ホンダ S660▲2021年3月に生産終了のアナウンスがされたことをきっかけに、中古車相場が高騰しているホンダ S660

ホンダ S660の中古車は今

1996年12月に生産終了したビート以来、19年ぶりとなる2015年4月に登場したホンダの軽オープン2シーターがS660だ。

ビートと同様にエンジンを運転席後方に配置し、後輪を駆動させるミッドシップレイアウトを採用しているのが特徴だ。

ベーシックグレードの他、ホンダのコンプリートカーブランドであるモデューロXが手がけたコンプリートモデルもラインナップされている。

2021年3月、ホンダから「2022年3月をもってS660の生産を終了する」というアナウンスが出された。それにより、新車はあっという間に予定台数のオーダーが入り、すでに注文受付が終了。

それに伴い中古車流通量が激減し、相場が高騰している。今はまだ250台程度の流通量があるが、この先、人気の条件のものから急速に姿を消してしまう可能性がある。

ここからはそんなS660の特徴や中古車相場について紹介する。
 

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S660(初代)の特徴と中古車相場

■S660(初代)DATA
生産期間:2015年4月~2022年3月生産終了予定
中古車流通量:約250台
中古車価格帯:160万~540万円
 

ホンダ S660 ▲ビート以来の復活となった2シーターオープンスポーツ

■S660(初代)の特徴
本田技術研究所設立50周年を記念して社内で開催した新商品企画提案。約800件のアイデアの中から、第1位に選ばれたのは1988年生まれの若きクレイモデラー、椋本陵氏の企画だった。

その後、椋本氏は新プロジェクトのLPL(開発責任者)に抜擢される。そして2015年4月、椋本氏の思いを形にしたS660が世に送り出された。
 

ホンダ S660 ▲デザインモチーフは2011年の東京モーターショーに出展されたHonda EV-STER。2013年の東京モーターショーではHonda S660 CONCEPTを公開。ミラーデザインなどはコンセプトカーを踏襲している

S660を初めて見たとき、「(1996年12月に生産を終了した)ビートの再来だ!」と懐かしく感じた人もいれば、未来的でスポーティなルックスにときめいた人もいるだろう。

パッケージはビート以来の軽2シーターオープンスポーツで、エンジンを運転席後方に配置し後輪を駆動するMRレイアウトが採用された。
 

ホンダ S660 ▲コックピットのタイトさがスポーティな雰囲気を強調

開発キーワードは「Heart Beat Sport」。見て楽しい、乗って楽しい、あらゆる場面でいつでもワクワクする、心が高ぶる本格スポーツカーを目指して開発された。

ハイパフォーマンスのスポーツカーだと、日常領域ではその性能をフルに発揮することはほぼ不可能だ。軽自動車であるS660は最高出力に64psという自主規制があるが、その分、例えば通勤の往復路などで交差点を曲がるだけでもワクワクできるようなスポーツカーを目指したという。
 

ホンダ S660 ▲ビートはフルオープンモデルだったが、S660はルーフトップのみ開放できるタルガトップに。幌はクルクルと丸めてフロントに収納する
ホンダ S660 ▲座席後方には小さなパワーウインドウを装備。これを開けると走行中に吸・排気音、ターボチャージャー作動音、アクセルオフ時に過給圧を開放するブローオフバルブ音などが気持ちよく聞こえてくる

ミッドシップレイアウトにより実現した、45:55という理想的な前後重量配分と低重心化により慣性モーメントの最小化とトラクション性能の向上を実現し、旋回性能が高められている。

そして、車体の動きに応じたコントロールにブレーキ制御を活用してコーナリング時に狙ったラインをトレースしやすくするとともに、少ないステアリング操作でスムーズな車両挙動を実現した「アジャイルハンドリングアシスト」を軽自動車で初めて採用した。

搭載エンジンは658cc 直列3気筒ターボで、ターボチャージャーはレスポンスを向上させた新設計のものが採用されている。
 

ホンダ S660 ▲CVT車はスポーツモードにするとメーターの縁が赤くなる

トランスミッションは6速MTと、7速パドルシフト付きのCVTの2種類。

MT車はレブリミットがCVT車より700rpm高められている。またCVT車は、“スポーツモード”“デフォルトモード”という2つの走行モードを選べるようになっている。
 

