マツダ ロードスター

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
 

「私もかっこよく走りたい!!」目標があるからうまくなれる

“ミントグリーン×パープル=ゆりちゃんモータース”

そんな公式が出来上がるくらい、この奇抜カラーなNBロードスターは彼女に馴染んでいる。

生まれも育ちも群馬県のゆりちゃんモータースさんは、車に無関係な人生を送っていた。幼少期からフィギュアスケートざんまいの日々を送っており、大学も教育関係に進んだ。卒業して教師となり、特別支援クラスで担任をつとめる。当時の知人に会うと、今の姿を見て驚かれるという。

車に興味を持ったのは大学2年生の時。「就活に有利だから(笑)」という理由で、マニュアル免許を取得しようと考えたのがすべての始まりだった。「どうせ取得するなら厳しい環境下で」と考え、積雪のある新潟県まで免許合宿に行ったという。

最初はなかなか上手く操作できず「こんなものやめてしまいたい!」と思った。しかし、すべてのカリキュラムが終わる頃には、むしろ操作することが楽しくなり、免許を取得したら早く自分の車に乗りたい、しかもマニュアル車で! と車を探すように。

ある日、実家の居酒屋(現在休業中)で手伝いをしていたところ、車を欲しがっているのを知った常連客から「よかったら安く譲るよ」との提案が。すぐにでも車が欲しかったゆりちゃんモータースさんは、「欲しいです!!」と即答。

譲ってもらった車は、スバル プレオのマニュアル車。小さな車で決してパワーのある車ではないが、大学の空きコマがあればフラッとドライブに出かけてしまうくらい、運転することにのめり込んだ。「運転するのがとにかく楽しかったんですよね」と当時を振り返る。

マツダ ロードスター

しかし、自分のドライビングスキルが上がっていくに連れ、徐々に物足りなさを感じるようになったのも事実。そんな時に知人の紹介でたまたまサーキット走行会に出向くことに。初めて走ったコースは本庄サーキット。アタックするのが楽しくてどんどんのめり込んでいった。

思えばフィギュアスケートをはじめ、今まで常に「目標を定め、それに向かって突き進み、成し遂げる」ことを繰り返してきたという彼女。車を走らせることが好きになった彼女は、やがて大会に出たいと思うようになり、さらにドリフトもできるようになって、文字どおり「車を乗りこなせる」ようになりたいと思った。

過去にはフィギュアスケートで数々の賞を獲得してきた“ゆりちゃん”が、滑る舞台を氷の上からサーキットへと変えた。“ゆりちゃんモータース”が誕生した瞬間である。

それからというもの、学生の自分でも出られるレースなどがないか徹底的に調べ、積極的に参加し腕を磨いていった。そして「全日本学生ドリフト王座決定戦(通称・学ドリ)」に出場。それがのちにNBロードスターと出会う、運命のレースだった。
 

マツダ ロードスター▲今ではこんなに激しいドリフトもできるように!(写真:本人提供)

レース当日、知り合いも多く走る中で見学していたら、勝つのが当然な大排気量マシンなどに混じって、1台のNBロードスターが白煙を出しながら華麗に滑っていく姿を見て一目ぼれ。その光景を見た瞬間、自分も同じ車種に乗りたいと思い始め、NB愛を多方面で熱く語るようになった。

NBを探している中で、ロードスターを得意とするショップの平井自動車にたどり着いた。そこでたくさんのアドバイスをもらい、今の車に出会ったそう。お金があるわけではない学生相手にも、真摯に対応してくれたことが今でも忘れられないという。

目標に向かって突き進む姿はここでも発揮。ロードスターが手元に来た日から、今まで以上にドラテクを磨き続けた。同時に、ロードスターへの愛は日に日に増していった。

ガタのきている様々な部分を直し、サーキットでドリフトできるようにまで仕上げた。金銭的余裕がない中でも、自分のことより車にすべてを捧げてきた。なのでひとつひとつの走行にかける思いは強く、思い出深いゼッケンは車のあちこちに貼っている。

