▲歩道部分に大きく食い込んで曲がる車が多い、歩行者にとって危険な筆者自宅近くの三叉路。ガードレールなどを設置したいところだが、それって警察に言えばいいのか? それとも区道の管理者である区役所? ▲歩道部分に大きく食い込んで曲がる車が多い、歩行者にとって危険な筆者自宅近くの三叉路。ガードレールなどを設置したいところだが、それって警察に言えばいいのか? それとも区道の管理者である区役所?

「事故が起こってから動く」では遅いと思い……

あなたの周りにも「危ない道路」が結構あるのではないか? かく言う筆者の自宅近くにもそんな場所があり、割と真剣に身の危険を感じている。写真下の変則的な三叉路である。

▲一見ごく普通の、どこにでもあるような住宅街の中の三叉路なのだが…… ▲一見ごく普通の、どこにでもあるような住宅街の中の三叉路なのだが……

写真で見る限りは何の変哲もない「住宅街のとある道」という感じなのだが、幹線道路からの抜け道になっていて、この緩い左カーブを結構な数の車が、結構な勢いで通り抜けていく。もちろんそれだけなら、そう大した危険はないのだが、問題は「ほとんどの車が白線を大きくショートカットしてコーナーを抜けていく」ということだ。どんな感じか、具体的に写真で見てみよう。

▲筆者の独自調査によれば、ここを通過するドライバーの約7割が歩道部分を大きくまたいでいる ▲筆者の独自調査によれば、ここを通過するドライバーの約7割が歩道部分を大きくまたいでいる
▲まるでサーキットの縁石を踏んでコーナリングしていくF1パイロット…… ▲まるでサーキットの縁石を踏んでコーナリングしていくF1パイロット……

サーキットで縁石を踏んでいく最適なライン取りのように、歩道部分に大きく入り込んだ形で曲がっていくのだ。要するに写真下のようにノンビリ歩いていると……

▲駅がある方向からこのようにノンビリ歩いていると…… ▲駅がある方向からこのようにノンビリ歩いていると……

いきなり眼前に車が現れるわけである。健康な成人男性である筆者としては「危ないなぁ……」と思う程度で済むが、お年寄りや子供、飛ばしている自転車などにとっては本気で危険なシチュエーションであろう。

▲眼前にいきなり車が現れる。かなり飛ばしているドライバーも多い ▲眼前にいきなり車が現れる。かなり飛ばしているドライバーも多い

こういった危険箇所に何らかの対策を施したいと思った場合、筆者のような一市民はどこにどう話をつければ良いのか? よくわからなかったので、とりあえずは所轄の警察署に行ってみた。「○×町1-3-4付近がこれこれこういう状況であるため、可及的速やかにガードレール設置等の対策を検討願いたい」と、一住民として申し上げるためである。

▲とりあえずは地元の警察署に話を持って行ってみましたが…… ▲とりあえずは地元の警察署に話を持って行ってみましたが……

が、警察署では「門前払い」というわけではないのだが、さほど前向きな対応をされることはなかった。

 (受付にて)あの~
50代と思われる受付担当警察官(以下、警察官) ……なんでしょう?
 ○×町1-3-4付近の道路状況に問題があると思われるため、何らかの対策をしていただけないものかとご相談に伺った次第です。わたくしは○×町2丁目の住民で、谷山と申します
警察官 はぁ……ではお聞きしましょう……

受付のカウンター越しに「かくかくしかじかで」と、撮影した写真を交えて現在の状況を説明する。それなりに丁寧に対応してくれた受付担当氏ではあったが、結論として「警察がそこを取り締まることはできない」と。なぜならば、車道と歩道とを分ける白線が1本の場合は、そこを車両が越えることは違反ではなく、「白線2本」の場合に初めて違反になるからだ、と。なるほど、そう言われてみれば20年ほど前、教習所でそんなことを習った気もする。

しかしそれはそれとして、とにかく危険な状態であることは間違いないのだから、警察の方で何か対応してくれないものか? と重ねて問う。すると受付警察官氏は後ろを振り向き「規制係長! ちょっとお願いします!」と、担当部署の警察官を呼ぶ。「いやこの方がね、かくかくしかじかで……」と規制係長に説明する受付氏。人のことを親指でクイクイと指差しながら話すその姿は、率直に言って愉快なものではない。

