車のバッテリー上がりの対処法・直し方|まず何をすべき? やってはいけないこと、原因も解説!
2023/03/08
車を動かそうとしたら、バッテリーが上がって動かない……という経験は少なくない。2021年度においては、JAFのロードサービス出動理由の4割がバッテリー上がりだった(JAF「よくあるロードサービス出動理由」)。
この記事では、車のバッテリー上がりの対処法や直し方、やってはいけないことを解説。さらに、そもそもの原因やトラブルを未然に防ぐ方法など、バッテリーについてのノウハウも紹介する。
バッテリー上がりとは?どんなトラブル?
バッテリー上がりとは、バッテリーに蓄えられた電気が少なくなり、車の電装品を動かすのに必要な電力を供給できなくなった状態のことだ。
バッテリーはエンジンを始動するためのセルモーターをはじめ、点火コイルやヘッドライトなど様々な電装品に電力を供給している。そのため、バッテリーが上がると「エンジンがかからない」などのトラブルを引き起こす。また、極端にバッテリー性能が低下すると、走行中にエンジンが止まってしまう恐れもある。
バッテリー上がりの症状・チェック法
バッテリーが上がってしまったときには、必ず何らかの症状が現れる。バッテリー上がりの主な症状は下記のとおり。
一般的なガソリン車やディーゼル車の場合、エンジンをかけると「キュルキュル」というセルモーターの作動音が聞こえるはず。しかし、バッテリーが上がっているとセルモーターが動かない。キーをひねっても、あるいはスタートボタンを押してもエンジンがかからず、「キュルキュル」という音が聞こえないならバッテリー上がりの可能性が高い。
また、バッテリー性能が弱っている状態でも予兆が現れることがある。「キュル……キュル」とセルモーターの作動音が通常よりゆっくり鳴ったら性能低下のサイン。仮にエンジンがかかったとしても安心しないように。バッテリーを交換するなど、事前に対処するのが無難だ。
なお、ハイブリッド車にはスタートボタンを押してもエンジンのかからない「EVモード」で起動することがあるため、セルモーターの音が聞こえないからといって、バッテリー上がりとは判断できない。電気自動車の場合も同様なので要注意だ。
バッテリーが正常な状態ならエンジンをかけなくても、ヘッドライトなどのランプ類を点灯することができる。逆にバッテリー上がりを起こしていると「ランプ類が極端に暗い」あるいは「点灯しない」といった症状が現れる。
車のエアコンやパワーウインドウはすべて電気で動いているので、バッテリーが上がると動作しなくなる。また、「エアコンの風量がいつもより弱い」「窓が上下する速度が遅い」といった症状が現れたら、バッテリー性能が低下している兆候だ。
車種によってはメーター内に「バッテリー警告灯」を装備。これが点灯したら、バッテリーに何らかのトラブルが起きていることを示している。バッテリーに充電するためのオルターネーターや配線のトラブルで警告灯がつくこともあるが、当然バッテリー本体の性能低下でも点灯する。
もちろん、これらの症状が現れたとしてもオルタネーター(発電機)や電装品の故障である可能性もあるが、バッテリー上がりにいち早く気づくヒントになるはずだ。
バッテリー上がりの対処法・直し方
バッテリーが上がってしまったら、速やかに対処することがダメージを最小限に抑えるコツ。バッテリー上がりの対処法は主に5つある。
- 【対処法1】ロードサービスを呼ぶ
- 【対処法2】ジャンピングスタートを試みる
- 【対処法3】ジャンプスターターを使う
- 【対処法4】バッテリー本体を取り出して充電する
- 【対処法5】新しいバッテリーに交換する
基本的には、ロードサービスを呼ぶことがオススメ。加入しているJAFや保険のロードサービスに救援を求めるのが最も手間がかからない。入会金や年会費が必要なこと、サービスに加入していないと費用が発生してしまうが、プロに任せられるので最も安心できる。応急始動作業を行ってくれるだけでなく、バッテリーの状態もチェックしてくれるのもポイントだ。
逆に、車に詳しい人ならジャンピングスタートやジャンプスターターを選ぶのも手。悪天候やへき地にいてロードサービスを頼れない状況でも、自力でエンジンをかけられる可能性がある。もちろん、対応アイテムを持っていること、ジャンピングスタートなら救援してくれそうな車が近くにいることが前提条件だ。
そして上記を試してエンジンがかからなかった場合は、バッテリーの取り外し充電か、新品への交換を検討しよう。前回のバッテリー交換から2年以内なら取り外し充電でも復旧する可能性がある。一方で、2年以上なら潔くバッテリーを交換するのが妥当だ。
