屋さんに出した。そして、エンジンは2000年式トヨタ プラッツのものに換装、エアクリーナーケースはゴルフIIのものにするなどゴルフらしさも尊重しつつ、エンジンルームの中身はほとんど一新したそうだ。

しかし、よくもまあゴルフIのエンジンルームにプラッツ、つまりはカローラやヴィッツと共通の1.5L「1NZ」エンジンが収まると見当をつけ、そして収めきったものだ。

ゴルフIにこの「1NZ」がぴったりだという見識があったんですか? と聞くと、「いやあ、僕はまったく車は詳しくなくて」と、藤原さんは謙遜しながら言った。
「うちのパーツ担当が、サイズ的にいけるだろうと目星をつけて。言うのは簡単ですけども、まあすんなりいかないことも多くて、なかなか大変でした」
ここまでの出費は塗装に約100万円、パーツ代が約80万円。もう走ることに関しては出来上がっているそうだ。あとは内装を仕上げて車検を取るのみ。晴れて完成して行ってみたいな所は、三重県の鳥羽水族館。これまで乗っていた車でも長距離運転はしたことがなかったそうで、次は遠出のドライブをもくろんでいるという。
「ラッコって、僕らが子供の頃はいろんな水族館で見れたじゃないですか。でも今はもう国内では鳥羽水族館にしかいないらしいんですよ……すみません、車とは関係ないんですけど(笑)」
好きな車と毎日の生活をともにし、思い立ったら好きな場所を目指して走っていける。そんな幸せを、たとえ好きな見た目がオールドでも、手に入れられる方法があるのだと、藤原さんの屈託のない笑顔は教えてくれた。


ライター
竹井あきら
自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してからしばらく車を所有していなかったが、2021年春にプジョー 208 スタイルのMTを購入。近年は1馬力(乗馬)にも夢中。