日産 スカイライン

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?

1枚のカタログ写真からテストドライバーに

高橋さんの半生は常に「スカイライン」とともにあったという。

「高校生の頃は車というより、エンジンに興味があったんです。だから大学を出て『世界一のエンジン』を作るホンダに就職するつもりでした。でも、バンド活動に夢中で受験に失敗しちゃいまして(笑)。それで予備校に通うことになったんですけど、そこで『スカイライン命』の奴と仲良くなったんです。いまにして思えばそれが人生の分かれ目でした」

当時発売されたばかりのR31型スカイラインに乗るその友人に高橋さんは大いに感化された。さらに決定的だったのは、R30型スカイライン(後期型)のカタログに掲載されていた1枚の写真を見たことだという。

それは、いまは無き日産自動車村山工場のテストコースのバンクをスカイラインの車内から撮影したものだった。ドライバーは「ミスタースカイライン」こと桜井真一郎。スピードメーターの針は時速180㎞を指し、スカイラインの優れた高速走行性能を無言のうちにアピールしていた。

「スピード感のあるビジュアルに圧倒されてしまったんです。僕もこの場所を走ってみたいと思いましたね」

その後、高橋さんは4年制大学の受験をやめ、自動車短大を出て日産自動車にテストドライバーとして入社した。担当は耐久性試験。憧れの村山のテストコースを走れることにはなったが、定められたプログラムに沿って1日で300㎞もの距離を試験走行しなければならないなど、業務内容は過酷なものだった。

「僕はとにかく運転が大好きだったので苦痛に感じることはなかったです。だって最新の車を存分に運転できるうえに、高度な運転技術も習得させてくれるんですから」
 

カーライフはあくまでアマチュアリズム

晴れて車の「プロ」になった高橋さんだったが、プライベートのカーライフは良い意味でのアマチュアリズムあふれるものだった。

人生最初の愛車は、友人から1000円で譲ってもらったボロボロのR30型スカライン。それ以来、なぜか高橋さんのもとには方々から格安で古いスカイラインが集まるようになった。何台ものR30型、R31型スカイラインを自らの手で修理して乗り継ぎ、現在は「お宝」として知られるR31型GTS-Rを所有する。これも会社の先輩から15万円で引き取ったものだ。

「後輪駆動でドッカンターボ。この『じゃじゃ馬』を手なずけることこそ、この時代のスカイラインの面白さであり、最大の魅力だと思います」

現在、高橋さんは数名の仲間と「スカイライン保存会」を結成しているという。行き場のなくなったR30、R31スカイラインを引き取り、高橋さんが自宅の庭で少しずつ整備して路上復帰させているのだ。エンジンのオーバーホールやボディの溶接作業、塗装作業まで庭でやってしまうというからさすがである。
 

日産 スカイライン▲R31型スカイラインの最強モデルが、87年に800台限定で生産されたGTS-R。乗りこなすのが難しいじゃじゃ馬っぷりが、高橋さんにはむしろ好ましいそう。
日産 スカイライン▲いわゆる「鉄仮面」の愛称で知られる後期型のR30型スカイライン。知人から安く譲ってもらったRSターボでジムカーナをやっていたこともあるという。

真逆のキャラクターで走るのもまた楽しい

さらに、高橋さんは並行して日産 リーフでレース活動も行う。EVレースでは単純なドライビングテクニックよりも、バッテリーのマネージメント能力が勝敗を分ける。その駆け引きが面白いのだという。

ピュアEVの他、燃料電池車やレンジエクステンダーEVといった電動自動車同士で争われる「全日本EV-GPシリーズ」(JEVRA)に参戦し、2018年にはシリーズチャンピオンも獲得した。

同じ日産の車でも旧式スカイラインとリーフでは対極ともいえるキャラクターだが、どちらも意のままにコントロールできたときに得られる快感に違いはないのかもしれない。高橋さんにとって車を運転するという行為はどこまでも「スポーツ」なのだ。
 

日産 リーフ▲サーキットでのレースと通勤という二足のわらじを履く日産 リーフ(初代)
日産 リーフ▲リーフも当然のごとく自前で手を入れている。サーキット走行時はワイドタイヤをやや角度を付けて履くことでコーナリング性能を高める。
文/佐藤旅宇、写真/柳田由人

日産 スカイライン

高橋勝之さんのマイカーレビュー

日産スカイライン GTS-R(R31型)

●年式/1987年式
●グレード/R31 GTS-R
●購入金額/15万円
●走行距離/240,000㎞
●マイカーの好きなところ/フェラーリより官能的なエキゾーストノート
●マイカーの愛すべきダメなところ/さすがに古いので電装系トラブルが増えました
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/走るために生まれた800台の限定車です、ぜひ元気に走らせることができる方に乗っていただきたい

ボルボ XC40

高橋勝之さんのマイカーレビュー

日産 リーフ(初代)

●年式/2017年式
●グレード/AZE0 30kwh
●購入金額/300万円ほど
●走行距離/25,000㎞
●マイカーの好きなところ/ガソリン代がかからない(定額カードのみ)
●マイカーの愛すべきダメなところ/バッテリーなくなるとうんともすんとも言わない(笑)
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/実はスポーツ走行がイケてるので走りを忘れた中高年の方に(笑)

佐藤旅宇

ライター

佐藤旅宇

オートバイ専門誌『MOTO NAVI』 、自転車専門誌『BICYCLE NAVI』の編集記者を経て2010年よりフリーライターとして独立。様々なジャンルの広告&メディアで節操なく活動中。現在の愛車はスズキ ジムニー(81年式)とスズキ グランドエスクードの他、バイク2台とたくさんの自転車。