【対処法1】ロードサービスを呼ぶ
現地からロードサービスに電話をかけ、ロードサービスに救援を依頼する。到着までに要する時間はトラブルが発生した場所や道路状況などによって異なる。大雪など気象条件などによってはロードサービスを利用できなかったり、到着までに長時間がかかったりする場合もある。ただ、30分~1時間程度で駆けつけてくれるケースが多い。
トラブル発生に備えて、普段からロードサービスの連絡先を控えておくと良いだろう。なお、各サービスの利用料金は以下のとおりだ。
バッテリー交換とレッカーが不要の場合、加入者なら費用は無料。利用回数の制限もない。対して非加入者は有料で1回の応急始動作業につき1万3130円~。発生した場所や時間帯によって追加料金も発生する。JAFは入会金が2000円、年会費が4000円なので、その場で入会した方が費用面ではお得だ。
加入している自動車保険でロードアシスタント特約を付帯している場合に利用できる。バッテリー上がりの場合は、ほとんどの保険会社では無料(バッテリー交換不要・レッカー不要の場合)。利用しても等級への影響もない。ただ、1年間に無料利用できる回数が限られている場合があるので、保険規約を確認しておこう。
民間のロードサービスは、会員になっていなくても利用可能。費用はサービスによって異なるが、おおむね9000円~3万円程度が相場となっている(バッテリー交換不要・レッカー不要の場合)。
【対処法2】ジャンピングスタートを試みる
ブースターケーブル(ジャンプコード)を持っているなら、「ジャンピングスタート」で他車に救援を求めることができる。ブースターケーブルはバッテリー上がり専用のアイテム。先端がクリップになっている赤と黒のケーブルで、カー用品店などで数千円から1万円程度で購入できる。肝心のジャンピングスタートとは、バッテリーの電気を他車から分けてもらい、自車のエンジンを始動することだ。具体的な手順は以下のとおりだ。
自分の車と同じ電圧(軽自動車、乗用車の多くは12V、トラックなど商用車の多くは24V)の車を見つけ、救援を求める。バッテリーが上がった自車と救援車のバッテリー位置を確認し、ブースターケーブルが届く位置に救援車を止めてもらう。
ハイブリッド車と電気自動車でも他車から救援してもらうことはできるが、両車を救援車とすることはNG。駆動用バッテリーの大電流が他車に流れてしまう危険があるため、ハイブリッド車と電気自動車を救援車として使うことができない。
両車のボンネットを開け、アクセサリー電源をオフにした状態で自車と救援車のバッテリーをブースターケーブルで接続する。つなぐ順番は下記のとおり。つなぐ端子のプラスマイナスを間違えたり、ケーブルのクリップをボディなどに接触させたりするとショートする危険があるので要注意だ。
(1)赤いケーブルの一方を自車のプラス端子に接続
(2)赤いケーブルのもう一方を救援車のプラス端子に接続
(3)黒いケーブルの一方を救援車のマイナス端子に接続
(4)黒いケーブルのもう一方を自車のマイナス端子、またはエンジンフックなど露出した金属面に接続
ケーブルをつないだままの状態で5分程度待ち、自車のバッテリーを充電。その後、救援車のエンジンをかけ、回転数を高め(1500~2000回転程度が目安)に保った状態で、自車のエンジン始動を試みる。
車が誤発進しないよう、AT車の場合はPに、MT車の場合はNにシフトしてサイドブレーキを引いておこう。無事にエンジンがかかったら、上記と逆の手順でブースターケーブルを取り外す。
【対処法3】ジャンプスターターを使う
ジャンプスターターとは、持ち運びできるエンジン始動用のモバイルバッテリー。近くに救援車がいなくても、ジャンピングスタートできる便利な製品だ。
ジャンプスターターを購入する際は、自車のバッテリーと同じ電圧、エンジン始動に十分足りる電流値(A)を備えた製品を選ぶこと。軽自動車なら300A、普通車なら400~700A、大排気量車なら800A以上が一般的な目安だ。価格は3000円~3万円程度。最大電流値やメーカーによってマチマチだ。
使い方は、上記ジャンピングスタートと同じ要領でバッテリーのプラス・マイナス端子それぞれに「ジャンプスターター」をつなぎ、エンジン始動を試みるだけ。万が一のバッテリー上がりに備えて、用意しておいても損はないはず。ただ、いざというときに備えて常に充電しておかなければならないのが弱点だ。
【対処法4】バッテリー本体を取り出して充電する
上記のいずれも方法も利用できないなら、バッテリー単体を取り外して整備工場やガソリンスタンドなどに運び、充電してもらう……という手段もある。
