BMW 1シリーズ▲3代目となる現行型は従来のFRをやめ、ライバル同様、室内空間を広く取りやすいFFの駆動方式が採用された。それでもBMW初のシステムが投入されるなど、走りの楽しさも追求した1台だ

デビューして間もないのに、中古車平均価格が落ち続ける

BMWのエントリーモデルとして誕生した1シリーズ。2004年9月に登場した初代および2011年10月登場の2代目は、このクラスとしては珍しくFR(後輪駆動)レイアウトを採用していたが、2019年8月に登場した3代目・現行型は1シリーズ初となるFF(前輪駆動)を採用した。

デビュー時には、「BMWならFRでしょ!?」という声が一部のファンを中心に上がった。しかし、BMWらしい「駆けぬける歓び」はFFになっても健在で、その疑問はあっさりと払拭された。

この現行型1シリーズはデビューからまだ2年も経っていないにも関わらず、中古車流通台数も増え、平均価格はここ1年で大きく値を下げている。

以下、さっそく詳細を見ていこう。

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BMW 1シリーズ×全国 ※平均価格昇順

比較的手頃な118i系が増えたことで平均価格が下がった

2020年4月までは中古車台数が1ケタ台だったが、2020年7月には100台を超え相場を形成するようになった。

以降、中古車台数は右肩上がりで増え、2021年に入っていったん落ち着いたものの、4月から再び上昇傾向に。そして、今年の7月時点では400台を超え、過去最高の台数となっている。

それに伴い、中古車平均価格はほぼ下がり続ける一方で、昨年7月が約400万円だったのに対し今年7月には約350万円と50万円近くも下がっている。

平均価格300万~400万円くらい、しかも登場してまだ間もないモデルでこの下がり方は驚きだ。

BMW 1シリーズの流通台数グラフ▲昨年7月以降、一気に流通台数は増え、直近では過去最高となる413台となった
BMW 1シリーズの平均価格グラフ▲直近3ヵ月はやや上昇したものの、それでも350万円台を推移している

では、ここまで平均価格が大きく下がった理由は何だろうか?

まず、直近の中古車ラインナップを見てみると、新車時の車両本体価格が334万~413万円と比較的手頃な「118i」系の占める割合が多い。

恐らくこれが全体の平均価格を押し下げた要因の一つであろう。

特に「118i」や「118i プレイ」などの廉価モデルは、走行距離1万kmを切る物件でも、本体価格300万円を切るものが結構見つかり、全体の平均価格下落に拍車をかけているようだ。

一方で、新車時車両本体価格が630万円と高額な本格的スポーツモデルの「M135i xDrive」(FFベースの4WDを採用)も値を落としている。例えばだが、ライバルとなる同時期のメルセデスAMG A35と比較しても、値落ち額が大きいのだ。

これは、「BMWのスポーツモデルはやっぱりFR」と考えるコアな層がいまだ多いためだと考えられる。

冒頭でも述べたとおり、現行型は初めてFFを採用した1シリーズだ。つまり、旧型となる2代目は最後のFRを採用した1シリーズとなる。

本来であれば現行型の「M135i」を狙うような層が、このことを理由に2代目の「M135i」や「M140i」に注目している可能性もあるのでは? ということだ。

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FFでも「駆けぬける歓び」のある、快走コンパクトハッチ

ここで改めて現行型1シリーズについておさらいをしよう。

フォルクスワーゲン ゴルフという絶対的王者をはじめ、メルセデス・ベンツ Aクラス、アウディ A3スポーツバック、プジョー 308といったライバルがひしめく、Cセグメントのハッチバック市場。

「BMWといえば走行性能」ということをアピールしやすい、セグメント唯一のFRモデルでデビューした1シリーズ。

しかし、比較的若年層も多いこの市場では、走り(というよりFRレイアウト)にこだわる人は少なく、ライバルたちのFFを生かした広々とした室内にあらがうことが難しかったようだ。

