今秋登場予定のアウディRS6アバント 【試乗by西川淳】
カテゴリー: アウディの試乗レポート
タグ: セダン
2008/03/24
スポーツワゴンの真骨頂でしょう
580psを誇るV10直噴ツインターボエンジンやフレアフェンダー仕立ての外観をもつ、アウディRS6アバント。ハイスペックモデルが大好物のボクには、まさに"よだれモノ"な存在の世界最強ワゴンを南仏で試乗して来た。
モーターショーで見たときからとっても気になっていたモデルである。アウディ市販量産モデルで史上最強(初のオーバー500ps)となる580psV10直噴ツインターボエンジンや、1980年代のクワトロスポーツを彷彿とさせる物々しいフレアフェンダー仕立て、そして何よりもこれだけの強力スペックをもつモデルがアバントであるということ、などなど。
量産メーカーのモデルとしては、世界最強最速のワゴンである。アウディのアバントはハッチバック以上ステーションワゴン以下という、どちらかといえばスペシャリティな装いのモデル(そういう意味では今回のRS6も、かのスポーツクワトロ直系であろう)という位置づけだが、それでもワゴン最速という勲章に文句はない。開発から生産まで、クワトロGmbHが行う。ライバルは、もちろん、BMW M5ツーリングとM・ベンツE63TAMG。現地価格10万6900ユーロというから、ほとんどスーパーカーのR8並みだ。
まずはサーキットで全開性能を試す。わずか1500回転からほとばしる650N・mというビッグトルクが、2tという車重をものともせずに強烈な加速を生む。特筆すべきはその安定感で、アクセルペダルを踏みつけている間の怖さというものがまるでない。しかし、巨大な物体がとてつもない速さで動いていることだけは実感できる。そのギャップが、この手のスペシャルモデルの魅力だ。
サーキットでは230km/h弱まで出せたが、そんな速度域で安定感が揺らぐことなどない。250km/hでリミッター、望めば280km/hリミッターにすることも可能だ。とてつもなく重厚な走り味が、ハイスピードの世界をいともカンタンに実現してくれる。オプションの20インチブレーキの中に隠された巨大なブレーキシステムが、強烈な運動量を伴った物体を思い通りに減速してくれた。
組み合わされるトランスミッションはZF製6速AT。パドル操作が可能で、シフトダウン時にはちゃんとブリッピングする。だからといって、駆使してスポーティな走りを楽しむ、という性格のクルマではないことは確かだ。
街へ飛び出すと、サーキットでの重厚感が印象的にさらに増す。ちょっとした装甲車をドライブしているかのような気分(乗ったことないが)。30km/hまでは何とか扱える範囲内の軽さだったステアリングフィールも、それを超えると数十kgの重りが腕に吊るされたように重い。女性はちょっとキツいんじゃないか。低速域ではフロントヘビーな印象も強い。
本領を発揮するのは、だんぜん高速道路上である。サーキットで見せた安心感が公道上では倍増するかのようだ。これほど安楽で心地よく速いハイウェイクルーザーをボクはほかに知らない。RS4にも積まれていたDRC(ダイナミックライドコントロール)はオプションで3段階変更も可能で、そのコンフォートモードで走れば硬い乗り心地に悩まされることもない。
そう、決してスポーツカーではないのだ。これは超強力なGTカーというべき存在で、とてつもなく速く走るが、そこでドライバーを興奮させるということがない。あくまでも冷静でいられる。社会的に責任のある人が"どうしても"高速道路を自らかっ飛んでゆかねばならない、などという場面において、世界で最も重宝するクルマではないだろうか。走り切った向こうで一仕事、それも大事な用が待っている。運転で緊張したり興奮したりすることは、無意味であり無益であろう。
ブランド的にもクラス的にも、そしてパフォーマンスとステータス性においても、成功したビジネスマンのツールとしてこれほど満足度の高いモデルはない。ボクなら日本中どこへでも自分で走って行くグランドツーリングの相棒として、真っ先に名前を挙げたくなるクルマだと言える。日本上陸は、この秋だ。