バッテリー充電にかかる費用は店舗によって異なるが、おおむね数千円程度。費用は安くて済むが、バッテリーを自分で取り外して運び、再度装着する手間がかかる。また、バッテリー自体が完全に寿命を迎えていたら、せっかく充電しても無駄骨になることがネックだ。
なお、整備工場によっては30分程度で充電できる「急速充電」を行ってくれるところもある。ただ、この方法はバッテリー寿命を縮めてしまう。事情がある場合を除けば、約12時間程度かけてゆっくり充電する「普通充電」がベターだろう。
【対処法5】新しいバッテリーに交換する
ジャンピングスタートしてもエンジン始動できなかった場合、充電しても回復しない場合、前回バッテリーを交換してから相応の年月が経っている場合には新品のバッテリーに交換しよう。
バッテリーを自分で交換するのも手だが、最近では新品のバッテリーを届けて交換してくれる便利な出張サービスもある。インターネットの検索エンジンで「バッテリー 交換 出張」などと入力すれば、複数の業者を見つけられるだろう。
バッテリーの費用はバッテリーサイズやメーカーによって異なるが、一般的なもので5000円~2万円程度が相場。高性能なものや、アイドリングストップ機能搭載車専用バッテリーなどでは2万~5万円ほどする製品もある。
バッテリー交換時期の目安は、一般的なバッテリーの場合で約2年。高性能バッテリーの場合でも約3年といわれている。相応の年月にわたって使用しているなら、たとえエンジンを始動できたとしても不安が残るため、思い切って新品に交換する方が得策だろう。
交換するバッテリーを選ぶときは型式をチェック。バッテリー型式の規格は車によって異なるからだ。
大別すると「通常車(JIS規格)」「ハイブリッド車」「アイドリングストップ車」「EN規格」の4タイプに分けられる。なかなかに複雑なので、迷ってしまうようならカー用品店や整備工場のスタッフに相談しよう。
■通常車(JIS規格)・型式表記の見方
(1)40=性能ランク
(2)B=バッテリー本体の短い側面のサイズを表す指数
(3)19=バッテリーの長さ(cm)
(4)R=プラスマイナス端子の位置
■ハイブリッド車・型式表記の見方
(1)S=ハイブリッド車専用の制御弁式バッテリーであることを表す記号
(2)34=性能ランク
(3)B=バッテリー本体の短い側面のサイズを表す指数
(4)20=バッテリーの長さ(cm)
(5)R=プラスマイナス端子の位置
■アイドリングストップ車・型式表記の見方
(1)M=バッテリーのサイズを表す指数
(2)65=性能ランク
(3)R=プラスマイナス端子の位置(Lの場合は表記なし)
■EN規格搭載車・型式表記の見方
(1)355=性能ランク(参考値、表記なしの場合もある)
(2)LN1=サイズを表す指数
性能ランクやサイズを表す指数は規格ごとにルールが異なり、純正と異なる規格の製品は付けられない。いずれの規格でも、バッテリーのサイズを表す指数や長さ、プラスマイナス端子の位置は純正と同じものを選ぶこと。性能ランクは純正以上の数値であればOKだ。
「バッテリー寿命を延ばしたい」「電力に余裕を持たせたい」といった場合は、性能ランクの数値が大きなものを選ぼう。
バッテリー上がり復旧時の注意点・やってはいけないこと
バッテリー上がり復旧時に特に注意したいのは、ハイブリッド車や電気自動車の場合だ。
両車には駆動用バッテリーと補器バッテリーがある。まず駆動用のバッテリーは自身での対処は不可能。ディーラーや整備工場に修理交換を依頼する。
一方で、補器バッテリーはガソリン/ディーゼル車と同様に対処できる。ただ、格納場所が車種によって異なるなど一筋縄ではいかない部分もあるので、よく分からなかった場合は迷わずJAFなどプロに依頼しよう。
また、ジャンピングスタートやジャンプスターターの利用、バッテリーの充電で1~2度試して始動できないようなら、自力での復旧は難しい。セルモーターを回すには大量の電力を必要とするため、何度も試すとバッテリーに大きな負担をかけ、かえって寿命を短くしてしまうので要注意だ。
ロードサービスを呼んだ場合でも、自身でジャンピングスタートを行った場合でも、一度エンジンがかかったら、すぐに止めるのはNG。まだ十分に電圧が回復していないからだ。すぐにエンジンを止めてしまうと再始動できなくなる恐れがあるため、しばらく走行してバッテリーを充電しよう。走行時間は1時間程度が目安だ。
また、一度上がってしまったバッテリーはたとえ新品の場合でも性能が著しく低下する。できるだけ早く整備工場などでチェックしてもらおう。万が一、路上などで再始動できなくなったら大変危険。一度エンジンがかかったら、そのまま整備工場に直行するのがオススメだ。
