TOYOTA GAZOO Racing

TOYOTA GAZOO Racingは、FIA世界耐久選手権(WEC)シリーズのハイライトとも言える、伝統のル・マン24時間レースへ向けての準備を整えました。

約25万人もの観客を集める世界3大レースの一つ、ル・マン24時間は、今年83回目の開催を数えます。公道をコースの一部として利用し、常設サーキットの一部と組み合わせた13.629kmのサルト・サーキットで、LMP1に挑戦するメーカーのワークスチームが1年に1度、勝利を目指し戦う、世界で最も古い耐久レースです。

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昨年のWEC年間世界チャンピオンであるトヨタは、2台のTS040 HYBRIDと共にル・マン24時間を戦うためにフランスに向かいます。ル・マン仕様の空力に特化してデザインされた2台は、空気抵抗の低減と最高速を最適化され、サーキットでの最高速度は時速330kmを超えます。シリーズの今季開幕2戦の仕様と比較すると、ル・マン24時間仕様のTS040 HYBRIDは、リアウィング、エンジンカバー及びフロント周りのボディワークに相違点が見られます。

TS040 HYBRID #1号車のドライバーは、世界チャンピオンであるアンソニー・デビッドソンとセバスチャン・ブエミに、中嶋一貴が加わった3人。中嶋は昨年のル・マン24時間レースの予選で最速タイムを記録し、ポールポジションを獲得しています。

中嶋は5月初めに行われた第2戦スパ・フランコルシャン6時間レースの練習走行で背中を痛めましたが、著しい回復を果たしました。彼は5月31日に行われたル・マンのテストデーに参加し、充分レースに耐えうる体調であることが確認され、自身4度目となるル・マン24時間レースに出走することが決まりました。

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TS040 HYBRID #2号車は、ル・マン24時間で2勝を挙げているアレックス・ブルツと3度のポールポジション経験者であるステファン・サラザンにマイク・コンウェイを加えた3人。コンウェイは2度目のル・マン24時間挑戦であり、LMP1カーでは初参戦となります。

今年は、トヨタがワークスチームとしてル・マン24時間に参戦して30年目の記念すべき年です。30年前、初めてトヨタワークスがル・マンに挑戦したとき、その中の1台をドライブしていたのは中嶋悟。中嶋一貴の実父です。

2015年のル・マン24時間レースは、トヨタにとって17回目の挑戦となります。これまでの16回の挑戦の中で、40台の車両がレースを戦い、最高位フィニッシュは4度の2位(1992年、1994年、1999年、2013年)です。この中には、元F1チャンピオンのアラン・ジョーンズ、F1優勝経験者のエディー・アーバインや3度のル・マン勝者であるアラン・マクニッシュもトヨタ・ドライバーとして含まれています。

昨年のル・マン24時間レースでは、ブルツとサラザン、中嶋がドライブした#7号車は、ポールポジションからレース前半をリードしましたが、電装系のトラブルに見舞われリタイアに終わりました。デビッドソン、ブエミ、ラピエールの#8号車はアクシデントに見舞われながらも追い上げ、3位でフィニッシュしました。

トヨタにとっては厳しいスタートとなったWECの2015年シーズンですが、今季初勝利を目指し、チームはル・マン24時間レースへと挑みます。激しさを増すLMP1カテゴリーは、タフな戦いになることが予想されます。

しかし、ル・マン24時間レースにおいては、テストデーでの心強い結果だけでなく、完璧な準備と経験が必要です。それは、静かな期待と共に、チームが栄冠へ向けてレースに臨めるということを意味します。

ル・マン24時間という大イベントは、本当の耐久レースとしてのチャレンジとなり、トータルで35時間にもわたって走行することとなります。そのスタートは、6月11日(水)午後4時(日本時間午後11時)から4時間の公式練習走行を行い、その後、午後10時(同翌午前5時)から予選が始まります。

翌12日(木)にも、2回にわたり2時間ずつの予選セッション(午後7時と午後10時 : 同翌午前2時、午前5時)が行われます。決勝のスターティンググリッドはこれら3回の予選セッションの中での最速タイムで決定されます。

ル・マン24時間伝統のドライバーズパレードは、13日(金)の午後にル・マン市内で行われ、ファンにとってドライバーと近くで触れ合える貴重な機会となります。そして、14日(土)午前9時(同午後4時)からのウォームアップ走行に続き、現地時間午後3時(同午後10時)より、24時間レースのスタートが切られます。

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佐藤俊男 チーム代表:

最初に、中嶋一貴が無事に復帰し、共にル・マン24時間レースに臨めることを、チーム全員で喜んでいます。これは彼の努力と精神力の賜物であり、これでチームは完全な状態でル・マンに挑戦することが出来ます。ル・マン24時間レースへ向けた準備はほぼ1年間かけて行って来ており、その準備が整い、士気も高まっています。今季序盤の2レースは、予想していたようには行きませんでしたが、それだけにチームはケルンへ戻ってから、我々のル・マンパッケージから最大のパフォーマンスを得るべく非常にハードな作業をこなして来ました。この多大な努力がル・マンで報われることを望んでいます。今年のスタートは昨年の様には行かないかもしれませんが、ゴールを目指す上でそれは問題ではありません。我々はこのレースに全力を注ぎ、ミスはゼロ、ピットタイムは最小にして戦います。それが我々にとって勝利を争うためのアプローチだと信じています。モータースポーツで、「絶対」はあり得ないことは分かっていますが、我々の準備は順調だと感じており、レースで我々の力を示したいと思います。

村田久武 モータースポーツユニット開発部部長:

我々のトヨタ・ハイブリッド・システム・レーシング(THS-R)は長いストレートと、その後に待ち受けるハードブレーキングゾーンを持つ、ル・マンのコースに合わせて設計されています。これらのブレーキングゾーンでは強大なエネルギーが回生されますが、そのエネルギーを迅速に貯蔵し、瞬時に吐き出すことが出来るのが、我々が採用するスーパーキャパシタです。冬の間に改良を続けた結果、1周あたり6MJのハイブリッド・エネルギーをレース中、フルに利用出来ると考えています。これは昨年に比して大きく進化した点です。ル・マンではいつも燃費が大きな要素となります。ライバル同様、燃費とラップタイムの最適な妥協点を見出すことが求められます。これは常にデリケートなバランスの上に成り立ちますが、我々はテストでのデータから充分な準備が出来ており、加えて、練習走行と予選セッションにおいて最適の調整をする予定です。

アンソニー・デビッドソン(TS040 HYBRID #1号車):

今年のル・マンへ向けて完璧な準備が出来ています。我々が昨年WECの世界チャンピオンを勝ち取れたことで、耐久レースに必要なものを我々が持ち得ているということを証明したと思っています。それは私自身だけでなく、チームにとっても非常に大きな意味を持ちます。もちろん全てのレースで勝ちたいと思っていますが、ル・マン24時間での勝利は絶対に自分のキャリアに加えたいものであり、挑戦です。とはいえ、ル・マン24時間はコントロール出来ない気まぐれなレースであり、予定通り、全てがスムースには行きません。何かが起こるかもしれませんし、起こらないかも知れません。残念ながら、我々はまだ勝利の幸運には恵まれていません。今年我々はとてもリラックスしており、挑戦者としてル・マン24時間に挑むので、幸運が訪れてくれることを望みます。

セバスチャン・ブエミ(TS040 HYBRID #1号車):

ル・マンはシーズンの中でも特別なレースです。この特別なレースに加わるのは実に素晴らしいことです。レースのスタートは私にとって本当に特別な瞬間です。アドレナリンが沸き上がり、ル・マンで戦っているのだということを確かに実感し、それだけで感激します。今年の我々は挑戦者の立場であり、この挑戦に最善を尽くさなくてはなりません。ライバルとの差を詰めるべく誰もが懸命な努力を続けて来ました。しかし、ル・マンは他のレースとは異なり、何が起こるか分かりませんから、我々は先頭を切ってチェッカーを受けられるように願っています。これから長いレースウィークと、長い決勝レースを迎えますが、どうなるか楽しみです。

中嶋一貴(TS040 HYBRID #1号車):

私は既に今シーズン最初の戦いに勝っています。それはル・マン24時間レースに向けた私自身の体調回復です。ヴェルヴィエールとニースの病院とドクター、そしてル・マン24時間に向けて奇跡的な回復へと治療を行ってくれたチームの療法士に本当に感謝します。彼らのハードワーク無しでは、私の回復はあり得なかったと思います。昨年、ポールポジションを獲得出来たことは特別な記憶ですが、あくまでも決勝レースでの勝利がゴールです。不運にもそれは成し得ず、今年も簡単ではないことは分かっています。だからこそ今年の夢は優勝です。全員が高い士気を持ってレースを待ち望んでいます。我々は昨年、ル・マン24時間では何も確実なことは無いと言うことを学びましたし、今年、サプライズを起こせることを期待しています。

アレックス・ブルツ(TS040 HYBRID #2号車):

