中型免許▲普通自動車免許では運転できない車も、中型免許を取得すれば乗ることができるように!

この記事では、中型免許の取得を検討している人に向けて、取得条件や手順・方法、費用、期間などを解説する。中型免許取得に向け、基本情報をおさえておこう!
 

 

中型免許とは?

中型免許とは、国の法律に基づいた国家資格であり、いわゆる運転免許のひとつ。取得すれば日本の公道における中型自動車などの運転が認められる。

準中型免許とは名前が似ているが、別種類の運転免許であり、取得条件も運転可能な車の範囲も異なる。

中型免許には普通自動車免許と同様に3つの区分がある。「第一種運転免許」「第二種運転免許」「仮運転免許」に分かれており、運転の目的に応じて取得する必要がある。

■中型自動車第一種運転免許
中型自動車などを、公道で運転するための免許。一般的に中型免許といった場合はこの「中型自動車第一種運転免許」を示すことが多い。

■中型自動車第二種運転免許
営利目的でお客を乗せて走行するための免許。マイクロバスなどで旅客運送のために運転する場合に必要。

■中型自動車仮運転免許
練習や試験を目的として公道で運転するための免許。中型の第一種・第二種免許を取得しようとする場合は、必ず仮免許を取得する必要がある。

この記事では、中型自動車の第一種運転免許について解説していく。

また、8t限定中型免許も存在する。これは、2007年6月1日以前に取得された普通自動車免許のことで、正式名称は「中型自動車第一種運転免許(8t限定)」。その免許証には、「中型車は中型車(8t)に限る」旨が記されている。

かつての普通自動車免許では、車両総重量8t未満の車まで運転できた。しかし、2007年6月2日の道路交通法改正で中型免許が新設されたことを受けて、普通自動車免許の区分も見直された。

ただ、それ以前に免許を取得していた人が取得時と同様の条件で運転できるようにするために、8t限定の中型免許が設けられた……という経緯があるのだ。
 

トラック
 

中型免許で運転できる車

中型免許を保持している場合に運転できる車は、下記の5種類だ。
 

普通自動車 車両総重量3.5t未満/最大積載量2t未満/乗車定員10人以下の自動車
準中型自動車 車両総重量3.5t以上7.5t未満/最大積載量2t以上4.5t未満/乗車定員10人以下の自動車
中型自動車 車両総重量7.5t以上11t未満/最大積載量4.5t以上6.5t未満/乗車定員29人以下の自動車
小型特殊自動車 トラクターなど、全長4.7m以下×全幅1.7m以下×全高2.0m以下/最高速度15km/h以下の特殊な形状・用途の自動車(ヘッドガードなどの装置により2.0m超2.8m以下であるものを含む)
原動機付自転車 排気量50㏄以下/定格出力0.60kW以下の二輪自動車
普通自動車 車両総重量3.5t未満/最大積載量2t未満/乗車定員10人以下の自動車
準中型自動車 車両総重量3.5t以上7.5t未満/最大積載量2t以上4.5t未満/乗車定員10人以下の自動車
中型自動車 車両総重量7.5t以上11t未満/最大積載量4.5t以上6.5t未満/乗車定員29人以下の自動車
小型特殊自動車 トラクターなど、全長4.7m以下×全幅1.7m以下×全高2.0m以下/最高速度15km/h以下の特殊な形状・用途の自動車(ヘッドガードなどの装置により2.0m超2.8m以下であるものを含む)
原動機付自転車 排気量50㏄以下/定格出力0.60kW以下の二輪自動車

なお、8t限定中型免許の場合は「車両総重量8t未満/最大積載量5t未満/乗車人数10人以下」の自動車が可能となっている。
 

中型免許で運転▲中型自動車には5tトラックなどが該当する。中型免許があれば一部のマイクロバスも運転できるが、旅客運送のためにお客を乗せる場合は第二種免許が必要なので注意しよう
 

中型免許を取得するための条件

中型免許(一種)の取得には下記の条件を満たす必要がある。

年齢:20歳以上
視力:両眼で0.8以上、左右それぞれで0.5以上(眼鏡など使用可)
深視力:奥行知覚検査器による検査3回の平均誤差が2cm以下
色彩識別能力:赤色、青色、黄色の識別ができる
聴力:10mの距離で90dBの警音器の音が聞こえる
運転経歴:普通・準中型・大型特殊いずれかの免許取得から通算2年以上が経過
受験資格:中型の仮免許取得後、過去3ヵ月以内に5日以上運転の練習をしている

