スムーズな走行フィールは「背の高い上質な乗用車」

(Tester/島崎七生人 Photo/尾形和美)

コンセプト
北米向けRAV4ロングを日本向けにアレンジ

トヨタ ヴァンガード フロント|ニューモデル試乗トヨタ ヴァンガード リア|ニューモデル試乗トヨタ ヴァンガード V6|ニューモデル試乗
「北米市場向け“RAV4ロング”の日本版」。新登場のヴァンガードは、ほぼそういう理解で正解だ。

計算上ヴァンガードの全長はRAV4より235mm長く、ホイールベースは100mm長い2660mmの設定。つまり“差分”がリアのオーバーハングに充てられ、そこに第3列目のシートが設けられた。その割にキャビン回りのデザインに冗長感はなく、バランスよくまとまっている。他方マスクは、ここ最近のトヨタ車の流れで「三角ではないがややツンと切れ上がった目と普通なグリル形状」が特徴。プレーンなスタイルである。

延長した全長に対し、全幅はRAV4のワイドボディと同じ1855mm。最小回転半径は17インチタイヤの240SならRAV4のワイドボディより10cm小さい5.3mだ。

室内&荷室空間
新加飾のインパネは質感の向上にプラス

トヨタ ヴァンガード インパネ|ニューモデル試乗トヨタ ヴァンガード 3列目シート|ニューモデル試乗トヨタ ヴァンガード ラゲージ|ニューモデル試乗
インテリアは“加飾したRAV4”だ。センターパネルをはじめブロンズ色のヘアライン仕上げ(この黒色版は別の3列シート車のメーター回りに採用)の新表現で、見飽きた、いかにもシルバーな加飾より落ち着き感と質感があっていい。3つの丸いスイッチは空調関係で、大きさ、形状、わかりやすさとも申し分なし。iPodのクリックホイールに迫る操作のしやすさだ。

ドアの閉まり音も残響や嫌な共振がなく、心地いい静かな音。後席はやや硬めなクッションが好印象、スライド機構でスペース拡大も自在。本革+アルカンターラ仕様の内装の匂いも香ばしい種類で革の匂いが駄目な人にも大丈夫だろう。元来床が低く平らなRAV4ベースなので、ラゲージスペースも使いやすく実用的な作りだ。

ドライブフィール
しっとりとした乗り味、240Sの軽快さも魅力

トヨタ ヴァンガード 走り|ニューモデル試乗トヨタ ヴァンガード アルミホイール|ニューモデル試乗トヨタ ヴァンガード エンジン|ニューモデル試乗
280ps&35.1kg-mのスペックを誇るのが350S。1700kg(5人乗りはさらに40kg軽い)の車重に対し不足があろうはずもなく、アクセルを踏み込むとタコメーターの針が上のほうに吸い込まれるように振れる。パワフルなのにスムーズだ。乗り味、ステアリングフィールも基本的にはしっとり。18インチタイヤの自重かメイクの影響か、目地の通過などでのハーシュネスの遮断がやや甘く、これがなければ申し分なしだ。

他方で240Sも2.4Lと排気量に余裕があり、170ps&22.8kg-mとスペックも十分。350Sと乗り比べると、さすがに4気筒らしいエンジン音と振動(とCVTの共鳴)がなくはないが、動力性能は十分だしCVTの制御も洗練されている。フットワークも実に軽快だ。

こんな人にオススメ

月並みな表現だが、乗用車感覚でリラックスして走らせて(乗って)いられる車。SUVだから…と気構える必要はまったくなく、内装の作りは高級というより丁寧で上質なのも満足度が高い。サラッとしたファブリックのシートでも快適だし、何しろ荷物がたっぷり積め実用性が高い。ことさらじゃない乗用車が欲しい人にオススメだ。

主要諸元のグレード 350S“Gパッケージ”
駆動方式 4WD
トランスミッション 5AT
全長×全幅×全高(mm) 4570×1855×1690
ホイールベース(mm) 2660
車両重量(kg) 1700
乗車定員(人) 7
エンジン種類 V6DOHC
総排気量(cc) 3456
最高出力[kW(ps)rpm] 206kW(280ps)/6200rpm
最大トルク[N・m(kg/m)/rpm] 344N・m(35.1kg-m)/4700rpm
10・15モード燃費(km/L) 9.6
ガソリン種類/容量(L) 無鉛プレミアム/60
車両本体価格 350S“Gパッケージ” (7人乗り) 334万9500円
240S(7人乗り) 268万8000円