ついにル・マンを迎えます。昨年から、この瞬間のために努力を続けて来ました。ル・マンは我々のレースシーズンにおけるハイライトであり、もちろん、長い歴史を持つ非常に素晴らしいイベントです。私はル・マンで何度もレースを走って来たので、このレースがいかに驚きに満ち、確かなことなど何もないということを知っています。最も重要なポイントは、いかにして自分たちがコントロール出来ることに集中するかです。車両の正しいセットアップを見出し、正しい戦略と共に、ミスを犯さないことです。今年は、昨年とは異なり、我々は優勝候補ではないかも知れません。しかし、レースは長く、手強く、そして時に残酷です。24時間後に誰がどの位置にいるのかを見守りたいと思います。

ステファン・サラザン(TS040 HYBRID #2号車):

ル・マンは最高のレースで、私にとってもその年のハイライトです。雰囲気も観客もとにかく最高です。レースのスタート前のグリッドで、グランドスタンドを埋めた観客が私の名前を呼びながらフランス国旗を振ってくれる時の感激といったら、何ものにも代えられません。今年のレースは私がトヨタのドライバーとして走る、既に4度目のレースです。私の目標はル・マンで勝つことですが、今年それが叶うことを祈っています。誰もが全力を出し切るこのレースで、我々も負けてはいられません。すべてを出し切れば、ル・マンは我々に微笑んでくれるはずです。

マイク・コンウェイ(TS040 HYBRID #2号車):

これまでにル・マン24時間を戦った経験は一度しかありませんが、独特の雰囲気の中で行われる、とてもクールなイベントだということは分かっています。レースウィーク中、どんどん忙しさが増して行き、いかに大きなレースかが実感出来ます。その一員として加われるというのは非常に特別なことです。私がこれまでに経験したことがあるイベントで、強いて言うなら、インディ500に似ています。レースは長く、厳しいですが、レースカーをドライブしている時は最高の気分が味わえると思います。ル・マン24時間へ向けて、体調を万全に保つべく努力を続けて来ており、準備は万全ですし、この挑戦を楽しみにしています。我々は強いチームであり、全員が全力で準備を進めて来ました。スタートが待ち切れません。

セバスチャン・ブエミによるル・マン24時間の行われるサルト・サーキットの説明:

まずメインストレートから、右に曲がる第1コーナーへ向かいます。全開で入って行くのはとても難しいです。続くダンロップシケインへは非常にハードなブレーキングが必要です。このシケインでは、縁石の通過が必須ですが、縁石に乗り過ぎてはいけません。そして比較的優しいシャペル・ヘアピンを抜けますが、ここには大きなギャップがあるので注意が必要です。続いて、森のS字を抜けて4速から3速へ。この左、右と切り返すコーナーを抜けると、高速の右コーナー、テルトルルージュから、長いストレートのあるユノディエールへ向かいます。ここではトップギアまで上げていき、最高速に達します。ユノディエールに設けられた最初のシケインへは、出来る限りブレーキングを遅らせ、シケイン内の2つめのコーナーのエイペックスまでブレーキを残します。そして出来るだけ早くパワーを乗せ、次のシケインへと向かいます。再び訪れるストレートも長く、最高速度は時速330kmに達します。次のシケインも最初のシケイン同様ですが、今度は左側にあります。ブレーキングはおよそ100m前まで我慢。2速まで落とし、全開で抜けます。再びトップギアまでシフトアップしていき、時速300kmで非常にトリッキーなミュルサンヌ・コーナーにアプローチします。ブレーキングし始めるのと同時にコーナーへのターンインを開始し、1速までギアを落として、続くインディアナポリスへ向けて加速します。再度トップギアまで入れて、非常にトリッキーなインディアナポリス・コーナーに向かいます。最初のフラットな右ターンは非常に難しく、コーナー中盤までブレーキを残し、その後、バンクのある低速な左コーナーで速度を乗せて行きます。僅かに加速し、このコースで最も低速となるアルナージュ・コーナーで1速へ。しかし、このコーナーの脱出は、続くポルシェ・コーナーへと続くストレートへ向け非常に重要となります。再びトップギアで時速300kmを超え、高速のポルシェ・コーナーへ。ギアを5速に落として全開、その後2速から3速、コルベット・コーナーへは4速で入ります。再びパワーをかけ、カーティング・コーナーでは5速、そして非常に小さくフラットなシケインをフォードシケインの前に抜けます。その後は5速から3速まで落とし、フォードシケインでは2速へ。縁石を使ってこのシケインを抜けたら、再びストレートへ向かいます。これが、ル・マン24時間レースの行われるサルト・サーキットの1周です。

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