日産 シルビア

あの車のデビュー当時を振り返る

創刊36年目(2020年1月現在)を迎えるカーセンサーが、過去の試乗記を発掘し、今あえて紹介していくシリーズ。

今回は、1991年2月発売のカーセンサー Vol.143の記事「NEW CAR SENSOR」よりS13型日産 シルビア/180SXが1991年1月にマイナーチェンジしたときの試乗レポートをWEB用に再構成してお届けする。

カーセンサー Vol.143 ▲今回は今から29年前に発行された、「カーセンサー Vol.143」より、日産シルビア/180SXの試乗レポートをピックアップ!

大幅に向上したトルク、ATとの相性も良い
日産 シルビア Q's

1月早々マイナーチェンジをしたシルビアのプレス向け試乗会が行われた。気になっている読者も多いだろうから、ここでは主として変更になったエンジンと足回りについての印象を中心にレポートしたい。

ま、とにかく試乗だ。1台目は売れ筋のQ'sのAT車。外観は写真のようにほぼ同じ。インテリアもシート地が変わったくらいで、あまり新しいという印象はない。

ところが、である。Dレンジにシフトしアクセルを踏むと、これがとんでもなく別の車みたいなのだった。何といっても元気。

カタログデータでは旧1800ccとのパワー差はたった5ps。したがってあまり期待していなかったのだけれど、実はトルクが10%も向上しているのだ。

特にATで発進加速時に使用する2000~3000回転のトルクは大幅アップ! 1800ccだと大きめにアクセルを開けないと期待通りの加速をしなかったが、今度のは余裕満点となっている。

街中で多用する4000回転くらいまでのパワー感も素晴らしい。従来はターボが欲しいな、と思えるような状況でも十分満足できる加速を得られるようになったのがウレシイ。

さらに高速巡航時もアクセルレスポンスがよくなり、スポーティな外観に似合うだけの性能を示す。実用燃費も1800ccより好データをマークするというから、エンジンの2リッター化は成功といえそう。

難点はレッドゾーンまできれいに回らないこと。レッド直前になると旧にエンジン振動が増えてしまうのだ。ATならあまり使わないと思うけれど、MT車だと気になるハズ。

足回りはソフト志向。どちらかというと乗り心地を重視しているようで、コーナーを攻めたときの初期ロール(ハンドルを切った直後にグラリとくる動き。こいつが大きいとドライバーに不安感を与える)が大きめ。

従来からQ'sは峠道を攻める、というより“ちょっとスポーティな味つけ”だったことを考えると、こんなものなのかもしれない。

日産 シルビア ▲新造形のリアスポイラーにはLEDハイマウントストップランプを内蔵
日産 シルビア ▲ATは電子制御の4速タイプ、本皮シフトノブはハイキャス仕様車に標準

スーパーハイキャスを装着、走りが楽しい!
日産 シルビア K's

2代目の試乗車はターボエンジンを搭載するK'sのMT車。こちらもググッとパワフルになった。しかもトンターボはトルクアップが主だったのに対し、ターボ仕様はパワーも30ps上がっており全域でワンランク上のパンチをもつ。

パワーウェイトレシオは5.7kg/psになり、スープラ2500ccツインターボの5.5kg/psに迫る。挨拶代わりにフルスロットル状態でクラッチをスパッとつないでみると、見事なホイールスピンが30mくらい続くではないの! こいつは本当にパワフルだ。

同時にターボラグも減少している。旧1800ccほど無理していないため、タービンも小型軽量タイプ。高速巡航から5速のままアクセルを踏んでも、瞬時にパワーが立ち上がり車速はグイグイ上がっていく。

高速道路では、280psエンジンを搭載するスープラやフェアレディZと遜色ない走り、といってもいいと思う。

ハンドリングはどうだろう? Q'sと違い、こちらは徹底的に追求している。最も進化したのが、コーナーの限界特性。

マイナー前のシルビアは、まだ日産の足回り技術が煮詰まっていない段階のもの。したがってウデのあるドライバーが攻めると、強いアンダーステアが顔を出してしまうことになる。かといってパワーでテールを流そうとすると、今度はコントロールが難しかった。

マイナー後は一気にスカイラインのレベルに近づいている。アンダーが出やすかったコーナーの進入も、スーパーハイキャスが採用されたため、入り口でハンドルを切るとノーズはクイックに向きを変えるようになった。