規制係長氏にもう一度状況を説明する。しかし取り付く島がない。「これはねぇ区道だからねぇ、道路の管理者、つまり区役所に言ってもらうしかないんですよ」「ここで事故が起きたとかもないし」「あなたの他は誰もそんなこと言ってこないし」「だいたいねぇ、普通のドライバーは白線を越えないものですよ。うん、絶対越えない」

いや実際越えている車両が多いから今日ここに来ているのですが……と言っても、「もう話は終わった」的な顔をするばかり。しかしこの規制係長氏、「とにかく区役所に言ってもらうしかないんで、わたしから今、区役所道路管理課のWさんに電話してアナタの名前とご要望は伝えておきますから、とにかくWさんを訪ねてください」と言い、その場で区のW氏に電話をかけてはくれた。

▲警察ではどうにもならなかったため、道路の管理者である区の道路管理課を訪問 ▲警察ではどうにもならなかったため、道路の管理者である区の道路管理課を訪問

そして翌日、区役所道路管理課を訪ねた。対応してくれたのは、所轄署の規制係長氏が電話を入れたW氏と、平職員の方の合計2名。W氏らの手元にはすでに当該道路の詳細地図をプリントしたものがある。用意がいい。

 かくかくしかじかで、警察では「ウチでは何もできないから区役所に行け」と言われました
W氏 (苦笑しながら)や、決してそういうこともないのですが……。確かに区道ではありますが、こういった問題はあくまで区と警察で“協同”してコトを進めていくべきといいますか何といいますか……

W氏も公の立場にある人ゆえ「断言」ということはできない様子だが、「とにかく区役所に行け。ウチでは何もできない」という所轄署の意見が100%正しいわけでもなかったようだ。区役所にてW氏が話した内容は以下のとおりであった。

■「実は区としても生活道路の安全確保については今、鋭意進めている最中」「きっかけは2年ほど前に京都で起きた、大型トラックが歩行者の列に突っ込んだ悲惨な事件」
■「今回ご指摘いただいた場所については速やかに人員を派遣し、現場の状況を調査する」
■「そのうえで検討し、必要があると判断されれば、何らかの対策を打ちたい」
■「しかし“生活道路の安全確保”については今、駅前付近から順番に進めているので、あなたが指摘した場所が仮に要対策となっても、今すぐガードレールなどを設置できるわけではない」
■「ご指摘のエリアも、実は全体的な整備計画が進められている最中。ただ前述のとおり駅前付近が優先され、地域住民とのネゴもあるので、どうしても時間はかかってしまう。そこはご了解いただきたい」

もちろん「ご了解」である。今すぐ何らかの対策をしてくれるに越したことはないが、何事も順番である。自分の都合だけを優先していては公共というものが成り立たないのは自明ゆえ、ここは待つほかない。ちなみに、筆者が指摘した場所についての調査結果と今後の対応について途中経過を連絡してくれるとのことだったが、「まぁ“お役所仕事”だけに半年後ぐらいに連絡くれるのかな?」と思っていたら、「2週間以内にご連絡します」と。

さらにちなみに、やはり筆者のような一住民ではなく区議会議員がリクエストした方が、行政に反映されるまでのスピードは断然速くなるとのこと。それは何も「議員バッジがモノを言う」という話ではなく、4年に一度、公的な選挙で区民の信任を得た人が挙げるリクエストは“区民の総意”という扱いになるため、どうしても優先されるのだという。「議員もそうですが、行政では“件数”というのが非常に重要ですので、一個人よりも学校単位や地域単位でご要望を上げていただいた方が、より効果的かとは存じます」とのことであった。

果たして期限の「2週間」を待たずに約10日後、区役所W氏から筆者の携帯電話に連絡が入った。

「職員がご指摘の現場で数日間調査しましたところ、確かに多くの車両が白線を大きく越えて走行しており、歩行者にとっての危険は大であると判断いたしました。つきましては極力早急に当該箇所にゼブラゾーンを新規設置し、車両の進入を抑止したいと思います」

早急な調査と判断、痛み入ります。とにかく、日々生活しているなかで「ここはちょっと危ないだろう……」と思われる道路上のポイントについては、道路管理者に真摯かつ冷静に訴えかければそれなりの対応をしてくれることがわかった今回の出来事。

あなたの生活圏にもそういった場所があるならば、道路管理者に対して冷静かつ合理的にアピールしてみることをオススメしたい。その際は今回の筆者のように単身で乗り込むのではなく、もしも可能であれば「地元選出の議員を通じて働きかける」「学校や地域など、個人よりも大きな単位で働きかける」方が、おそらく話は早いだろう。

text/谷山 雪