ロー&ワイドに魅了された、オーナーと建築家【EDGE HOUSE】
カテゴリー: カーライフ
タグ: フェラーリ / EDGEが効いている / ガレージハウス
2023/05/08
リビングから愛車が見えるガレージハウスに憧れる人は多い。大きな窓から愛車の全景が見えるようにしたり、あえて美しいラインだけを窓で切り取るようにしたり……。今回訪れたガレージハウスでは、ソファの隣に愛車を置けるだけでなく、その見せ方にも建築家の緻密な計算が隠されていた。
「車のある風景」が延々と続いていく室内
低く、堂々と構える車たち。その造形には、施主だけでなく建築家も魅せられた。「車8台、バイク5台、自転車4台が収められて、リビングから眺められる平屋」という施主からの要望を受けたのは建築家の山縣洋さん。
条件は明快。けれど内容は特殊。まずは車8台を見せてもらった。すると「マクラーレン、ロータス、フェラーリ、ポルシェ……どれも美しい車でした」。
デザインが優れているだけでなく、共通するのは、いずれも車幅が広くて全高が低いこと。「全高が1.2m 以下の車もあるなど、その低さ自体が非日常的なスケール」。そこから“ワイド&ロー”という概念を建築に取り入れるアイデアが生まれた。
こうして横幅が約6m×高さは約1.9mという、横長の開口部が空間を繋いでいくガレージハウスが完成した。
車8台分のガレージに加えて、リビングの隣に1台だけ置ける、ちょっとした特設ステージを用意。このステージとリビングの天井高は、どちらも3mほどあるが、あえてその間に横長の開口部を備えることで余分な空間を隠し、ステージ上の低い車の美しさをより引き立てている。
それだけではない。リビングからガレージ奥へと視線を移すと、“車のある景色”が延々とループする。これはリビングと反対側のガレージ壁面が鏡になっているからだ。
こんなふうに、幾重もの横長フレームは、車だけでなく絶妙に配された中庭の緑も取り込み、約280坪という広い敷地にある「平屋」の表情を様々に切り取ってくれる。
横長フレームの“メイン素材”である車を所有する施主は、スーパーカー世代。美しい車を飾っておくのではなく、走らせる派。しかも、ハーレーでアメリカを横断したほどのバイク好きでもある。
かつての自宅では計13台にものぼる車やバイクは収まりきらなくなり、点在せざるを得なくなった。
「せっかく惚れ込んで買った愛車たちを目の届くところに置きたい!」。そんな思いが、このガレージハウスに繋がった。
最近、施主は古い車にも興味があるという。新しい車はすぐにエンジンがかかるけれど、キャブ車はキーをひねって、燃料ポンプの作動音を聞き……。「それが楽しい」。
だから今度はリビング脇のステージに、ロータス ヨーロッパを置いてみたいと言う。その次にステージに上がれる愛車は、さてどの車になるのだろうか。
■主要用途:専用住宅
■構造:木造
■敷地面積:949.36㎡
■建築面積:398.00㎡
■延床面積:398.00㎡
■設計・監理:山縣洋建築設計事務所
■TEL:044-931-5737
※カーセンサーEDGE 2023年6月号(2023年4月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています