▲11年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたJeep ラングラー。公道に加えてオフロードでの試乗レポートもお届けする▲11年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたJeep ラングラー。公道に加えてオフロードでの試乗レポートもお届けする

パッと見は誰もが知ってるJeepだけど

ひとつのフィロソフィーのあるモノを半世紀以上継続的に作り続ける事は、とても難しく誰でもができることではない。

それをコツコツとやってのけている自動車メーカーのひとつに“Jeep”がある。

エンジニアリングから生まれた機能性の高いデザインでJeepの象徴的なモチーフとなっているフロントマスクは、ひと目でそれがJeepであると理解できる。

▲一目でJeepと分かる丸型のヘッドライト。デザインコンセプトは新型にも引き継がれている▲一見してそれと分かる丸型のヘッドライト。デザインコンセプトは新型にも引き継がれている

今回Jeepの中でもワイルドな1台である新型ラングラーを試乗できたのでお伝えしたい。

コースは日常では体感できないアップダウンの激しいオフロードと、都会では得られない田園風景が広がる一般道と僅かであるが高速道路も試してみた。

刷新したJeep ラングラーは一見すると先代と大きな変更がない雰囲気である。

タフなラングラーのイメージを変えない事を第一に考えてデザインし、見える部分よりも見えない部分に力を注いで通常の運動性能と走破性、快適性の向上を図ったモデルと言える。

では中身を刷新した結果どのようなラングラーへと進化したのか。
 

▲全長が160mm、ホイールベースも60mm長くなり、室内の居住性が格段に向上した▲全長が160mm、ホイールベースも60mm長くなり、室内の居住性が格段に向上した
▲先代より電子デバイスが増えているため、それにともなってスイッチ類が多くなった印象を受ける▲先代より電子デバイスが増えているため、それにともなってスイッチ類が多くなった印象を受ける

最初は一般道のテストである。

まずは3.6LのDOHCV型6気筒ユニットである。

トランスミッションが5速から8速へと変更された。

2トン以上ある車両を悠々と走らせるパワーユニットは、以前よりも静粛性が高い。

前後共に重量のあるリジットアクスル(両輪が車軸でつながったサスペンション)にもかかわらず、ドタバタせずにゆったりとストロークをさせる。

先代まではフレームとボディが捻れることで、路面からの衝撃がワンクッションある乗り心地を作り出していた。

それが今回フレームとボディを強化した結果、衝撃がダイレクトに伝わるようになっていてステアリング操作の違和感がかなり低減されている。

ラングラーの見切りの良いボディは、道幅の狭いところでもタイヤの位置が把握しやすいために、大きな車体ながらとても運転しやすい。
 

▲新たなプラットフォームを採用しサスペンションの改良等を加えたことでオンロード走行時の静粛性が向上ている▲新たなプラットフォームを採用しサスペンションの改良等を加えたことでオンロード走行時の静粛性が向上ている

前後リジットアクスルの車がもっとも苦手なUターンも試みてみた。

先代の7mを超える最小回転半径であったトラウマから困難かと思ったUターンも、思った以上に容易にこなす。

新型の最小回転半径はカタログ値6.2mであるから、エンジニアも相当頑張ったことだろう。

ちなみに3ドアモデルは5.3mなので、とても乗りやすそう。全く問題ない取り回しといえよう。

リサーキュレーティング・ボール式のステアリング機構は、中速のカーブが連続する場面で、切り始めた瞬間にワンテンポ遅い印象がある。

しかし、これが緩やかなカーブを曲がるアメリカンスタイルだと思えば問題ない。

万が一、急ハンドルの処置をしてもゆったりとジェントルな動きでかわすだけなのである。

8速ATはとても滑らかで「本当にJeep?」と思えるほど、一般の乗用車然としている。

ここまでワイルドさを取り除くと心配になるほどだ。

先代から比べると随分とまろやかになったが、先代のなんとも言えない無骨の乗り心地も懐かしい。

Jeepらしさの消失は杞憂だった

▲当日は小雨が降る中での試乗となった。オフロードコースは水を含んだ土でより難易度の高いコンディションに▲当日は小雨が降る中での試乗となった。オフロードコースは水を含んだ土でより難易度の高いコンディションに