「思い出とともに、この(ちょっと)ブサカワ(笑)な相棒と走って滑れるのが最高に幸せ」
 

マツダ ロードスター
マツダ ロードスター
マツダ ロードスター

イメージカラーのミントグリーンは……

ところで、今ではゆりちゃんモータースのイメージカラーにもなっている「ミントグリーン×パープル」のボディは、いろいろな人の協力を得て、彼女も板金や塗装の手伝いをしながら完成させたという。実はこのカラーには深い意味があった。

ただ単に可愛いからとか、目立ちたいから、といった軽い気持ちで選んだわけではない。大変お世話になった平井自動車の「平井さん」は艶消しミントグリーンのロードスターを所有していたのだが、その平井さんが、亡くなった。

「この色だったら、私が走って活躍している姿を天国にいる平井さんがすぐに見つけられるかなと思って。でも、さすがにツヤ消しまで一緒にするのはおこがましいだろうから、私のNBはツヤありで塗装しました」

リアの存在感を強めるダックテールも平井さん作製の特別パーツなので、今ではもう作ってはもらえない。「とっても気に入っている、世界にひとつだけのパーツです」としみじみと語ってくれた。
 

マツダ ロードスター

そんなゆりちゃんモータースさんに、今の目標を聞いてみた。

「この車に込められた思いとともに走り続ける。これに尽きます。いろいろな人が協力してくれて、私を、ロードスターを作り上げてくれました。運転席はひとつだし、2シーターだからふたりまでしか乗れないけど、この車にはいろいろな人の思いが乗っていて、もう私ひとりで走っているわけではないんです。」

今までのことを思い返しながら、さらに彼女は続ける。

「どうしても行きたかったあの舞台へ連れて行ってくれて、勝たせてくれた。そんな相棒とみんなの思いを乗せて、これからも走り続けたいです!」

昨年はレース活動に専念するために車の道一本に絞っていたが、過去の経歴を生かして放課後等デイサービスの仕事、そして縁あってレースクイーンの仕事も始めたという。

車も仕事も、大きな目標を見つけ、努力を惜しまずに猛進するゆりちゃんモータースさんの姿が容易に想像できる。

「今年も大切なゆりちゃんモータース号で滑らせたり、レースも挑戦する予定なので皆さん応援してください!」
 

マツダ ロードスター▲実は取材当日はエンジン不調で動かすことができなったのだが、「何があっても絶対直して、一生この子と添い遂げます!」と熱く語ってくれた
ゆりちゃんモータース▲レースクイーンとしても活躍するゆりちゃんモータースさん。「レースやイベントでお会いできるのを楽しみにしています!」(写真:本人提供)

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マツダ ロードスター(2代目・NB型)×全国
文/瀬イオナ、写真/阿部昌也
マツダ ロードスター

ゆりちゃんモータースさんのマイカーレビュー

マツダ ロードスター(2代目・NB型)

●購入価格/本当に格安で譲っていただきました……
●マイカーの好きなところ/全部好きですが、あえてあげるなら平井自動車さんのダックテール! このNBと一生添い遂げます!!
●マイカーの愛すべきダメなところ/ブサカワイイお顔(笑)。そこも含めて大好きなんですけどね!
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/ドライビングテクニックを磨くにはうってつけの車です。ドリフト始めたいという人にもオススメ。スペック的には大排気量車やハイパワーターボ車に負けるけど、勝てたときは本当に最高ですよ!

瀬イオナ

自動車ジャーナリスト

瀬イオナ

車メディアの雑誌編集部員を経て、2024年にフリーランスとして独立。「走って書ける」自動車ジャーナリストを目指して修行しながら、若手ジャーナリストとして活動中している。車業界に入ったきっかけは、某動画で中谷明彦師匠を見つけたこと。現在に至るまで「ドライビング」はもちろん「ジャーナリスト」の心得など業界におけるすべてを教わりながら日々鍛錬中である。趣味はドライブ、レーシングカート、サウナ。