年齢は20歳以上が基本となるが、2022年5月13日より取得年齢の特例が設けられた。「受験資格特例教習」を修了、かつ普通自動車免許を1年以上保持している場合、19歳でも取得できるようになった。

ただし、本来の取得年齢である20歳までの「若年運転者期間」に一定以上の違反をしたら、若年運転者講習の受講が義務付けられる。そのうえで講習への不参加や、講習後に一定以上の違反が再度あった場合、特例による中型免許の取得が取り消される。
 

 

中型免許を取得・限定解除する方法と流れ

中型免許を取得する方法は2つある。「指定自動車教習を利用する」方法と「一発試験を受ける」方法だ。

取得の流れは、受ける試験数などに違いはあるが、基本的には普通自動車免許の取得時と同様となる。

指定自動車教習所を利用する方法

指定自動車教習所を利用する方法では、普通自動車免許の取得時と同様、運転免許試験場での技能試験が免除される。
 

指定自動車教習所に利用した場合の流れ▲普通自動車免許の取得と異なるのは、学科試験がないこと。運転免許試験場では適性検査にのみ合格すれば、中型免許を取得できる

なお、「8t限定中型免許」を保有している人は、免許試験ではなく限定解除審査を受ける。
 

指定自動車教習所に利用した場合の限定解除▲限定解除審査の場合も教習所を利用すれば、技能試験が免除される

路上教習がなく、所内教習を受けて技能審査を合格すれば「技能審査合格証明書」が発行される。運転免許試験場では「技能審査合格証明書」を提出して申請するのみでOKだ。

このように、保持している運転免許の種類が異なっても、基本的な流れは同じ。

一方、下記のように教習所での受講数は異なるので、事前にチェックしておこう。
 

保持している免許 技能教習 学科教習
普通免許 15時限 1時限
普通免許(AT限定) 19時限 1時限
5t限定準中型免許 11時限 1時限
5t限定準中型免許
(AT限定)
15時限 1時限
準中型免許 9時限 なし
8t限定中型免許 5時間 なし
8t限定中型免許
(AT限定)
9時限 なし
保持している免許 技能教習 学科教習
普通免許 15時限 1時限
普通免許(AT限定) 19時限 1時限
5t限定準中型免許 11時限 1時限
5t限定準中型免許(AT限定) 15時限 1時限
準中型免許 9時限 なし
8t限定中型免許 5時間 なし
8t限定中型免許(AT限定) 9時限 なし

なお、指定自動車教習所の利用には通学と合宿の2種類がある。どちらでも流れは変わらないが、通学の方が自分のスケジュールに合わせやすく、合宿の方が短期間で卒業できるという特徴がある。
 

指定自動車教習所▲都道府県の公安委員会に届け出をした「届出自動車教習所」の場合、運転免許試験場での技能試験が免除されない。自分が通いたい教習所はどちらか、きちんと確認しよう!

一発試験を受ける方法

一発試験は、指定自動車教習所に通わずに運転免許試験場の試験で取得する方法。

指定自動車教習所を利用する費用が抑えられる反面、運転取得までのハードルが高いのが特徴だ。試験に受からず、何度も受験することになれば、逆に高くつくこともある。

流れとしては、普通自動車免許の一発試験と同じ。仮免許も運転免許試験場の試験で取得し、指導員を乗せて5日間以上の路上練習を行う。そのうえで本免試験を合格して取得時講習を受講し終えたら、免許証が交付される。
 

一発試験の流れ▲中型免許の一発試験の場合でも、仮免および本免の学科試験は省かれている

なお、取得時講習は、準中型免許または普通第二種免許を既に取得している場合などは免除される。

一方で、限定解除審査の一発試験では、教習所を利用した場合と同様に仮免許を取得しなくてOK。技能審査に合格すれば免許証が交付される。
 

一発試験の限定解除▲こちらは限定解除審査の一発試験の流れ。通常の一発試験より工程数がだいぶ少ない
 

中型免許取得にかかる「費用」

中型免許の取得費用は「自動車教習所の費用」と「運転免許試験場での各手数料」に大別できる。

自動車教習所を利用した場合は両費用が発生。一発試験の場合は後者しか費用が発生しないものの、手数料の費用が高くなる。

自動車教習所を利用した場合

自動車教習所を利用した場合の費用はケース・バイ・ケース。利用する自動車教習所にもよるし、保持している運転免許の種類によっても料金が異なるからだ。加えて、運転免許試験場での各手数料も地域によって異なる。

