ジープ ラングラー

【連載:どんな車と、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんな車と、どんな時間を?

ウッドパネルとクラシックなフォルムに惹かれた、衝撃的な出会い

横浜のとある公園で愛犬のハモちゃんと遊んでいた、齋藤成穂さん。散歩の終わりに紹介してくれた愛車が、このジープ グランドワゴニア(以下、ワゴニア)だ。

ジープ グランドワゴニア▲1984年にデビューしたジープ グランドワゴニア。本革シートやエアコン、ステレオラジオなどを装備し、現代に続くプレミアムSUVの原点とも呼ばれている

サイドボディのウッドパネルとカクカクとしたクラシカルなフォルムが特徴的なワゴニア。齋藤さんとワゴニアとの出会いは、10代の頃に六本木へ繰り出したときだったそう。

「横のウッドパネルに結構衝撃を受けたんですよね。確か当時は、ビュイックとかセドリックワゴンとか、パネルが横に付いている車をよく見かけたんですけど、他の車にはない無骨さに一目惚れしちゃいました」と、目の前をワゴニアが横切った当時を振り返る。

ジープ グランドワゴニア
ジープ グランドワゴニア

その魅力は、友人と集まって「車乗らないの?」という話になるたびに、「ワゴニア!」と繰り返していた時期があったほど、齋藤青年の心を魅了していたそう。それから10数年経ったある日、当時のことを覚えていた先輩から「友達が手放すよ」と連絡があり、即決で「買います!」と返事をした。

ジープ グランドワゴニア

憧れと現実のギャップにびっくり! ワゴニア再生計画!

あの運命的な電話から、もう7、8年たった。

「ボクは、もともと車について詳しくないし、そこまでこだわりもなかったんですよ」という齋藤さん。ワゴニアに出会う前に乗っていた車は、およそ10万円で手に入れた日産 ステージアだったそう。「DJをやっていたので、レコードの運搬に便利だったから、セダンよりバンがよかっただけ」と、積みやすさで選んだ1台だった。それくらい、車については無頓着で、当然、機械的な知識があるはずもなかった。

ジープ グランドワゴニア▲助手席に座り慣れたご様子のハモちゃん

「ワゴニアを乗り出してみたら、めちゃくちゃ大変でした……正直ナメていましたね(笑)」と、憧れの車を手に入れた、ファーストインプレッションは想像と以上だったそう。「シーズンごとにキャブレターをセッティングしないと、普通にエンジンが止まっていたんです……。運転していてよくドキドキしていました」と、高速道路でもエンストしたことがあったそう。

せっかく手に入れた憧れのワゴニアだったが、正直良いコンディションとは言えなかった。理想と現実のギャップに普通の人であれば音を上げてしまうようなレベルだったが、斎藤さんがワゴニアの“見た目”に惚れていたことが幸いし、息を吹き返すことになる。エンストの原因である車の“中身”を交換・調整することになんらためらいがなかったのだ。

ジープ グランドワゴニア▲5900ccのV8エンジンを積んでいるワゴニア。走りはとてもパワフルでトルキーだ

その結果、知り合いの整備士たちに相談しキャブレターをインジェクション化することに。エンジンを電気制御にして、エンスト対策するところから取りかかったのだ。最近ではラジエターの温度を検知するシステムも搭載したという。温度が上昇すると電気制御でファンが回転し、エンジンを冷やすことで以前よりも冷却性能を高めたのだそう。

もちろん憧れのボディもウッドパネルもボロボロだった。「友人たちと、足回りだけ直すとか、車体はヤレた状態を残すとか、“あぁでもない、こうでもない”と議論して、結局ボクは塗装する道を選んだんです」と齋藤さん。当初、憧れていたカラーはオフホワイトだったが、「王道の人気カラーだったので、それも嫌だな」と、あえてネイビーをチョイス。

ジープ グランドワゴニア
ジープ グランドワゴニア

さらに、ブレーキも「やっぱりちょっと怖くて……」と、ランドクルーザーのブレーキに交換した。ある日、信号でブレーキペダルを踏んでも止まらず、サイドブレーキを引いて事なきを得たことがあるそう。「めちゃめちゃ怖い思いをしましたね」と、即交換に踏み切った。車検は1年更新にして整備工場に預けているが、それでも毎回なにかしらの問題が発生するという。

