▲ホンダのスーパースポーツカー、NSXの2代目がついに登場。2017年2月から販売が開始される。日本カー・オブ・ザ・イヤー2016-2017では特別賞を受賞しました ▲ホンダのスーパースポーツカー、NSXの2代目がついに登場。2017年2月から販売が開始される。日本カー・オブ・ザ・イヤー2016-2017では特別賞を受賞しました

ホンダのスーパースポーツカー、NSXがついにデビューする

ホンダは世界を見据えたスポーツカーを作ってきた。NSXが日本の高級スポーツカーをけん引してきたことに異論のある人はいないはずだ。今となっては当たり前だが、リアルスポーツカーにアルミ合金製の骨格を使った初代NSXは衝撃的だった。

今回試乗した2代目は、4年ほど前からスタイリングと骨格の予兆がチラチラと見て取れていた。四輪のトルクを自在に操る“SH-AWD”。加速と高速走行に有利な、軽量でコンパクトなハイブリッドシステム。先代から培われたミッドシップレイアウト。アルミ合金のスペースフレーム。そして個人的にはエンジンメーカーとも思えるホンダのスペシャリストが作ったエンジンユニット。すべてをどうやって取りまとめるかが鍵であった。

スタイリングは四輪をたくましく踏ん張らせたスーパースポーツカーらしいいでたちだ。繊細なフェンダーアーチの処理には高級感が漂っている。雰囲気でいうと、およそフェラーリ 458のディメンションだ。東名高速と箱根の山間部を試乗したのでその様子をお伝えしたい。

▲青空に映えるNSX。どの角度から見ても完成度が高い ▲青空に映えるNSX。どの角度から見ても完成度が高い

エンジンからハンドリングに至るまで、完成度の高さがドライブで感じられた

乗り込むとスーパースポーツカーらしく、ドライビングポジションがセンター寄りになっている。骨格が骨太な証拠だ。軽量なドアを閉めると、サイドミラーの柄の部分が長い。慣れない人には感覚が難しいかもしれないが、中央付近にポジションがある方が四方のディメンションを掴みやすい。スタートボタンを押すとV型6気筒3.5リッターツインターボに火が入る。低重心ユニットはエンジンが冷えた状態ということもありアイドリング回転数は高めだが、とてもいい音色だ。これだけでもすごみを感じる。

NSXはサーキット対応のスポーツカーということで、走行モードが4種類用意されている。一つは“QUIET”モード。エンジン回転を抑えるため住宅街に適していて、EV走行も可能だ。二つめは“SPORT”モードで、市街地から高速道路に適しているという。三つめは“SPORT+”モード。これはワインディングや山間部に適していてシフトスケジュールもスピーディでドライビングを楽しめるモードだ。そして四つめが、今回は使うシチュエーションがなかったが、“TRACK”モードだ。パフォーマンスを最大限に使った走行をするサーキット向けのモードである。

アコードや燃料電池車クラリティ同様のエレクトロニックセレクタースイッチをDにしてSPORTモードで発進する。電動パワーステアリング(EPS)は程よい重さと扱いやすさで取り回しもしやすい。全体的な見切りも良く、デザインとポジショニングの良好さを物語っている。高速道路で本線へ合流するために時速40キロから100キロまでの鋭い加速を試す。電光石火の加速とはこのことだ。恐らく後ろを走っていたカメラカーから見ると、一瞬で小さくなっていったに違いない。これがターボかと思うほどリニアなトルクで、しかも音色はバツグンだ。スーパースポーツカーでありながら、高速の静粛性と乗り心地は驚くほど良い。思わず遠くまで行きたくなる。無理のない追い越し加速とはこのような車のことを言うのである。

高速からワインディングが続く国道に入る。中速のコーナーではSPORTモードで十分である。コーナー出口でアクセルを踏めば素晴らしいロードホールディングで楽しい走りを体感できる。国道から有料道路のさらにツイスティーな山間部へと走る。ここでモードをSPORT+にしてみる。するとSPORTモードよりもステアリングにしっかり感が生まれ、さらにコーナリングに侵入する際の正確なアプローチが可能となる。トルクの出方がハイブリッドということを忘れてしまうほど、シフトに合わせたエンジンの一瞬の呼吸の音色が素晴らしい。さらに専用のサスペンションも素晴らしく、路面の凸凹も硬めにいなす。ストロークさせてもバンプによる姿勢変化は最小限にとどめた。サスペンションのアーム部分をできる限り長くした設計による恩恵だろう。ブレーキング時の姿勢も素晴らしい。つい怖さも失う強靭強力な制動力だ。ブレンボ製のカーボンセラミックブレーキは山間部の激しい加減速でも怯むことはない。信頼できるブレーキである。しばらくタイトな山間部での走りを楽しんだが、NSXが小型に感じるほどの鋭敏な動きがとても印象的だった。NSXが高級感よりもハンドリングにコストをかけたことはドライブすれば一層感じることができる。塗装や内装の質感はこれからさらに進化するであろう。日本人が考えたスーパースポーツカーとはまさにNSXである。

▲NSXのリアビュー。SH-AWDはミッドに積んだエンジンに1機、後輪部に2機のモーターを備えた4WDシステム。コーナリング時の左右輪のトルクを最適化し異次元のコーナリング性能を発揮する ▲NSXのリアビュー。SH-AWDはミッドに積んだエンジンに1機、後輪部に2機のモーターを備えた4WDシステム。コーナリング時の左右輪のトルクを最適化し異次元のコーナリング性能を発揮する
▲エンジンは507馬力を発生する3.5LV6ツインターボを搭載 ▲エンジンは507馬力を発生する3.5LV6ツインターボを搭載
▲細いAピラーや横に突き出たドアミラーなどにより、良好な視界を確保している ▲細いAピラーや横に突き出たドアミラーなどにより、良好な視界を確保している
▲高いホールド性と乗り降りのしやすさを追求したスポーツシートを採用 高いホールド性と乗り降りのしやすさを追求したスポーツシートを採用
【SPECIFICATIONS】

■グレード:- ■乗車定員:2名
■エンジン種類:V6直4DOHC+3モーター
■最高出力[kW(ps)/rpm]:373(507)/6500-7500
■最大トルク[N・m(kg-m)/rpm]:550(56.1)/2000-6000
■駆動方式:4WD ■トランスミッション:9速DCT
■全長x全幅x全高:4490×1940×1215(mm) ■ホイールベース:2630mm ■車両価格:2370万円

text/松本英雄
photo/尾形和美