パオ

【連載:どんな車と、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんな車と、どんな時間を?
 

自動車整備士が選んだ"足"

所有する4台の車すべてが丸目だという、自動車整備士の中井さん。趣味は車で悪路どころか岩をも登るクロスカントリーだそうで、そんな山遊びの相棒は、免許を取って初めての愛車にして、1996年式の本格クロカン、JA22型ジムニーだ。

当然かなりハードな仕様となっているから日常使いには向かず、街乗り用にしているのが1979年式の三菱ジープ。また、運搬用に1989年式の軽トラ、マツダ ポーターキャブにも乗っている。

そして通勤の足となっているのが、この1990年式の日産 パオだ。ジープはあまり長距離になると疲れるからと、毎日自宅から勤務先まで往復40km弱の道のりをこのパオで通っている。
 

パオ
パオ

「丸目が好きなんですよ。ちょっとかわいいな、欲しいなーとは思いよって。あとキャブ車っていうのもあって乗ってみたいなって」

ゆったりとした博多弁で話す中井さんの愛車はどれもこれも、丸目なうえにちょっと古い。パオの中でも特に好きなポイントは、メーターまわりやダッシュボードまわりの、今の車にはないデザインだという。
 

パオ

「古い車、好きですね。今の電子制御にはない楽しさがあるのかな。素直やし、運転する楽しみがある。電子制御が何もないので、自分の操作したとおりに動いてくれるし」

渋滞がつきものだったり、遅刻できなかったりという条件が付く通勤車は、どうしても無難な選択になりがちだが、気負いなく、好きな車に乗っている。
 

パオ

3年半前からの付き合いだが、「JAFもレッカーもまだ呼んだことはない」そうで、古い車だからと仕事に支障があるようなトラブルはない。

「今の車に乗るのとあんまり変わらないですね。……新車です」

たしかにボディは新車のようにピカピカで、聞けば自身の手でオリジナル同色に全塗装したものだそうだ。

そもそも購入時に燃料漏れがあったのを自力で修理して車検を通したのだが、車検を通したほんの2週間ほどで、悲しいことに飛び石でフロントガラスが割れてしまい、「ガラス外すけん、どうせ外すなら塗っちまうかっていう感じで」全塗装と相成ったという。
 

パオ

「趣味の範囲ですけど」と謙遜するが、とてもきれいな仕上がりだ。
 

手間も不便も愛して

このパオで、夏休みに友人と福岡から高知まで遠出したこともある。

「岡山経由で、行きはフルベタ、下道で。どんぐらいだったかな……10時間から12時間、友だちと順繰り運転して」

気になるのはエアコンの効き具合だが、「効いてるような効いてないような感じです。まあいいかなと。直さないかんのですけど」と楽しそうに笑っている。
 

パオ

「部品さえ入ればどげんかなるかなーと思うけど、最近部品もなくなりようけん」と、心配なのは部品切れ。

部品取り用にもう1台パオを確保していて、今はエンジンを降ろしてオーバーホール中で、仕上がったらゆくゆくはこちらのパオに載せ換えるつもりだ。
 

パオ

「オーバーホール中というか、途中で面倒くさくなって放置しとるというか(笑)」

車好きとしては、つくづくうらやましくなるような、中井さんの車生活だ。
 

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文/竹井あきら、写真/宮平勇希
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中井さんのマイカーレビュー

パオ(初代)


●年式/1990年
●年間走行距離/3万km
●マイカーの好きなところ/丸目
●マイカーの愛すべきダメなところ/古い、狭い、非力
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/レトロな見た目の車が好きな人

竹井あきら

編集・ライター

竹井あきら

自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してから次期愛車を物色しつつ、近年は1馬力(乗馬)に夢中。