フォルクスワーゲン ゴルフ4 R32▲今に続く「Rシリーズ」の扉を開けたのがゴルフ4のR32だ。狭角の3.2L V6エンジンが奏でる、とてもゴルフとは思えぬレーシーなエグゾースト音にしびれるというファンも多いはず

お手頃な価格になってきた今のうちに良コンディション車を狙おう

「国民車」という“社名"のフォルクスワーゲンに、一見不似合いとも思える凶暴な「Rシリーズ」が初めて日本でお披露目されたのは、2002年9月の富士スピードウェイ。現れたのがゴルフ4のR32である。その名のとおり、3.2LのV6エンジンを搭載した、通常のモデルとは一線を画すモデルだ。

3ドアが500台、5ドアが400台それぞれ限定販売されたが、瞬く間に完売。以降「Rシリーズ」は歴代ゴルフに欠かせないモデルとなった。

ゴルフ6から心臓部分が2Lの直列4気筒ターボとなったため、名称から「32」が外れたが、今もゴルフのトップグレードであることに変わりはない。ちなみに間もなくやってくるゴルフ8にも「R」は設定されている。

代を重ねるごとに、当然のことながら速くなっていくのだが、トップグレードゆえ、ゴルフ6ではついに500万円の大台を突破するなど、その価格は「国民車」レベルとは言いにくかった。

そんなゴルフのトップグレード、具体的にはゴルフ4~6の「Rシリーズ」が、最近では支払総額200万円以下で狙えるようになってきた。総額200万円以下といえば、2~3年落ちの国産コンパクトカーと同じくらいの価格だろうか。

フォルクスワーゲンとしては異端とも言える「R」を、手頃な価格でコンディションの良い中古車を選べる今のうちに、検討してみてはどうだろう。

「R」の扉を開いた限定モデルは、いまだに高い人気を誇る
フォルクスワーゲン ゴルフ4 R32

 フォルクスワーゲン ゴルフ4 R32▲専用エアインテーク付きフロントスポイラー、サイドスカートなど各種エアロパーツが採用された。タイヤサイズは前後とも225/40R18
フォルクスワーゲン ゴルフ4 R32▲R32専用となるケーニッヒ製レザースポーツシートが備えられた。ステアリングやシフトノブ、アルミペダルにはR32のロゴが入る。クルーズコントロールや8スピーカーなどゴルフのトップグレードとして、装備も充実していた
フォルクスワーゲン ゴルフ4 R32▲エグゾーストパイプが左右1本ずつ、リアスカートから顔を出す。ルーフ後端にはちょこんとスポイラーも備えられている

「変革のブランド フォルクスワーゲン」を象徴するモデルとして登場したR32。社名の「国民車」の意思を最も受け継ぐモデルであるゴルフに搭載されたのは、当時のボーラ(ゴルフ4ベースのセダン)のトップグレードが載せていたV6 4モーションの狭角V型6気筒エンジンだ。ただし、排気量は2.8Lから3.2Lに拡大されている。

V字の角度が15度とかなり狭いこのV型6気筒エンジンは、最高出力241ps、最大トルク320N・mを発揮。これにスウェーデンのハルデックス社と開発した4WDシステムと6速MTが組み合われた。このハルデックスカップリングを備えた4WDは通常は前輪を駆動させ、スリップを検知すると瞬時に後輪へ駆動力を最適に配分してくれる。

2003年1月から限定500台の3ドア・左ハンドル仕様が、同年5月から限定400台で同じスペックの5ドア・右ハンドル仕様が販売された。5ドア・右ハンドル仕様のスペック表では最高速度247km/hとされ、0-100km/h加速は6.6秒と記載されている。

新車時の車両本体価格は3ドア・左ハンドル仕様が395万円、5ドア・右ハンドル仕様が405万円。同時期のGTiより約100万円も高かったが、先述のとおりあっという間に売れた。

原稿執筆時点で10台見つかり、価格は約120万~220万円と、ほとんどが200万円以下となる。ただし、掲載台数は10台程度で、走行距離10万km超のものも多く、そろそろ賞味期限が迫ってきていると言えそうだ。気になったら早めの行動が欠かせない。

▼検索条件

フォルクスワーゲン ゴルフ4 R32×総額200万円以下×全国

最後のV6 R32も200万円以下で十分狙える
フォルクスワーゲン ゴルフ5 R32

フォルクスワーゲン ゴルフ5 R32▲R32専用のフロントグリルやフロント/リアバンパーを備える。大径ブレーキが採用され、ブレーキキャリパーはGTIの赤に対し、青色とされた
フォルクスワーゲン ゴルフ5 R32ト▲レカロ社と共同開発した写真の専用スポーツシートがオプションで用意された。ステアリングやシフトノブ、アルミペダルにはR32のロゴが入り、スピードメーターは300km/hまで刻まれている。クルーズコントロールやオートライトシステム、10スピーカーなどトップグレードらしく装備も充実
フォルクスワーゲン ゴルフ5 R32▲標準ゴルフより車高を20mmローダウン。リアには標準車同様4リンク式リアサスペンションを備えた。デュアルエグゾーストパイプはゴルフ4と異なり、センターから2本出しとなる