3代目となる現行型ではついに、ライバル同様FFが採用されることとなった。

BMW 1シリーズ▲写真はM135i xDrive。キドニーグリルがグレーメッシュとなり、フロントやサイドスカードにエアロパーツが組み込まれる。ヘッドライト&フォグランプは全車LED
BMW 1シリーズ▲タイヤサイズは118iと118dのベースは205/55R16、「Mスポーツ」が付くモデルとM135i xDriveは225/40R18インチ。M135i xDriveはリアスポイラーも備わる

FFになったとはいえ、同グループのミニブランドで20年近くFFの走りを研究してきた同社だ。ARBと呼ばれる新しいトラクションコントロール機能を備えてアンダーステアを劇的に減らすなど、FFでも走る楽しさのあるモデルに仕上げられている。

また、1シリーズの走行性能を象徴するモデルとして、BMWのスペシャルモデル「Mモデル」を手がけるM社が手を加えた、4WDのM135i xDriveもラインナップされている。

グレード構成は最高出力306ps/最大トルク450N・mの2Lターボを搭載するM135i xDriveを筆頭に、140ps/220N・mの1.5Lターボの118i系、2020年4月に追加された150ps/350N・mの2Lディーゼルターボ搭載モデルの118d系で構成される。M135i xDriveと118d系は8速ATが、118i系は7速DCT(デュアルクラッチ式2ペダルMT)が組み合わされる。

BMW 1シリーズ▲8.8インチのコントロールディスプレイを装備。USBオーディオインターフェイス、ハンズフリー通話機能、ワイヤレス充電機能を標準装備。iDriveナビパッケージを装着するとAppleCarPlayも使える
BMW 1シリーズ▲ラゲージ容量は通常で380L、後席を畳むと1200Lに拡大できる。バックドアはスイッチを押せば後は自動開閉してくれる

もちろん最近のモデルらしく、安全装備をはじめとした最新装備にも抜かりはない。

衝突被害軽減ブレーキやストップ&ゴー機能付きアダプティブクルーズコントロールなど、先進安全運転支援機能のドライビングアシストや、自動でバックできるリバースアシスト機能は標準装備。

「オーケー、BMW」でエアコンなどを音声操作できる、BMWインテリジェントパーソナルアシスタントも用意されている。

デビュー時の車両本体価格は334万~630万円だった。

オススメは最上か最廉価モデル

個人的には、台数は少ないながら値落ち額の大きいM135i xDriveに興味が引かれる。何しろ2021年式で走行距離0.2万km、しかもディーラー認定車という好条件の中古車でも、新車と比べて約190万円も安い約440万円から見つかるのだ。

欧州ホットハッチでスポーツ走行を楽しみたいような人は、ぜひ一度チェックしてみてほしい。

一方で、より多くの人にオススメするのであれば、手頃な価格で狙える118i系だろう。

118iにはベースモデルに加え「プレイ」「Mスポーツ」があるが、基本機能は同じだ。違いは「プレイ」と「Mスポーツ」は車内照明でアンビエントライトやリーディングライト、照明付きバニティミラーが備わり、オートエアコンが運転席と助手席で独立して設定できるようになるといったところ。

加えて、「Mスポーツ」は18インチアルミホイールやMスポーツサスペンションを装着する。

こうした装備が不要だと思えるなら、最も手頃な118iのベースモデルがイチオシだ。新車時の車両本体価格がベースモデルより約40万高い「プレイ」や、約70万円高い「Mスポーツ」との価格差は、中古車ではまだあまり埋まっていない。

しかし、そもそも新車時価格が安かったこと(334万円)に加え、この大きな値落ちの状況のおかげで、「プレイ」や「Mスポーツ」と比べて台数はグッと少ないものの、走行距離1万km未満の中古車を支払総額約250万円で狙うことができる。

この価格で、最新のBMWの「駆けぬける歓び」を得られるのは、非常にお得だと言える。こちらもぜひチェックしてみてほしい。

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BMW 1シリーズ(現行型)×M135i xDrive×全国

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文/ぴえいる、写真/BMW

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。