BMW i8▲2018年に日本上陸したi8のロードスター。自動車テクノロジーライターの松本英雄氏が試乗の模様をレポートする

過去にロングドライブしたクーペと比較

BMW i8ほど、自社のフィロソフィーに沿ったイノベーションを具現化できた車はない。

ハイテクで生産される量産型カーボンシャシーに、電池を搭載するスペースやサスペンションと動力系を取り付ける部分にアルミ合金フレームを採用。量産体制が可能な“20年先のスーパースポーツカー”を提案したのだ。

まるで“空気”をまとったスタイリングは、派手な空力パーツに超ド級のパワーで勇ましいエンジン音……という従来のスーパーカーパッケージではなく、一体感のあるデザインに低燃費、静寂性と安定感に優れたパッケージでもパフォーマンスが演出できることを知らしめた。

私は、発売から1年ほど経った頃、このi8で東京→神戸→京都→東京を2泊3日で走らせたことがあった。

最初の目的地・神戸までは、レンジエクステンダーを併用しながら、道中3度の充電を行い、パフォーマンスを味わいながら走った。そのときの印象は、とにかくフル充電した時の“追い越し”のパフォーマンスが天下一品ということ。新東名道路での静粛性にも驚かされたものだ。

BMW i8▲こちらが東京→神戸→京都→東京をドライブした2+2タイプのi8

また、神戸市内のワインディングでは、「地を這うとはこのことだ!」と思い知らされた。ちなみに、低い着座位置だが見切りはいい。運転している自分が未来的で人目を引く車に乗っていることを忘れるほど実用的だった。

特にクーペモデルは2+2なので、旅行用のバックを後席に乗せられ、とても使い勝手が良い。とにかく惚れ込んだフューチャーハイブリッドスーパースポーツモデルであった。

BMW i8

そして、このクーペの存在感をさらに高めた「i8ロードスター」が2017年11月、アメリカで発表された。すでに昨年から日本でも販売されていたのだが、なかなか試乗できる機会がなく、このたび、長い時間乗せていただけることに。

この試乗でロードスター独特の開放感を味わえ、パフォーマンスも十分に堪能することができたので、皆さまにもお伝えしたい。

各モードそれぞれの良さを実感

まずスタイリングだが、クーペモデルと雰囲気が変わらないところがとてもいい。

BMW i8
BMW i8
BMW i8

ただでさえ目を引くのに、走りながらルーフを開ければ、その動きに見ている人は釘付けになるだろう。ルーフの幌をしまい込む挙動はギミックで、その動きにまでセンスの良さを感じるほどである。

ドアは跳ね上げタイプ。乗り込み方はスーパーカーと同じ要領だ。

さっそく乗り込み、スタートスイッチをONにした。まずは、モーターだけで楽しむ『eDRIVEモード』で出発だ。

スタートがとにかくいい。電気モーター特有のトルク特性によってスロットルを踏んだ瞬間から最高のパフォーマンスの始まりだ。路面から浮いているような印象を受けるほど滑らかで、とにかく乗り心地がよい。そして、ルーフが幌にも関わらず、風切り音などは一切気にならない。

今回のロードスターは、以前よりもバッテリーの容量が増し、モーターの出力も12馬力ほどアップしている。

あっという間に法定外の速度に届いてしまうが、このようなスーパースポーツカーの楽しみはトップスピードよりも法定速度内の一瞬の加速というエクスタシーを味わうこと。先述したデザイン・スタイリングとともに、所有する喜びにつながるであろう。

道が一般道から首都高速に変わっても、エンジン音は聞こえないまま地を這う感覚。これはまさにスポーツカーのイノベーションだ。

正直言って、私たち“スーパーカー世代”は、この手のモデルに懐疑的であった。やはりエンジンという呼吸する動力の音によって、アドレナリンはかき立てられるのだ。

しかし、今回のi8に乗ると、そんなことは忘れてしまう。宙を浮いた加速、路面に吸い付いたようなハンドリング……異次元のパフォーマンスを繰り広げてくれるからだ。

一方で、バッテリー容量はみるみるうちに減っていく。そんなときは『コンフォートモード』で充放電を行い、容量をセーブ。3気筒1.5Lエンジンがちょっと加速すると始動する。