先述のように好評だったR32は、2004年6月に登場したゴルフ5ではカタログモデルとして、2006年2月からラインナップされるようになった。

ゴルフ4時代と同じ狭角3.2L V6エンジンは最高出力が250psへと高められ、最大トルクの320N・mという数値は同じものの、2800~3200rpmから2500~3000rpmへと低速域から発生できるようになった。それに伴い、最高速度250km/h、0-100km/h加速6.2秒と戦闘能力がアップしている。

ゴルフ5版R32のトピックは、AT限定免許でも乗れる、パドルシフト付き6速DSG(ダブルクラッチ式の2ペダルMT)と組み合わされたことだろう。先述の0-100km/h加速6.2秒はこの6速DSGの場合であり、合わせて用意された6速MTでは6.5秒となる。つまり、人間の手で操るよりも速くR32を操ることができるのだ。

R32のバリエーションは、「3ドア・左ハンドル・6速MT」と、「5ドア・右ハンドル・6速DSG」の2モデル。3ドアモデルは受注生産となる。もちろんゴルフ4同様、濡れた路面もいとわないハルデックスカップリングを備えた4WDが組み合わされる。

新車時の車両本体価格は3ドア・左ハンドル・6速MTが419万円、5ドア・右ハンドル・6速DSGが439万円。原稿執筆時点で35台が見つかり、価格は約65万~220万円。6速MT車は台数が少なく、6速DSGよりも価格は高めだ。

ゴルフ4と同じ走行距離の中古車で比較すると、価格はさほど変わらない。RではなくR32が欲しいという人は4と5の両方を検討してみよう。

▼検索条件

フォルクスワーゲン ゴルフ5 R32×総額200万円以内×全国

ハイスペックなのに4や5より割安感が高い「R」
フォルクスワーゲン ゴルフ6 R

フォルクスワーゲン ゴルフ6 R▲専用のフロントグリルやフロントバンパー、サイドスカート、ブラックドアミラーなどが奢られる。標準モデルより25mmローダウンされ、タイヤサイズは225/40R18。大径ブレーキのブレーキキャリパーは黒色となる
フォルクスワーゲン ゴルフ6 R▲写真の専用レザースポーツシートの他、オプションでゴルフ5のR32のようなレカロ社製スポーツシートも用意された。ステアリングやシフトノブが専用品になる他、HDDナビやETC車載器、リアビューカメラも標準装備されている
フォルクスワーゲン ゴルフ6 R▲専用リアバンパーやルーフスポイラーが備わり、デュアルエグゾーストパイプはゴルフ5のR32同様センター出し。リアウインドウとリアサイドウインドウにダークティンテッドガラスが採用された

ゴルフ5のプラットフォームを煮詰めて開発されたゴルフ6は2009年4月にデビュー。そこに、「R32」を受け継ぐ「R」が加えられたのは2010年1月のことだ。「32」という数字が消えたのは、3.2LのV型6気筒エンジンではなく、2L直列4気筒ターボとなったからだろう。

排気量が小さくなり、気筒数も減ったにもかかわらず、最高出力256ps/最大トルク330N・mは歴代R32を上回る。しかも、コンパクトなエンジンになったことで鼻先が軽くなり、進化した4WDシステムとともに、走行性能を高めている。

組み合わされるトランスミッションは、ゴルフ5と同じくパドルシフト付き6速DSGで、MTの設定はない。ボディバリエーションも5ドア・右ハンドルのみとなった。

エンジンのダウンサイジングの恩恵で、10・15モード燃費はゴルフ5のR32(10.2~10.8km/L)を上回る12.4km/Lを実現。また、ダンパーの減衰力と電動パワーステアリングの特性を変更できるアダプティブシャシーコントロール(DCC)が標準装備され、スポーツモードを選べば「R」らしい走りを楽しめ、コンフォードモードを選べば普段の街乗りで同乗者から苦情を言われることもない。

新車時の車両本体価格は505万円。原稿執筆時点で16台が見つかり、価格は約130万~280万円。いずれも10万km未満で、ゴルフ4やゴルフ5と同じ走行距離の中古車で比較すると、あまり大きな差がない。スペック重視なら、4や5よりゴルフ6の「R」は狙い目と言えるだろう。

▼検索条件

フォルクスワーゲン ゴルフ6 R×総額200万円以内×全国
文/ぴえいる、写真/フォルクスワーゲン

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。