ジープ グランドワゴニア

シートは今でもボロボロのまま愛用しているが、天井は雨漏りがあったので張り替えた。「もう、そういう乗り物だと思っています」と、意に介さずのスタンスでいるのが、この車と付き合うのにちょうどいいと齋藤さんはボンネットを軽くなでた。ただ、「購入金額は安かったですけど、修理代はヤバいですね」と苦笑い。

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礎になったアメリカンカルチャー。齋藤さんが考えるこの先の愛車との過ごし方

そんなクラシックなワゴニアを、こだわりのある1台に仕上げている齋藤さんは、横浜の野毛にあるタコスショップ「AFRO TACOS」のオーナーでもある。

ジープ グランドワゴニア▲横浜随一の繁華街・野毛にあるAFRO TACOS。いかにもメキシコやアメリカ西海岸を思わせるテイストの店内でいただくタコスは絶品だ

「若い頃に憧れていた「The Road And The Sky」という地元の金沢文庫にあるお店で働かせてもらいながら、プライベートでニューヨークやジャマイカにちょこちょこレコーディングしに行ったり、音楽活動をしたりもしていたんですね。そこで、本場のタコスに出会ったんですよ」と、経営するタコス店のルーツを教えてくれた。

“アメリカ西海岸のメキシカンダイナー”が店のコンセプト。料理は、アメリカでは一般的なTEX-MEX(テックス・メックス)スタイルだ。主に影響を受けたのは、サンフランシスコとニューヨークのチェルシーマーケットにあるタコスショップなんだそう。フレッシュなトマトを使ったサルサソースのタコスはもちろん、珍しい“ノーパル”という食用サボテンのタコスも味わえるので、ぜひチェックしておきたい。他にも、ブルーアガベと呼ばれる植物を100%原料に使用した、メキシコ産のプレミアムテキーラも楽しめるハッピーな雰囲気が魅力だ。

ジープ グランドワゴニア▲キッチンのウォールラックには本場のテキーラやメスカルがズラリと並ぶ

そんな店の雰囲気と同様に、「あと10年くらい乗ったら、パネルを外して板金しちゃって、スカイブルーやオレンジとか、そういう色にしても可愛いんだよな」と、今とはまた違う表情で魅せてくれるワゴニアの未来像を想像する齋藤さん。

でもその前に、今度はエンジン自体の交換を画策しているとか。「車の整備をやっている知り合いに話を聞くと、“見なきゃいけない部分が多いから、ワゴニアは整備したくない車種”っていう話をよく聞くんです」と、年代モノなだけに扱いもデリケートなんだそう。そこで、「エンジン自体を載せ替えちゃうと安心かもね」という話が進んでいて、どうやらシボレーのエンジンを積むことが濃厚。ただ、インジェクションとの相性もあるので、じっくり検討するという。

ジープ グランドワゴニア▲荷物や商品の搬入搬出もワゴニアですることが多いそう

いろいろと手はかかるが、やはり若い頃から憧れ続けたワゴニアは、乗り出したら愛着が増す一方なんだそう。

「DJとしてレコードを扱っていますし、自分は古くてアナログなものが好きなんですよね。だから、車にもそういうシンパシーを感じるんです。“次乗るなら、なに?”みたいな話題も出ますが、もう満足ですね」と、レコードのようにいつまでもそばに置いていたい存在なんだという。

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文/北村康行、写真/阿部昌也
ジープ グランドワゴニア

齋藤さんのマイカーレビュー

ジープ グランドワゴニア

●購入金額/100万円くらい
●年間走行距離/不明
●マイカーの好きなところ/カクカクしたフォルム
●マイカーの愛すべきダメなところ/トラブルも愛せる人じゃないと乗れないところ
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/アメリカンカルチャーが好きな人。あと、郊外に住んでいる人の方が乗りやすいと思います

北村康行

ライター

北村康行

ストリートファッション誌の編集者を経て、2007年に独立。雑誌やweb、企業の制作物など、ファッション、モノ、グルメ、アウトドア、インタビューなどジャンルにこだわらず様々なフィールドで活動中。思い出に残るworksは、秋葉原駅の大きな観光案内図。休日は愛車のPEUGEOT Pacific-18で、地元横浜をブラついている。