久しぶりに正規輸入されるランチアデルタ 【試乗by西川淳】
カテゴリー: ランチアの試乗レポート
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2008/10/06
どういうブランド戦略を立てるのか気になる
フィアット首脳陣はこう明言した。ランチアとアルファロメオの関係は、マセラティとフェラーリのそれに似ている、と。なるほど、そうであればスポーツ=アルファロメオでのレース活動と、ファッション中心のブランドマーケティングを行うラグジュアリィ=ランチア、という現在の位置づけがよく理解できる。
来年、日本市場へ再びランチアが正規輸入される見込みで、その初っ端が今回紹介するデルタになるわけだが、“ランチアデルタ"という名前にもはや、過去のラリーイメージを被せてはいけない、ということ。初代ランチアデルタといえば、言ってみればランエボ&インプの先祖のようなモデルで、今なおマニアックな人気を集めている。日本におけるイメージは、デルタ=インテグラーレ=ラリーカーで、それ以上でも以下でもない。だから3代目デルタにもその面影を追ってしまいそうになるが、それは徒労です。
ベースはフィアット系Cセグメント用プラットフォームで、現在、フィアットブラーバが使用しているもの。ただし、ボディサイズはCセグの範疇で語れないほど大きい。全長は4.5mを超え、幅も1.8m、ホイールベースに至っては2.7mである。これはBMW3シリーズとほぼ同じというディメンジョンで、デルタという車がC&Dセグのいいとこ取りであることを示すものだ。後発故の工夫と見るべきか。
CセグだけれどもDセグの余裕でラグジュアリィ、とくればターゲット層は高級車や大型車からのダウンサイジング組である。いきなりコンパクトカーには行けないけれども、でかい車には乗ってられないと考える層は意外に多い。彼らに対する提案であって、Cセグにおけるサイズだけをあげつらって巨大だと批判するのは的外れだろう。
それにしても、アクの強い、個性的なルックスである。ホイールベースの長さがこの車をハッチバックというよりもステーションワゴンっぽく見せている。インテリアには、'90年代までの(つまり以前、オートザムによって正規輸入されていた頃の)ランチアのような“落ち着いた上品さ"ではなく、個性的なデザインとモダンなあしらいが目立つラグジュアリィさだ。ポルトラナフラウのフルレザー仕様の用意もあるとか。
あいにく、日本に導入される予定の仕様(1.8L直噴ツインターボ+アイシン6AT)はまだ完成車がなく試乗も叶わなかったが、1.4L直4ターボエンジン+6MTモデルを試すことができた。車そのものは、至って“マトモ"という印象が強い。リアクティブダンパーの採用で、乗り心地は至ってマイルド&ソリッドでいかにも現代的。静粛性にも優れ、確かにアルファロメオやフィアットの同クラス車とは異質の仕上がりである。がつがつした気分にならないイタリア車、という意味では貴重だ。
問題は、やはりイメージだろう。日本におけるランチアのイメージは、一握りの熱心なファンを除くと、前述したようなインテグラーレ色が強い。そこに同じ名前をもつ、全く異なるコンセプトの車をどう売り込むのか。ランチアといえば、戦前からすでにハイレベルで先進的な走りを実現してきたブランドである。偏ったイメージは本来、このブランドの本質ともかけ離れたものだから、ぜひとも再上陸を機に、日本におけるブランドの再構築を図ってほしい。