日産 サファリ

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?

心地よい海風の向こうから、白いサファリがやって来た

千葉・九十九里でも屈指のサーフポイント、東浪見海岸の程近くに、グランピングやキャンプが楽しめるオーシャンズキャンプトラミ一宮はある。

西海岸フレーバーのリラクシングな海風の中、ゆっくりとやって来た白いSUVは……さてなんだろう?

日産 サファリ

「日産 サファリです。ここに来たお客さんにも『ランクルじゃないですよね?』『アメ車ですか?』なんてよく聞かれるんですよ」

運転席からにこやかに教えてくれたのは、トラミ一宮で働く小竹大成さん。半年ほど前、当時乗っていたエクストレイルの車検とエアコンの故障を機に、中古で購入したそうだ。

日産 サファリ

車選びの条件は、乗り出し100万円以下の国産車で、なによりこのキャンプ場の雰囲気に似合うこと。

もちろんそれに加えて、備品の買い出しなど、ここでの仕事ができる十分な積載量なども必要だ。あちこち探した小竹さんは、この1996年式のサファリを見つけた。

「今どきの近未来的な車よりも、四角い、ちょっと古い車が好きなので、これだなと。車に限らず、古いもの、使われてきた時間が感じられるものが好きなんです」

そう話す小竹さんは、「letters」というリメイクブランドも手がけている。

古着のデニムやコーデュロイを解体して組み合わせ、新たなデザインを与えて再構築した商品は、いわばそれぞれの素材が使われてきた歴史の集合体で、なんとも言えない温かみがある。

日産 サファリ▲古着のデニムをリメイクしたキャップやポーチなど、様々なアイテムが展開されている

「letters」の立ち上げは、小竹さん自身が履き古したデニムを、子供の頃お世話になった近所の高齢の縫い子さんの手を借りてサーフボードケースに仕立て直したのがきっかけだった。

そう聞いて、なるほど1996年式のサファリがしっくりくるわけだと合点がいった。

作り、使い、直してきた人の手と時間をいとおしく思う小竹さんのまなざしが、このちょっと古いSUVに新たな価値を与え、ここトラミ一宮に引き合わせた。そしてサファリは、長年ここで使われているかのようによくなじみ、このキャンプ場の心地よい雰囲気づくりに一役買っている。

日産 サファリ

小竹さんがトラミ一宮を立ち上げて今年で4年目になる。

立ち上げから間もなくの2019年には台風被害というシャレにならない打撃も受けながら、やっと軌道に乗ってきた。「letters」にもキャンプ用品がラインナップするという、相乗効果も見せている。

「やっぱりここでなければ出会えないような、いろいろなバックグラウンドを持ったお客さんたちに出会えるのがこの仕事の魅力です。話す時間もたっぷりあるし、広い空の下で時間がゆっくり流れています。初めはキャンプの知識も乏しくて、お客さんから質問いただくと慌てたりもしましたが (笑)」

日産 サファリ

この車で、奥さんと小さな子供たちと暮らす自宅から毎日通勤する。うまく時間が空けばサーフボードを抱えて目の前の海に向かうこともあるが、今は何より家族との時間を大切にしたいと思うようになったそうだ。

最近変わったことといえばもうひとつ、頼れる仕事の足でありながらひょうひょうとした雰囲気のサファリに乗るようになってから、めっきりスピードを出さなくなった。

「いつかキャンプ道具積んで、家族でのんびりサーフトリップに出かけたいですね」

日産 サファリ▲初代サファリは荷室容量も申し分なく、家族でのキャンプも楽しむことができる

小竹さんはまぶしそうに空を眺めてから、「あ、でも、ここ以上にサーフ&キャンプにぴったりな場所もちょっとないかな」と、ごきげんに笑った。

文/竹井あきら、写真/篠原晃一

日産 サファリ

小竹大成さんのマイカーレビュー

日産 サファリ(初代)

●購入金額/秘密
●年間走行距離/約1万km
●マイカーの好きなところ/人とかぶらないところ
●マイカーの愛すべきダメなところ/ディーゼルなので、エンジン音が気になるところ。特に停車時は……(笑)
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/荷物をたくさん乗せたい方や、悪路を走られる方

竹井あきら

自動車ライター

竹井あきら

自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してから次期愛車を物色しつつ、近年は1馬力(乗馬)に夢中。