※この記事はカーセンサー関東版23号2002年6月20日発売号に掲載されていたものをWEB用に再構成したものです
(Tester/渡辺 敏史 Photo/渡邉 英昭)

FFらしく室内広々、静粛性と振動の少なさに思わず感心

コンセプト
宿敵はエルグランド。あえて“FF”で勝負

トヨタ アルファード 走り|プレイバック試乗記トヨタ アルファード リアスタイル|プレイバック試乗記
↑ロール量、スピードともに程よく抑え込まれたサスセッティングのおかげで、コーナリングにおいてもこのテの車特有の不安感はない(左)販売店別で2種類のフェイスが用意されるアルファードだが、リア回りは両車共通となる(右)
グランビア/グランドハイエースという2台のLクラスミニバンを擁しながら、日産のエルグランドを前にどうしても思い描く販売に持ち込めなかったトヨタ。

そこで今回のアルファードでトヨタがとった決定的な方策は、シャーシを乗用車ベースのFFで構成するということ。欧米勢の同クラスミニバンは、スペースユーティリティの見地から軒並みFFを採用している。あえてFRにこだわることはない。そう決断した背景には、もちろん現状の資産が使える=コストが下げられるというポイントもあったであろう。

というワケで、プラットフォームおよびパワートレインはエスティマがベース。サブフレームなどを改良し、低床そして広大な室内空間を得る。販売の半数を見込む4WDはフルタイム式を採用した。

室内&荷室空間
3列すべてがゆったり。練り込まれた使い勝手

トヨタ アルファード インパネ|プレイバック試乗記
↑使い勝手が最優先された運転席環境。インパネに配されたシフターはゲート式を採用
FFプラットフォームのメリットを生かした室内空間は広大の一言。FRと違い、トランスミッションの張り出しがないため、前席は足元のスペースがゆったりしている。2列目シートは3人掛けのベンチタイプと2人掛けのセパレートタイプを用意。また、3列目シートの環境も改善が著しい。大人6人が同等にくつろいで座れる、そんなスペースを有している。

このテの車の命である各種装備も充実。両側スライドのオート開閉ドアや5.1ch再生可能なDVDシアターシステムなど、本カタログよりも眺める時間が長くなりそうなほどのアイテムがオプションカタログに並ぶ。走行時の車線はみ出しを警告するシステムは、バックモニターのCCDカメラを前進時に切り替え使用し白線を感知するというアイデア装備だ。

ドライブフィール
ともあれ静かでスムーズ。意外と俊敏なハンドリング

トヨタ アルファード エンジン|プレイバック試乗記トヨタ アルファード フロントスタイル|プレイバック試乗記
↑エンジンはエスティマと同じく、3L V6と写真の2.4L直4の2本立てで構成される(左)エアロパーツをまとうMSとAS。黒を基調とした内装になり、ホイールも17インチとなる(右)
多人数乗車の大型ミニバンというのは大体こんなもん、という先入観のままに乗ると大きく裏切られるのが、なんといっても静粛性と振動の少なさ。音振的には不利な体躯をものともせず、気の利いた4ドアサルーン並みの静かさを身につけている。

また、スクエアなボディにして100km/h前後での風切り音がしっかり抑え込まれている点も印象的。この点、いかにもトヨタらしいお仕事と感心する。

ロールを抑える方向に気を使ったとみられるサスペンションは、乗り心地との妥協点をうまいところに落とし込んでいる。サイズの割には軽めの車体も手伝って、3L V6エンジンは余裕の動力性能。キャパ不足かと懸念される2.4L直4も能力的には不満なく、鼻先の軽さも手伝って運動性自体にはかえって好影響をもたらしている。

こんな人にオススメ

エルグランドという直接の敵を目の前にキッチリ練られただけあって、さすがに初手から高い完成度。3列平等に人が座れ荷物が積めるという必須項目をかつてなく高水準で満たしているという点も要注目。つまり、大人6人以上の移動を考えるユーザーにとって、2.4L直4のトータルコストは魅力的だと思う。
主要諸元のグレード 2.4 AX L-エディション(2WD)
駆動方式 FF
トランスミッション 4AT
全長×全幅×全高(mm) 4800×1805×1935
ホイールベース(mm) 2900
車両重量(kg) 1770
乗車定員(人) 8
エンジン種類 直4DOHC
総排気量(cc) 2362
最高出力[kW(ps)rpm] 117kW(159ps)/5600rpm
最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] 220N・m(22.4kg-m)/4000rpm
ガソリン種類/容量(L) 無鉛レギュラー/70
車両本体価格 275.0万円