「今は4座も“屋根”も必要ありません」肩の力を抜いて選んだのはアバルト 124スパイダー
2021/08/07

車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
初めて惚れた車はスーパージェッター流星号
人生で最初に惚れた車は「流星号」。1960年代にTBS系列で放映されていたSFアニメ『スーパージェッター』で主人公が乗っていた、流線型のエアカー型タイムマシンだ。
その後もNET(現・テレビ朝日)系列で放映された特撮ドラマ『スパイキャッチャーJ3』に登場した「空も飛べる2代目シボレー コルベット」などの「流線型の車」にひたすら憧れた山下 一少年が、自動車の運転免許を取得する年齢になって「山下 一さん」になると、当然の道理として「スポーティな車」を購入することになった。
最初は、自営業を営む父が買ったマツダ コスモ APの運転手としてロータリーエンジンの魅力を味わい、次に、自分のお金でU11型(7代目)日産 ブルーバードのSSSターボを購入。スピードそのものや旅行、当時の彼女とのあれこれなどを、ひとりの青年として堪能した。
そんな山下さんも結婚し、家族ができると車の嗜好――というか選択の仕方も若干変わり、初代ボルボ V70やフォルクスワーゲン ゴルフ ヴァリアントといったステーションワゴンに家族全員で乗り込み、あちこちへと移動することになる。
だが時がたてば再び、家族構成というか関係性は変化する。
成長した息子さんが運転免許を取得し、ゴルフ ヴァリアントを見事に(?)ぶつけて壊すことができるようになった頃、山下さんはいよいよ「流線型のスポーツカー」を手に入れることになった。認定中古車の997型ポルシェ 911カレラである。
「やはり911は素晴らしい車でしたね。完成度がこれでもか! というほど高い車でした」
そしてその後、新車の991型カレラへと乗り替え、いよいよ「この素晴らしいスポーツカーに長く乗りたい!」と思った山下さんだったが、なぜか今、ドイツ製のポルシェ 911ではなく、イタリア製の2シーターオープンに乗っている。
2018年式のアバルト 124スパイダーだ。
……端的に言って、なぜなのか?

「先ほども申しましたとおりポルシェ 911は本当に素晴らしい完成度で、本当に最高の車だと思ったのですが……あれは『300km/h近いスピードで走るための車』なんですよね。その速度域に合わせた作りがされていますし、メンテナンスにしても、300km/hで巡航できるコンディションを維持するための整備が必要な車です」
それはそれで本当に素晴らしいが、サーキット以外で300km/hなど出すことができないここ日本では、もう少しカジュアルなというか、身の丈に合ったというか、とにかくそういったニュアンスの車に乗るべきなのではないか? と考えたことが、ポルシェ 911を降りるきっかけとなった。
「子供たちはすでに独立し、妻と2頭の犬たちと暮らす毎日。だから車は2人乗りでいい……。で、考えてみると自分はオープンカーというものに乗ったことがないし、イタリアの車にも乗ったことがない。ならば次は『イタリアのオープンカー』がいいんじゃないか……と思っていた矢先に出合ったのが、アバルト 124スパイダーでした」
屋根のない生活は「最高」だった
アバルト 124スパイダーは、現行型マツダ ロードスターの骨格をベースに、アバルト独自のデザインとパワートレインなどをプラスして誕生した2座式のオープンカーだ。
「屋根を開けて試乗してみたときに、衝撃を受けたんですよ。『……こ、この素晴らしさはいったい何なんだ?』と」
オートバイも嗜む山下さんだが、「ヘルメットをかぶって走ることになるオートバイともまた大きく違う快感が、シートベルトをしているとはいえ、むき出しの上半身をさらしながら走るオープンカーにはあるんです」と言う。
そして、アバルト 124スパイダーという車のモダンでありながらも古典的な部分、つまりはロングノーズ&ショートデッキのフォルムと、比較的ドッカンな(フラットトルク型ではない)ターボエンジン。そして、伝統的なFRレイアウトによる「飛ぶような、あるいは跳ねるような曲がり方」も、本当に楽しいのだという。

▲ベースは国産(マツダ ロードスター)なのに、エンジンはイタリア製というのも、この車のお気に入りポイントだという以来、ポルシェ 911と比べれば性能的には劣るオープンカーにずっぽりハマった山下さんは、どこへ行くにもアバルト 124スパイダーと一緒――という状態になった。時に独りで、時に妻の和子さんを乗せて、また時には愛犬のルークくんまたはチョコくんを乗せて。
「アバルト 124スパイダーはいわゆるスポーツカーですが、特に飛ばすわけではないんです。屋根を開けて、ただただ走るだけで――心の中にある雑念のようなものが消えていきますし、自然を五感で感じることができます。山の中とかを走れば当然気持ちいいですが、夏の夜に都心部をぐるっと走るだけでも楽しいものですよ。街の風景が移り変わっていく様を、観察したりしながらね」
そうして特に意味も目的地もないままオープン状態で、なおかつ法定速度の範囲内で走るだけで、帰宅する頃には「いつの間にか気持ちがすっきりし、様々なことが整理できている自分に気づく」のだという。
ポルシェ 911のように300km/hは出ないし、出すつもりもない。
でも、それとはまた違う魅力を「オープンカー」の中に見いだした山下さんは、最低でもあと10年は――つまり72歳になるまでは――アバルト 124スパイダーに乗り続けるつもりだ。


山下 一さんのマイカーレビュー
アバルト 124スパイダー(初代)
●購入金額/約425万円
●年間走行距離/約4000km
●マイカーの好きなところ/軽量軽快、程よいパワーとハンドリング
●マイカーの愛すべきダメなところ/ヘリテージデザイン! モダンな現代では古くさいかも
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/旅が好きで、オープンエアドライブに憧れのある方々

自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。
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