「どうしても相場感を知りたい」という人のために、一般的にいわれる教習所の料金を調査(編集部調べ)。各手数料は東京都の費用を掲載した。あくまでも参考程度に活用してほしい。
 

教習所の費用 通学 「普通」保有者20万~28万円
「5t限定準中型」保有者15万~25万円
「準中型」保有者14万~19万円
「8t限定中型」保有者9万~12万円
免許合宿 「普通」保有者18万~25万円
「5t限定準中型」保有者14万~20万円
「準中型免許」保有者13万~18万円
「8t限定中型」保有者9万~12万円
試験場での
手数料
中型免許
試験
3600円
(受験料1550円+免許証交付料2050円)
限定解除
審査
1400円
教習所の
費用
通学 「普通」保有者20万~28万円
「5t限定準中型」保有者15万~25万円
「準中型免許」保有者14万~19万円
「8t限定中型」保有者9万~12万円
免許
合宿
「普通」保有者18万~25万円
「5t限定準中型」保有者14万~20万円
「準中型」保有者13万~18万円
「8t限定中型」保有者9万~12万円
試験場での
手数料
中型
免許
試験
3600円
(受験料1550円+免許証交付料2050円)
限定
解除
審査
1400円

一発試験を受けた場合

一発試験を受ける場合は仮免許試験と、本免許試験あるいは限定解除審査の各手数料を払う。もちろん、審査に受からず再度受験する場合は都度、受験料と試験車使用料がかかる。

一発試験の場合でも、運転免許試験場での各手数料は地域によって異なる。下記は東京都の料金なので、一つの目安として参考にしてほしい。
 

仮免許試験 5500円
(受験料2900円+試験車使用料1450円+仮免許証交付手数料1150円)
本試験 8650円
(受験料4100円+試験車使用料2500円+免許証交付手数料2050円)
限定解除審査 2850円
(受験料1400円+試験車使用料1450円)
仮免許試験 5500円
(受験料2900円+試験車使用料1450円+仮免許証交付手数料1150円)
本試験 8650円
(受験料4100円+試験車使用料2500円+免許証交付手数料2050円)
限定解除審査 2850円
(受験料1400円+試験車使用料1450円)
 

中型免許取得にかかる「期間」

中型免許取得までの平均的な期間は一概には言えない。教習所に通う頻度や保有している免許などによって状況が異なるからだ。

例えば自動車教習所に通学する場合、卒業するまで、普通自動車免許を保有しているなら1~2ヵ月、準中型免許を保有しているなら3~6週間はかかるとされている。

一方で、卒業までの最短日数は算出できる。受講上限である1日2時限で修了検定・卒業検定などをスムーズに受けられた場合は、下記が目安。保有している免許別に紹介しよう。
 

普通免許 9日
普通免許(AT限定) 12日
5t限定準中型免許 8日
5t限定準中型免許
(AT限定)
10日
準中型免許 6日
8t限定中型免許 4日
8t限定中型免許
(AT限定)
6日
普通免許 9日
普通免許(AT限定) 12日
5t限定準中型免許 8日
5t限定準中型免許(AT限定) 10日
準中型免許 6日
8t限定中型免許 4日
8t限定中型免許(AT限定) 6日

合宿免許は教習所によって卒業までの最短日数はマチマチだが、普通自動車免許を保有している場合なら最短7~9日であることが多い。ただ、8t限定中型免許の場合は3~4日で、受講する教習数が少ない免許を保持しているほど、短縮できる期間も少なくなる。
 

 

中型免許取得で申請できる補助金・助成金

中型免許の取得は、国からの補助金・助成金を利用できる。資格を満たすことが条件となるが、申請すれば取得にかかった費用の一部を受給できる。

教育訓練給付制度

個人で活用しやすいのは「教育訓練給付制度」。対象者に厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講した費用の一部が支給される。対象者は雇用保険の被保険者、ないし被保険者であった人。具体的な条件は下記のとおりだ。

【対象者1】雇用保険の被保険者
教育訓練の受講開始日で雇用保険に加入。さらに、加入期間が教育訓練給付を初めて受給する場合は1年以上、以前に受給したことがある場合は前回の受講開始日から3年以上経過している。

