M・ベンツEクラス、間もなくフルモデルチェンジ 【試乗by西川淳】
カテゴリー: メルセデス・ベンツの試乗レポート
タグ: セダン
2009/05/12
スペインで開かれた試乗会からファーストインプレッション
いつの時代もセダンの新スタンダードに。Eクラスの目指すところは本質的には全く変わっていない。コンセプトの第一に安全性の向上を掲げつつ、次に快適かつリラックスなドライブを提供することを挙げ、3つ目には時代に即した低燃費を実現する、と言っている。これらはすべて、どの世代のEクラスにおいても熟慮されてきた特徴だ。
なかでも安全性は歴代Eクラスが常に得意としてきた分野。このW212においても、実に30項目以上にもわたる新装備、新技術が安全性向上のために惜しみなく注ぎ込まれている(ただしレーダーを使った技術の日本導入は、もう少し先)。珍しくその効用を実感できた(ESPなど動的性能にかかわるもの以外、万が一の装備だから体感できないのがフツウだ)のが、アダプティブ・ハイビーム・アシストだ。
日本でも滅多にない、珍しい夜間試乗。システムを作動し、ハイビームで走ってみる。対向車が見えれば“反対車線分だけ”ロービームになり、先行車に追いつけば勝手にローになる、というふうにハイビームを多用するユーザーにはとても具合がいい。ちなみに灯火の基本はハイビーム。ボクも基本はそうだから、自分のクルマに今すぐ付けてほしいと思った。
広くなった室内空間、新設計新素材のシート、きめ細かな制御の空調システム、エルゴノミックな機能デザインなどによってドライバーの集中力は、これまで以上に高められる。さらに、よくできたシャーシと優れた空力特性による恐ろしいまでの静粛性が加わって、高速での長距離ドライブをいっそう快適にする。長距離移動の多いユーザーにとっては、新型Eクラスが一つのスタンダードになるだろう。
燃費向上は、どうか。炭酸ガス排出量抑制に関して言えば、たとえばディーゼルにおけるブルーテックやガソリンの新直噴CGIエンジンなど、M・ベンツの最新エンジンテクノロジーがいよいよ全域にわたって展開された。ディーゼルハイブリッドの導入も近い(Sクラスにはガソリンハイブリッドもある)。
実際に試乗した各グレードの印象をまとめておく。
E350CGIアバンギャルド AMGパッケージ(ローダウンに18インチ)は“ビシッと筋の通った一体感ある車”だ。とにかく高速クルージングで風切り音がほとんどなく、驚くほどフラットなライド感だ。電子制御がすみずみに行き届いたためか、ステアリングフィールに微妙な違和感を覚えたが、全般的には“安楽”そのもの。日本を出る直前に乗った旧型W211の、まるでオカンに抱かれたようなまったりとした乗り味がとても懐かしく思えるほど、別物の乗り味。モダンで、明らかに現行Cクラスと同じ路線を感じる。
E250CGIには、以前のEクラスの雰囲気を少しだけ思い出させる大らかさがあった。ターボエンジンの実用パフォーマンスも十二分で、これならもう見栄を張ってV6になんか乗らなくていい。5ATとターボエンジンとの相性も良く、パワフルにさえ感じる。日常のアシとしてはベストバイ。誰にも、オススメ。
E350ブルーテック(尿素ディーゼル)とE500(日本ではE550)は、ともに分厚いトルクがほとばしり、強烈なパフォーマンスをみせた。ただし、継続的な力の強さとエンジンフィールでは、やはりガソリンV8に軍配が上がる。同じディーゼルでもE350CDIのほうがパンチもあった。いずれにせよ、トルクは凄い。ちなみに、エアサスのE550では、さらに車をもうひとクラス、小さく感じさせる。
個人的には、AMGパッケージのアシ回りだけをノーマルスタイルに積んだ仕様(だって本物のE63AMGと並びたくないじゃない?! 東京だとすぐ、並ぶハメになるし)が、どのエンジンバリエーションにも欲しいと思った。
ちなみに、写真に出てくるLEDデイタイムライトは法規の問題で日本には来ない。見た目に印象的なのに残念。同じ理由でクラシックフェイスの4灯式もだめ。日本用にはどうやら全く別デザインの2灯フォグランプ付きになる模様。5月末に発表される予定で、最初はE350のポートインジェクションとE250CGI、そしてE550、もしかしてE300。E63AMGもそのうちに。E350CGI、E350CDIは少し後。ブルーテックは未定だ。