次に公道では味わえないオフロードコースの試乗だ。

新型ラングラーの4WDはパートタイム式からフルタイム式へと変更された。

一般での走行でもより気兼ねなく、4WDとして性能を発揮させたいというところであろう。

次の試乗コースは本格的なオフロードコースだ。少々雨が降っているせいか、かなり走破する事が難しいコンディションに見える。

さすがに初期設定のフルタイムからパートタイムに切り替えて、ローレンジにトランスファーを変更して走破性を高める。

最初は雨の中のヒルトップからゆったりと降りていく。

傾斜にして10%くらいだろうか、路面が濡れて泥濘化しているので結構スリップする。

しかし、このくらいの傾斜は何事もなかったように走る。

シーソー地形では前後の対角線上の車輪が浮いてもコントロールすれば何とかなるが、後部席に同乗した本国から来日したチーフエンジニアのトップがデフロックを入れろと指示する。

リアのみ入れて難なく切り抜ける。

その後、岩が少しあるヒルクライムの登りだ。

さすがに前後デフロックを入れて走らせる。

3.6Lはとても扱いやすく、このようなシチュエーションであると本領を発揮する出力特性だ。

これほどまでにホイールベースが長いモデルで楽々と悪路を走破するコントロール性能が、ジープの一日の長と言える。

こんな機会はそうそうないだろうが、ぜひ購入する前に体感させてもらうと良い。

▲斜度のきついぬかるみも難なく登りきるラングラー。スイッチ一つでデフロックを入れることができ悪路での操作性も向上している▲斜度のきついぬかるみも難なく登りきるラングラー。スイッチ一つでデフロックを入れることができ悪路での操作性も向上している

最後に2Lを搭載したターボモデルを紹介しよう。

この2Lの4気筒ターボは数値からいうとかなりパワフルだ。

トルクを高めて加速やオフロード性能を向上させる狙いがある。実際に乗ってみるとやはり軽やかだ。

ターボであるが走らせている間は扱いやすく、極端な負荷をかけなければエンジンノイズも全く気にならない。

ただ中間加速や発進時に4L級のトルクを発揮するにもかかわらず、それを発揮するのに少々もたつく事がある。極限のオフロードよりも高速などとの相性が良さそうなエンジンだ。

乗り心地が若干硬めでV6よりも接地感が希薄な印象。だが、軽やかで街乗りには良いのかもしれない。

燃費も最大の売りのひとつなので、経済的にも優れている本格的なワイルド4WDと言えるだろう。
 

▲天井は取り外しが可能。外した状態でも剛性を損なわないようフレームが渡らせてある。素材部分がむき出しになっている無骨さが“アメ車らしさ”を感じさせる▲天井は取り外しが可能。外した状態でも剛性を損なわないようフレームが渡らせてある。素材部分がむき出しになっている無骨さが“アメ車らしさ”を感じさせる
▲片開きのバックドアに加え、リアガラス部分は上側にはね上がるようになっていている▲片開きのバックドアに加え、リアガラス部分は上側にはね上がるようになっている
text/松本英雄
photo/尾形和美

【SPECIFICATIONS】※試乗車
■グレード:ラングラー アンリミテッド サハラ ■乗車定員:5名
■エンジン種類:V6 DOHC+ターボ ■総排気量:3604cc
■最高出力:209(284)/6400[kW(ps)/rpm]
■最大トルク:347(35.4)/4100[N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:4WD ■トランスミッション:8速AT
■全長x全幅x全高:4870 x 1895 x 1840(mm) ■ホイールベース:3010mm
■ガソリン種類/容量:レギュラー/81(L)
■JC08モード燃費:9.2(㎞/L)
■車両価格:530万円(税込)