トヨタ チェイサー

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?

やってみたいことをかなえて、自分の手でベストな1台に

存在感のあるフロントフェイスが印象的な初代チェイサーに乗る石井さん。この初代チェイサーを手に入れたのは10年前のこと。
 

トヨタ チェイサー

チェイサーは、1977年当時圧倒的な人気を誇っていたスカイラインを追撃するべく、「追跡者」の名を冠して投入された。マークⅡ、クレスタとこのチェイサー、いわゆる「マークⅡ3兄弟」の中でも最もスポーティなモデルで、とりわけ2L直6エンジンを搭載したこの2ドアハードトップの2000SGツーリングは人気グレードだった。石井さんのチェイサーは1980年式というから、初代の最終型ということになる。

若い頃からのあこがれをかなえ、当時乗っていたbBからこのスポーティなチェイサーに乗り替えたのは、結婚生活に終止符を打ったのもきっかけのひとつだったという。

「独りになって買ったようなもん。誰にも文句言われんけ。今はもう独りで好きなときにバイク乗って、車乗って」と愉快そうに笑う。

オートバイはヤマハ XJR1300。バイク乗りは風を浴びずにいられないのか、なんとこのチェイサー、ルーフを切ってチルトアップ式のサンルーフ仕様に改造してしまったそうだ。
 

トヨタ チェイサー▲一瞬、「チェイサーにオープンモデルってあったかな?」と思ってしまいそうなほど、自然に屋根が空いている

「一応エアコン付いてるけど、暑いときはちょっとエアコンが効きにくいけん」というのはさすがに冗談だろうが、とことん自分好みに仕上げている。
 

トヨタ チェイサー

現在は電器店を営んでいる石井さんだが、以前はディーラーで自動車整備をしていたそうで、ある程度のことは自分でできるし、馴染みの整備工場もあるという。旧車を乗るにはうってつけだし、思い切ったカスタムにもチャレンジしやすいのかもしれないが、いやいや、思い切りすぎだろう。

内装もまたしかりで、オーディオはもちろん、シャンデリアも自分で取り付けた。
 

トヨタ チェイサー▲やってみたいことを全部やる!そんなカーライフも素敵だ

オーバーフェンダーの分、車幅が5ナンバーからはみ出したため構造変更届を出して3ナンバー登録をしているが、このナンバーを見て「2Lオーバーのエンジンに換装しているんじゃないか」とよく聞かれるそう。

「ノーマルの2L直6のまま替えとらんけどね、このエンジンが気に入ってるし」と困ったように苦笑い。そんないとしのストレートシックスに週に1度は火を入れ、月に1度は旧車仲間とツーリングに出かける。

仲間には、高校時代からの先輩もいれば、自宅のお隣さんもいるそうだ。 「近くのやまなみハイウェイに行くことが多いかね。信号もないし、走りやすいけん」
 

トヨタ チェイサー

でもやっぱり、一番のお気に入りポイントはこのスタイリングだという。 「今の車だとね、10年たって新しい型が出れば新しいのが欲しくなるけど、この車は今にないような形でしょ? もう10年乗っちょるけど、自分の中では古くならないもんね。もうこれ以上どこをいじりたいとか、どこに乗って行きたいとかは別にあれやけど、乗れる間はずっと、末永く乗っていきたいね」
 

文/竹井あきら、写真/山辺 学
トヨタ チェイサー

石井さんのマイカーレビュー

トヨタ チェイサー(1980年式)

●年間走行距離/約2000km
●マイカーの好きなところ/形
●マイカーの愛すべきダメなところ/パーツが手に入りにくいところ

竹井あきら

ライター

竹井あきら

自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してからしばらく車を所有していなかったが、2021年春にプジョー 208 スタイルのMTを購入。近年は1馬力(乗馬)にも夢中。