オープンカーデートを叶えたちょい古のマーチカブリオレ「好きな車だから、壊れても直せばいいだけです」
2023/09/28
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
オープンカーのデートに憧れて!
「趣味は、好きな車できれいな道をドライブすること」という倉持知美さん。観光道路が好きで、日本各地のドライブスポットが掲載されたガイドブック『にっぽんクルマ旅』を眺めては目的地を見つけ、ドライブに出かけている。
そんな知美さんの愛車は、1998年式のマーチカブリオレだ。通勤にはインテグラを使っていて、マーチカブリオレはもっぱら休日のお楽しみ用。2年ほど前、「ドリカムみたいなデートがしたい!」と購入したという。
「昔からオープンカーに興味はあったけど、見られるのが恥ずかしいなって思ってたんです。年を取るにつれて、恥ずかしさがなくなってきたのかな(笑)」
「突然言い出したよね」と、夫の颯さんも愉快そうに隣で笑っている。
手に入れた初のオープンカーは、「乗り心地もいいし、ハンドリングも良くてキュッキュ曲がります」と、オープンでもクローズでも楽しく乗れるとお気に入りだ。バイクにも乗る知美さんだが、ヘルメットのいらないオープンカーは「バイクよりもかなりオープン」だと開放感にも太鼓判を押す。
これまで、遠くは秋田の大潟村まで桜と菜の花が美しい直線道路を走りに行ってきた。4シーターだから、友達と4人乗りして鬼怒川のカフェにも行った。
「狭かったなあ、後ろ。風が巻き込んで寒かったし」とぼやく颯さんに、「前は快適だったよ」とひょうひょうと返す知美さん。どうやら前席と後席の格差は大きいらしい。
好きな車だから直して乗るのは当然
20年以上前の車だけに、トラブルはないですか? と問うと、「そんなに大きなトラブルないですね。あ、CVTが壊れてMTに載せ替えました。マニュアルの方が壊れないらしいので」との答えが。いやいや、さらっと話しているが、十分大きなトラブルだ。
しかも部品取りにもう1台マーチを購入し、自宅で夫婦力を合わせてエンジンをつってトランスミッションを換装し、構造変更申請をして公認車検を通すまで自力でやり遂げたという。
「2人で泣きながらやりました。新しいことだったから楽しかったけど、また同じことが発生したらただのつまんない故障。次はやだ」
夫婦揃って建設機械メーカー勤めでこのあたりの知識は豊富だとはいえ、すさまじいDIY精神である。
そして知美さんには目標がある。愛車のマーチカブリオレを、1995年・第31回東京モーターショーに参考出品されたショーモデルと同じスタイリングに仕上げたいという。
「市販モデルのカブリオレは中期型のマーチをベースにしたものしかないんですけど、ショーモデルは前期型ベースで作られてるんです。コンセプトカーがカタログから飛び出してきたみたいにしたくて」
ヤフオクで手に入れたというカタログを見せてもらうと、なるほどヘッドランプ形状やグリルのデザインがちょっと違う。
「初期モデルの顔を解体屋さんで買ってきてはあるんですけど。後は私のやる気次第!」
そのために、コンプレッサーやスプレーガンなど塗装設備一式も揃えたという。よっぽど車いじりが好きなように見えるが、あくまでも「好きな車でドライブするため」。好きな車が古くて修理が必要だったらするし、好きな車が売ってなければ工夫して作る。
「大変だなあと思いつつ、モノを大事にしていいんじゃないって感じですね。SDGs?」
飽きっぽくて、車は次々と入れ替えがちだという夫の颯さんが、そう言って感心とあきれが入り混じったような表情を見せると、知美さんはきっぱりと断言した。
「持続可能な限り乗る!!」
これからもマーチカブリオレは、倉持夫婦とともに日本中を走り回ることだろう。
倉持知美さんのマイカーレビュー
日産 マーチカブリオレ(初代)
●年式/1998年式
●購入時期/2021年
●購入金額/ヤフオクで14万円。とにかく安いことが決め手でした(笑)
●マイカーの好きなところ/屋根が開くところ
●マイカーの愛すべきダメなところ/髪がボサボサになる
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/ロマンチックな旅がしたい人
ライター
竹井あきら
自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してからしばらく車を所有していなかったが、2021年春にプジョー 208 スタイルのMTを購入。近年は1馬力(乗馬)にも夢中。