このエンジンがまた、3気筒とは思えない重厚感のある音を技巧的に作り出し、ドライバーを楽しませてくれるのだ。本質的ではないが、この手のモデルは雰囲気が大切。だから、エンジニアも必要と感じたのであろう。この車が1.5L 3気筒エンジンとは、お釈迦様でも気づくまい。

東名高速でも速度レンジを上げ走らせてみた。

そして、ここでルーフを開けることに。手元の時計で17秒程度で開いた。この日の天候が危うかったが、空力を考えれば走行中にずぶぬれになることは少ないはずだ。(ゲリラ雷雲は別だが……)

ここで『スポーツモード』に切り替え、マキシマムのパフォーマンスにして走った。電光石火の加速を久しぶりに味わう。

BMW iシリーズの一番廉価版「i3」でも素晴らしい加速と感じていたが、i8は次元が違う。空力によって四輪をしっかりボディで抑え、四輪で地をつかむ。

風は適度に巻き込む程度で快適だ。パッセンジャーとの会話も楽しめる。そうしているうちに、あっという間に目的地・横浜町田のインターチェンジである。

蒸し蒸しする夜にはオープンはしんどいな……と、ここで走行中であったが屋根をクローズに。閉じる方が、気持ち速い印象であった。

以上が、一般道~高速道路それぞれのインプレッションである。

このi8ロードスターが現実とはかけ離れたような存在であるのは明白であるが、実は使い勝手は悪くない。最低地上高のクリアランスもしっかりあるので、フロントのリップスポイラーが擦れるなどの心配もない。

ただ、クーペと比べ後席がないので、そのあたりの利便性には欠ける。……いや、荷物などはミニマムで整え、スマートなドライブに徹することも大切な時代なのかもしれない。

BMW i8
BMW i8
BMW i8
BMW i8
文/松本英雄、写真/篠原晃一、松本英雄

【試乗車 諸元・スペック表】
●ベースモデル

型式 CLA-2Z15U 最小回転半径 -m
駆動方式 4WD 全長×全幅×全高 4.69m×1.94m×1.29m
ドア数 2 ホイールベース 2.8m
ミッション 6AT 前トレッド/後トレッド 1.65m/1.72m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
4WS - 車両重量 1650kg
シート列数 1 最大積載量 -kg
乗車定員 2名 車両総重量 1760kg
ミッション位置 フロア 最低地上高 0.12m
マニュアルモード
標準色

ソフィストグレー BMW i ブルーアクセント、ソフィストグレー Fグレーアクセント

オプション色

E-コッパー フローズングレーアクセント、ドニントングレー Fグレー・アクセント、クリスタルホワイト BMW iブルーアクセント、クリスタルホワイト Fグレーアクセント

掲載コメント

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型式 CLA-2Z15U
駆動方式 4WD
ドア数 2
ミッション 6AT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 ソフィストグレー BMW i ブルーアクセント、ソフィストグレー Fグレーアクセント
オプション色 E-コッパー フローズングレーアクセント、ドニントングレー Fグレー・アクセント、クリスタルホワイト BMW iブルーアクセント、クリスタルホワイト Fグレーアクセント
シート列数 1
乗車定員 2名
ミッション
位置
フロア
マニュアル
モード
最小回転半径 -m
全長×全幅×
全高
4.69m×1.94m×1.29m
ホイール
ベース
2.8m
前トレッド/
後トレッド
1.65m/1.72m
室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
車両重量 1650kg
最大積載量 -kg
車両総重量 1760kg
最低地上高 0.12m
掲載用コメント -
エンジン型式 B38K15A 環境対策エンジン H17年基準 ☆☆☆
種類 直列3気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 ターボ 燃料タンク容量 42リットル
可変気筒装置 - 燃費(JC08モード) 15.9km/L
総排気量 1498cc 燃費(WLTCモード) -
燃費基準達成 -
最高出力 231ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
320(32.6)/3700
エンジン型式 B38K15A
種類 直列3気筒DOHC
過給器 ターボ
可変気筒装置 -
総排気量 1498cc
最高出力 231ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
320(32.6)/3700
環境対策エンジン H17年基準 ☆☆☆
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 42リットル
燃費(JC08モード) 15.9km/L
燃費(WLTCモード) -km/L
燃費基準達成 -
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。