ホンダ S660 ▲ホンダの熟練エンジニアが開発した「660 モデューロX」

2018年5月には、ホンダのコンプリートカーブランドであるモデューロXが手がけた「660モデューロX」が登場した。

エクステリアでは、グリル一体型の専用フロントバンパーやLEDフォグライト、ボルドーレッドのロールトップなどを装備している。 


ホンダ S660 ▲ボルドーレッドを中心にコーディネートされた「660 モデューロX」のインテリア。シートには“Modulo X”のロゴが入る

インテリアにはボルドーレッドとブラックでコーディネートしたロゴ入りレザーシート、専用の本革巻ステアリングなどが奢られた。

足回りには5段階の減衰力調整機構が付いた専用サスペンションにより、市街地などでの乗り心地と限界域でのコントロール性を両立している。
 

ホンダ S660 ▲後期型の見分け型はAピラーがボディ同色になっていること。写真は新色のアクティブグリーン・パール

2020年1月には「デザインの深化」をテーマに、マイナーチェンジを実施。

エクステリアではヘッドライトとサブリフレクター、リアコンビライト、インナーレンズの色を変更するとともに、アクセサリーライトを追加。フロントグリルのデザインも変更された。

一方のインテリアでは、ステアリングホイールとシフトノブの表皮にアルカンターラを採用して高級感を高めている。
 

ホンダ S660 ▲マイナーチェンジで「660 アルファ」にはシートヒーターが備わった

合わせて「660 モデューロX」もデザインを変更。新色のアルミホイール、ドアミラーカバーの色変更、アルカンターラと本革を組み合わせた専用ステアリング、専用シートのデザイン変更などが行われている。
 

ホンダ S660 ▲S660の生産終了に伴い設定された「バージョンZ」

2021年3月、ホンダは2022年3月をもってS660の生産を終了するというアナウンスを出した。合わせて最後の特別仕様車である「モデューロX バージョンZ」を発売した。

「モデューロX バージョンZ」には、特別色としてソニックグレーパールを設定。ホンダのエンブレムや車名エンブレムのカラーはダーククロームに変更され、専用のアクティブスポイラーも装着されている。
 

ホンダ S660 ▲インテリアはメーターバイザー、助手席エアアウトレット、センターコンソールパネルなどがカーボン調になっている

■S660(初代)の中古車相場
S660生産終了のアナウンス以降、ホンダには注文が殺到。1ヵ月もたたずに全生産予定分が完売となってしまった。

それとともに、中古車もコンディションの良い物件を中心に多く需要が生まれ、流通量が激減した。現在は一時期よりも流通量は増えているが、流通量が急激に減ったこともあり、相場が高騰している。

人気のスポーツモデルゆえに、相場高騰の流れはしばらく止まらないだろう。むしろ、これから相場が上昇する可能性もある。「いつかは手に入れようと」と考えているなら、選択肢のある今のうちに購入しておいた方が良さそうだ。

現時点でのS660の中古車は、約250台流通している。そのうちの200台以上が2019年11月以前の前期型だ。

グレード別に見ると上級グレードの「660 アルファ」が約8割。ミッション別に見るとMTが6割程度を占める。

最安値帯は総額180万~220万円。選択肢の多い前期型の「660 アルファ」を中心に探すことができるものの、走行距離の少ない物件はおそらく早いうちに売れてしまうだろう。価格重視で探すなら、この価格帯の動向は日々チェックした方が良さそうだ。

前期型の「660 モデューロX」の流通量は9台(6速MT:6台、CVT:3台)で、価格帯は360万~460万円というプレミア相場になっている。すでに高騰してしまっていると取るか、まだ買える選択肢があると取るか判断は難しいところだ。

2019年12月以降の後期型は30台ほどしか流通しておらず、そのうち20台ほどがアルファになる。高年式車だけに価格帯は300万~410万円となっている。

今後、S660の中古車相場は刻々と変わっていくと思われる。いずれにしても、新車販売が終了しているため、中古車の流通量が右肩上がりになることは考えにくい。こまめにチェックして条件に合うものがあれば、即断即決の構えで臨むのが吉だろう。
 

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※記事内の情報は2021年7月10日時点のものです。
 

文/高橋満 写真/ホンダ

高橋満(たかはしみつる)

自動車ライター

高橋満(BRIDGE MAN)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。愛車はフィアット500C by DIESEL