テールが流れた後の修正も自由自在。安全度が向上したのと同時に、ドライバーを楽しませてくれる味付けになっている。

コーナーの小さい峠道ではスカイラインより軽くて小さいため、シルビアのほうがキビキビ走りそう。やはり4気筒はそれなりの良さがある。

その代償は価格で、実に15.3万円もアップしてしまった。フルオプションにすると250万円を超えるのは非常に残念。

日産 シルビア ▲2Lになり大幅にスペックも向上、高回転まで一気に吹き上がる
日産 シルビア▲インパネは基本的に変更はなし、但しステアリングホイールは新デザイン
日産 シルビア ▲ヘッドレストが分割タイプに変更、ホールド性は変わらない
日産 シルビア ▲205/60 R 15 89H をK'sに標準装備。ブレーキもハイパワーに合わせ容量アップ
日産 シルビア ▲フォグランプもプロジェクター化された6連ランプはメーカーオプション

大幅に変更をうけたフロントマスク
日産 180SX

3代目の試乗車は同時にマイナーチェンジした180SXだ。外観はアメリカで試乗した91年モデルの240SXとまるで同じ。少しポルシェ風という評判だ。

こちらはフロントフェンダーから前を全部手直しするという大幅な変更となった。大人気のシルビアと違い180SXは国内での販売が伸び悩んでいるのが事実(シルビアが月4000台売っているのに対し、180SXは月1000台ペース)。そこで一気にイメージを変えようということなのだろう。

ただ基本的に180SXはアメリカのマーケット向け。アメリカで売れている三菱 エクリプスやフォード トーラスのスタイルが日本人に理解されないように、新型も個人的には好きになれない。

日産 180SX ▲シルビア同様マイナーチェンジを受けた180SX、フロントマスクはグリルレスとなりボリューム感のある仕上がりとなった

エンジンや足回りは基本的にシルビアK'sと同じ。この車はATだったので、主としてターボとATのマッチングを評価してみた。

1800cc時代と大きく変わったのは、やっぱりスタート時のパワーフィールだ。ATの場合、ターボエンジンはアクセルを踏んで一呼吸の間、全くターボ効果が期待できない(要するにノンターボと同じ)。

排気量が上がればその領域でのトルクが大きくなるため、しっかり加速感が向上するという寸法である。180SXはシルビアより重いので(MT車比で+40kg増)、より効果が表れるのではなかろうか。

通常の走行域でもトルクは大幅に上がっている。ATとはいえ、このくらいパワーがあればどんな状況でも強烈な走りを楽しめると思う。ただ峠道を攻めたいなら、やっぱりMTのほうが面白い。

日産 180SX ▲悪天候時、後方の車に自車位置を知らせるリアフォグランプは1万円高
日産 シルビア ▲4輪ABSは13.2万円高で全車にオプション設定される

車は良いが3年後のことも考えて買いたい

さて、マイナーチェンジしたシルビア&180SXをどう評価しよう?

車自体は強烈に良くなっているが、最大の問題はリセールバリューだと思う。これから買っても3年以内で新型が登場してしまう。

となれば、現在リセールバリューがいいシルビアも、プレリュードのように人気が下がっていくことが十分予想される。

特にターボ車は値上げの結果、スーパーハイキャスやスポイラーを付けるとスカイラインGTS-tタイプMに近いプライスとなってしまった(性能自体はスカイラインの方が高い)。となるとけっこう迷いそうだ。

そのうえ、今年後半にはプレリュードや、ミッドシップになるといわれるCR-Xも出てくる予定だ。

ということで、おすすめはQ'sのAT。これに好みのオプションをチョイスするのがいいかと思う。

日産 シルビア ▲マイナーチェンジされたシルビア&180SXには、最新鋭のオーディオシステムもオプションで設定されている。ホログラフィックサウンドDSPと呼ばれるシステムがそれで、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)を採用した最新鋭オーディオだ

シルビア(1990年1月マイナーチェンジモデル)
新車時価格帯:152.6万~249.6万円
中古車価格帯:99万~205.7万円
中古車流通量:32台



180SX(1991年1月マイナーチェンジモデル)
新車時価格帯:193.7万~259.9万円
中古車価格帯:90万~330万円
中古車流通量:23台



※上記は2020年1月14日現在のデータになります。

文/国沢光宏、写真/桜井健雄


※1991年2月発売のカーセンサー Vol.143の記事「NEW CAR SENSOR」をWEB用に再構成して掲載しております。