憎みきれないろくでなし(でも実は超優等生)

  • フォルクスワーゲン ゴルフ GTI ピレリ 走り|ニューモデル試乗
  • フォルクスワーゲン ゴルフ GTI ピレリ リアスタイル|ニューモデル試乗
↑軽快さと安定性が両立され、運転がうまくなったように錯覚してしまうほど扱いやすい(左)リアバンパーは専用デザインで、ボディ同色となるのもPirelliの特徴。エクゾーストサイレンサーも微妙に変更されている(右)
「伝説のゴルフ GTI Pirelli、25年ぶりに復活!」……といわれても、初代GTI Pirelliは日本には輸入されなかったため、耳なじみは少ないかもしれない。が、ゴルフVのGTIをベースに作り上げた今回の「Pirelli」は、新車愛好家はもちろん、Uカーファン諸兄も今から絶対に注目しておくべき存在だ。

初代Pirelliは83年、最高出力108psのエンジンを112psまでチューンし、ピレリのロゴをあしらった専用ホイールなどを装備して発売。全世界で1万500台が瞬く間に完売した。

今回のベースとなったのはゴルフV GTIの6速DSGバージョン。そこに、ノーマル比30ps増の230psまでチューンされた専用の2.0T-FSIを搭載し、専用サスを装着。そしてピレリのロゴをあしらった専用18インチホイールを履き、イエローステッチの入った専用レザー/マイクロファイバーシートなどを採用している。日本への割り当ては限定1000台で、特別塗装色「サンフラワー」が170台(419万円)、「ブラックマジックパールエフェクト」が830台(405万円)となっている。

快適な乗り心地と扱いやすい走行性能を両立

  • フォルクスワーゲン ゴルフ GTI ピレリ エンジン|ニューモデル試乗
  • フォルクスワーゲン ゴルフ GTI ピレリ アルミホイール|ニューモデル試乗
↑大径ターボ採用やピストン変更などでノーマル比30ps増となる専用エンジン(左)18インチの専用ホイールと組み合わされるのはP Zeroの225/45R18(右)
試乗車両はその「特別塗装色」のほうで、限定スポーツ特有のオーラを感じさせる硬派なたたずまい。が、いざ走り出してみるとその乗り心地は思いのほかスウィートで、パサートバリアント R36のそれと比べて「当社比1.8倍」といったニュアンスで快適。これならば、高齢の両親を連れての親孝行ドライブにおいてすら大活躍するだろう。

しかし、いうまでもなくGTI Pirelliは単なる親孝行車ではない。プラス30psのパワーを得ているだけあって、「これじゃモノ足りない」なんていう人には“スピードジャンキー”というレッテルを貼りたくなるほど、速い。そして「鼻先がスルッと入る軽快さと、絶対にズルッとこない(であろう)安定性」とが両立しているため、何やら急に運転がうまくなったような錯覚をしてしまうほど、扱いやすいのだ。

新車か認定中古車かはさておき、私ならばボディ色は「サンフラワー」を選びたい。どちらも性能はもちろん同一だが、このイエローには、ドイツ車の唯一の欠点ともいえる「クソ真面目感」をいい塩梅に中和させる、ほど良いロクデナシ感があるからだ。ジュリーじゃないが「憎みきれないろくでなし」を気取りながらも、中身は実はスポーツ万能・学業優秀な優等生。ある意味ズルい、それゆえ魅惑的な選択肢である。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード GTI Pirelli
駆動方式 2WD(FF)
トランスミッション 6AT
全長×全幅×全高(mm) 4225×1760×1500
ホイールベース(mm) 2575
車両重量(kg) 1440
乗車定員(人) 5
エンジン種類 直4DOHC+ターボ
総排気量(cc) 1984
最高出力[ps/rpm] 230ps/5500〜6300rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 30.6kg-m/2200〜5200rpm
10・15モード燃費(km/L) 12.2
ガソリン種類/容量(L) 無鉛プレミアム/55
車両本体価格 419.0万円
(Tester/谷津正行(インポートカーセンサー デスク) Photo/尾形和美)