バッテリー上がりの原因
バッテリー上がりの原因は「うっかりミス」によるものと、そうでないものが考えられる。
・ヘッドライトやハザードランプなどのランプ類をつけっぱなしにしたままエンジンを切っていた
・エンジンをかけずに、ナビやエアコンなどの電装品を長時間利用していた
・長期間車を放置し、エンジンをかけなかった
・バッテリー自体が製品寿命を迎えた
・ドライブレコーダーの駐車監視機能が何らかの理由で長時間作動したままだった
電装品をすべてオフにしていたとしても、車には時計やドアロックなど常時電気が流れている電装品があるため、少しずつバッテリーの電力は減っていく。バッテリー自体の自然放電もあるため、エンジンを長期間かけないだけでバッテリーは上がってしまう。その目安は、気温などの条件にもよるが1ヵ月程度といわれている。
また、短時間のドライブを繰り返すこともバッテリーには悪影響。電力を消費するだけで充電が追いつかないからだ。
バッテリー上がりの予防策
バッテリーは消耗品であるため、バッテリー上がりを完全に防ぐことは難しい。しかし、普段から気をつけることで寿命を延ばしたり、トラブルを減らしたりすることは可能。例えば以下のような対策が有効だ。
車を降りるときに、ランプがついていないか必ず確認。半ドアによる室内灯点灯にも注意を払おう。自信のない人は「ライト消し忘れ防止機能」付きの車種を選ぶのもアリだ。
そもそもバッテリーのチェックは日常点検項目のひとつ。最低でも1ヵ月に一度はボンネットを開け、バッテリー本体に損傷がないか、端子からサビが出ていないか確かめる。
一般的なバッテリーは充電によって内部の液体が徐々に減っていくので、本体を外から見て内部の液面が適正な範囲内にあるかも調べる。液が最低液面線より減っているセル(分割された個々の部屋)があれば、本体上部のキャップを開け、カー用品店などに売っているバッテリー補充液を注ぎ足す。バッテリーによっては液の状態が正常かどうかを示すインジケーターが付いているので、併せて確認すると良い。
一方で、メンテナンスフリー・バッテリーの場合、液補充はできないので、プロにチェックを依頼しよう。また、整備工場などに行けば、バッテリーテスターで本格的な状態チェック&メンテナンスをしてくれる。定期的に見てもらえば、バッテリー劣化の早期発見につながるだろう。
前回の交換時期を確認し、相応の年月が経っていたら早めに新品へと交換してしまうのも一案。トラブル発生を未然に防げる。
走行頻度が少ない場合は充電が不十分で、バッテリーが上がってしまう恐れがある。車を使う必要がなくても1ヵ月に1度程度はエンジンをかけ、バッテリーを充電しておこう。
バッテリー上がりに関するQ&A
Q.バッテリー液が不足したまま使い続けたら、どうなる?
A.バッテリー液量が少ないと、バッテリーの劣化が進む。さらに、バッテリー内部にたまっているガスに引火して爆発事故を起こすリスクもある。液面が低くなっていたら速やかに補充しよう。
Q.バッテリーの寿命を延ばす方法は?
A.バッテリーのケアを怠らないことが、バッテリーの寿命を延ばすコツ。「バッテリーの状態を頻繁にチェックし、必要なら液を補充、整備工場などで充電する」「長期間乗らない場合はときどきエンジンをかける」といったバッテリー上がり予防策の徹底が、バッテリーを長持ちさせるポイントでもある。
Q.バッテリー上がりは寒いと起こりやすいって本当?
A.外気温が低いとバッテリー内部の化学反応が鈍くなり、バッテリー上がりを起こしやすくなる。実際バッテリー上がりでのロードサービス出動件数も冬に増える。そうはいっても、夏もエアコンなどの利用によって電力消費が増えるので、バッテリー上がりを誘発しやすい。季節を問わず、油断しないことが大切だ。
Q.中古車で買った場合、バッテリーは大丈夫?
A. バッテリーを交換するかは販売店によって異なるが、走行に問題があるようであれば納車時に交換しておいてくれるのが一般的。そういう意味では中古車でも問題ない。しかし、バッテリーは消耗品なので、いつバッテリーを交換したのかは把握しておきたい。中古車販売店や整備工場などに聞くか、整備手帳あるいはエンジンルーム内に貼られた交換日時のステッカーをチェックしよう。結果、交換から2年以上が経過しているなら、早めに新品へ交換すると安心だ。
※記事内の情報は2023年3月2日時点のものです。
自動車ライター
田端邦彦
自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。