【対象者2】雇用保険の被保険者であった方
受講開始日では雇用保険の被保険者でないが、被保険者でなくなった日(退職日の翌日)から受講開始日までが1年以内(出産や持病を理由に適用対象期間を延長した場合は最大20年以内)。かつ加入していた期間が教育訓練給付を初めて受給する場合は1年以上、以前に受給したことがある場合は前回の受講開始日から3年以上経過している。

対象となる教育訓練は「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」「一般教育訓練」の3種類。中型免許の取得は「特定一般教育訓練」と「一般教育訓練」に該当する。
 

特定一般教育訓練 支給額は受講費用の40%(上限20万円)
一般教育訓練 支給額は受講費用の20%(上限10万円)
特定一般
教育訓練
支給額は受講費用の40%(上限20万円)
一般教育訓練 支給額は受講費用の20%(上限10万円)

支給申請は、教育訓練の修了翌日から1ヵ月以内に地域のハローワークで行う。なお、特定一般教育訓練で申請する場合は、ハローワークにて訓練前キャリアコンサルティングを受け、受講開始日の1ヵ月前までに受給資格確認を行う必要がある。

特定一般教育訓練と一般教育訓練のどちらを利用できるかは、教習所によって異なる。教育訓練給付制度を利用したいなら、厚生労働省が用意する検索システムで調べてみると良いだろう。
 

人材開発支援助成金・キャリアアップ助成金

企業の経営者が社員に中型免許の取得を推進する場合は、「人材開発支援助成金」と「キャリアアップ助成金」が活用できる。

人材開発支援助成金は、正社員の育成・教育に主眼を置いた助成金。業務に関連する専門知識・技能を習得する場合、訓練中の賃金や経費の一部が支給される。対して、キャリアアップ助成金は非正規社員を企業内で育てて正社員へ転換する取り組みなどを後押しする助成金だ。

両助成金は似た名前だが、対象者も助成内容も異なる。利用を検討している人は下記から詳細を確認しよう。
 

 

中型免許に関するQ&A

Q.中型免許を取得するメリットは?
中型免許を取得するメリットは、仕事の選択肢が増えること。中型車を運転できるようになる分、ドライバーとして活躍できる幅が広がる。「就きたい仕事で扱うのは中型車まで」という場合には、大型免許を取るよりもコストを抑えられる。指定自動車教習所に通う費用がリーズナブルとなるからだ。

Q.中型免許取得の難易度はどれくらい?
A.警察庁交通局運転免許課が発表する「運転免許統計 令和3年版」によると、中型免許の本免試験合格率は94.5%。限定解除審査は99.7%で、AT限定の8t限定中型免許であっても99.8%となっている。ただ、このほとんどが教習所の卒業生。一発試験の場合は合格率がだいぶ低いと推測されている。

Q.中型自動車第一種免許の本免試験・限定解除審査に必要なものは?
A.中型免許の本免試験と限定解除審査では必要なものが異なる。さらに教習所を卒業した場合と一発試験の場合でも違うので、自分が持参すべきものを間違わないように注意しよう。
 

本免試験 教習所
卒業
■運転免許証
■卒業証明書または検査合格証明書
■申請用写真(縦3cm×横2.4cm/6ヵ月以内に撮影)
■手数料3800円
一発
試験
■運転免許証
■仮運転免許証
■路上練習申告書
■申請用写真(縦3cm×横2.4cm/6ヵ月以内に撮影)
■手数料8650円
限定解除
審査
教習所
卒業
■運転免許証
■技能審査合格証明書
■手数料1400円
一発
試験
■運転免許証
■手数料2850円
本免試験 教習所
卒業
■運転免許証
■卒業証明書または検査合格証明書
■申請用写真(縦3cm×横2.4cm/6ヵ月以内に撮影)
■手数料3800円
一発
試験
■運転免許証
■仮運転免許証
■路上練習申告書
■申請用写真(縦3cm×横2.4cm/6ヵ月以内に撮影)
■手数料8650円
限定解除
審査
教習所
卒業
■運転免許証
■技能審査合格証明書
■手数料1400円
一発
試験
■運転免許証
■手数料2850円
文/綱島剛(DOCUMENT) 写真/Adobe Stock

※記事内の情報は2023年3月24日時点のものです。