スーパーGT▲3月4日に鈴鹿サーキットで開催されたモータースポーツファン感謝デーのスーパーGTプレシーズンマッチのスタート風景。2023年シーズン開幕に向けて、15台のGT500によるデモレースが行われた

日本で最も人気のあるレース、スーパーGTがまもなく開幕

4月15、16日に岡山国際サーキットで2023年シーズンのスーパーGTが開幕する。それに先駆け、開幕前に岡山国際サーキットで公式テストが行われるのだが、そのエントリーリストから今シーズンのマシンの顔ぶれを見てみたいと思う。

公式テストの参加リストを見ると、GT500クラス15台、GT300クラス27台がエントリーしている。

トップカテゴリーとなるGT500クラスは、共通のモノコックを使用し、駆動方式はFR、エンジンは2L 4気筒ターボといったレギュレーションが定められており、中身はフォーミュラカーともいえる完全なレーシングカーだ。参戦車の内訳はトヨタ GRスープラが6台、日産 フェアレディZが4台、ホンダ NSXが5台。ちなみに、市販車の生産が終了したNSXは今シーズンがラストランとなり、来年からはシビックタイプRをベースとしたGT500マシンが投入される予定となっている。
 

ホンダNSX▲2022年シーズンのGT500に参戦したNSXで最も好成績を収めたSTANLEY NSX-GT。2023年シーズンにもエントリーしており、NSXでのラストイヤーに有終の美を飾れるか注目だ

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ホンダ シビックタイプR▲ホンダが2024年シーズンから投入を予定しているマシンはシビックタイプR。写真はホンダ・レーシングが開発中のコンセプトモデル

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一方、GT300クラスには3つの車両規定に沿ったマシンが混在している。

まずはJAF-GTとも呼ばれ、チームごとに独自に製作されたマシン。本来GT300クラスはこの規定にのっとった車両で競われるカテゴリーだった。しかし、マシンの開発には技術も資金も必要なため、エントラントが年々減少することになり、いまではFIA GT3などでの参戦も認められるようになったというわけだ。

今シーズンのGT300マシンは、「スバル BRZ」や、新たに投入されるレクサス LC500hをベースとした「LC500h GT」、「GRスープラ」などが見られる。これらは日本のものづくりの技術を継承していくためにも、重要なカテゴリーであると言われている。
 

スバル BRZ▲昨年に引き続き、GT300に参戦するスバル BRZ。最終戦で破れ、2連覇を阻止されたが、今年はチャンピオン奪回を目指す。写真は富士スピードウェイでシェイクダウンした2023年モデル

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そして世界的に主流なのが「FIA-GT3」。国際自動車連盟の主導の規格により自動車メーカー自らが販売するレースカーだ。一般ドライバーでも購入が可能で、専用グレードを買えばそのままレースに参戦できる。世界中にマーケットがあるため転売もしやすいという手軽さもあって、GT300でも大勢を占める。

FIA-GT3マシンは、改造が厳しく制限されており、指定パーツの交換程度しかできないため、レースを通じて開発力や技術力を磨きたいチームにとっては物足りないという側面もある。しかし、今回のエントリーリストを見ると、ほとんどがこのFIA-GT3マシンだ。

中でも最も多い5台がエントリーするのが、日産 GT-R NISMO。国産メーカーでは、レクサス RC Fとホンダ NSXも参戦している。輸入車ではアウディ R8、メルセデスAMG GT、BMW M4、ランボルギーニ ウラカンといった顔ぶれが揃っている。
 

日産 GT-R▲GT300に参戦する車両の多くが、メーカーが販売するFIA-GT3マシン。中でもエントリー台数が多いのが日産 GT-R NISMOだ

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メルセデスAMG GT▲2023年シーズンの輸入車勢では、3台のメルセデスAMG GTが参戦予定となっている

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最後の一つが「GT300MC(マザーシャシー)」。車両を独自開発したいが、コスト的にGT300は難しい。しかし、FIA GT3では物足りないというチームに対して、共通のシャシー、エンジン、トランスミッションを用意し、チームが独自のサスペンションやボディを組み合わせて作り上げたマシンのことだ。近年、この規定に沿ったマシンは減少しており、今シーズンはTEAM MACHのトヨタ 86のみがエントリーしている。

このように、車両規定もボディサイズもエンジン排気量も駆動方式も異なるGT300の性能差を均一化するために「BoP (Balance of Performance)」という制度が導入されている。具体的にはオモリを積むことで車両重量を増したり、エアリストリクター径を絞ることでエンジン出力を抑えるなどの性能調整を図るものだ。これによって毎戦どのマシンが勝つかわからないハラハラドキドキの展開が生まれている。

さらに、レースの世界でも今やカーボンニュートラルは大きな課題だ。スーパーGTでは、2030年までにCO2排出量半減を目指した環境対応ロードマップ「SUPER GT Green Project 2030」を発表。今シーズンから、GT500/300の全車両でカーボンニュートラルフューエル(バイオマス由来の非化石燃料)を導入する。さらに持ち込みタイヤセット数の削減もスタートさせるという。

4月の岡山国際サーキットを皮切りに、富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、スポーツランド菅生、オートポリス、モビリティリゾートもてぎと、日本各地のサーキットで今シーズンも全8戦が行われる。それぞれのGTマシンはカーボンニュートラルフューエルで、どんなエグゾーストノートを放ち、どんなレース展開を見せてくれるのか、ぜひ現場で確かめてみたい。
 

文/藤野太一、写真/スバル、日産自動車、ホンダ、ホンダモビリティランド、メルセデス・ベンツ